Bonus Track_110-5 開いた、夢への扉! 政治家たちもはりきります! ~ユーさんの場合~
ファン ィユハンは一応、文官的位置づけの人間です。
高天原に来たのはあくまで、議員当選によるもの。身分こそαではありますが、戦う力は十人前の、かよわいオリエンタルビューティーです。
議会の最強『風林火山』に名を連ねられてはいますけど、それはユウミによるアシストあってのものなのです。
というかユウミはなんであんなに強いのでしょう。謎です。
ともあれそんなわけで、『うちのイツカナ』たちをぶじに引き取った後は、主に彼女らのフォローに徹しました。
さいわいルク派残党は、高天原内に限って戦いを仕掛けてきました。
外での動きはなし。人員不足ゆえか、知らされず飼われるものたちなどどうとでもなると思っているのかは不明ですが、それはこちらにとっても好都合。
あくまでゲームイベントらしく、華やかに、どこか楽し気にをこころがけ、防戦を展開しました。
残党はあらゆるところに潜んでいました。
軍内の一派が自らの権限で隊を率い、議事堂を狙って出撃してきたのには、少々驚きました。
風向きは不利。聖なる大魔王さまたちはルクやその味方を殺しはしない。よっていまは埋伏するタイミング、と私などには考えられるのですが、そこは武闘派。埋もれたまま腐ってしまうよりはいっそ、パッと散りたいと考えたのでしょう。
前総理親子(今日は敬意をこめてこう呼ばせていただくことにしました)が、みずから説得に回ります。
生きる可能性があるのに死してはだめだ、生かせるところを明日に生かそう、同じ背景の者どうし、ともに歩んで行こうと。
耳を貸すものは戦況が傾くとともに増えてゆき、やがて、武力の戦いは終わりました。
武力の陰に護られての戦いはその後も続いておりましたが、我らはそれを止めてはならないといわれておりました。
無抵抗を装い、もしくは堂々と、ルクネットを通じて祈りを届ける支持者たちはまだおりました。
意識を落としてしまえばその抵抗も刈り取ることができるのですが、それはするなと。
全力と全力を尽くし、ぶつかりあわねば遺恨が残る。だから、敬意をもって祈りは続けさせてやってくれと、我らは頼まれていました。
その分は俺たちが頑張るからと、とうの魔王様方ご本人に一生懸命、というかかわいらしく言われれば、断ることなんかできません。
結局は、それが逆転ホームランにつながったのですが。
自爆から身を挺し救われたルク殿は、魔王様方を信じ、自らも祈りをささげたのです。
ルク殿の支持者たちもこれにならい、『0-G・サンクチュアリ』は想定以上のもっふもふ――もとい、効果を発揮したのです。
さて、われわれ文官のおしごとはここからが本番です。
事態の収拾、さきへの道筋。試案はもちろんありますが、本調整はここから。
『祈願者』にして、戦うアイドルである四人はひっぱりだこ。
わたしも今夜は眠れなそうです。
それでも。
「おわったああ! おわりましたねユーさん!!
ミッションが終わった。戦争がなくなった。
あなたの夢も僕の夢も、これでかないますよ!!」
いまのいままで走り回っていたハジメくんが、その足をゆるめずわたしのもとにきてくれた――それも、ニッコニコの笑顔でぶんぶんと手を振って。
そんな最高のごほうびをもらったら、ここまでの疲れは吹っ飛びました。
そう、『秘密主義』の月萌が、戦争のためにつくった『壁』は、もういらなくなる。
夢への扉はいま、大きく大きく開いたのです。
スキルの民間利用、それによるβ居住域のさらなる繁栄も。
愛する者たちの再会も、もうすぐかなえられるのです。
もちろんこの国の安全も、自由な学究の発展も。
国家予算というパイの争奪戦はなくならないけれど、それでも月萌国会は、これまでよりもずっと幸せで明るい風が吹く場所になると、わたしは確信したのです。
すすとほこりにまみれ、それでもおひさまのように輝く笑顔の同志にして親友。
わたしは彼と青空の下、ぐっと手を握りあい、おめでとうとがんばろうを言い合ったのでした。
次回、英雄イツカナたちを国主としてむかえるセレネさん。
これにて、ミッドガルドのおはなしは一度おしまいになります。
どうぞ、お楽しみに!
残すはアースガルドでのおはなし(一話程度?)と、エンドクレジットです。
私事で申し訳ございませんが所用が立て込みはじめており、もしかしたら更新日があくことがあるかもしれません。
そのついには活動報告などでご報告させていただきます。
どうかゆるゆるお付き合いいただけますと幸いです!




