110-3 あふれる幸せ! いっしょのおひると、ふつうのメール!
所用にて遅れ申した!
取り急ぎ投稿まで!!
着替えて階下に降り、洗面で手を洗ってリビングへ。
カウンターテーブルではもう、香ばしく焼けたしょうが焼き、ほかほかのお味噌汁とごはんがおれたちを待っていた。
「わーお! いただきまーす!!」
イツカたちは無邪気にふっとんでいって『いただきます』。
やつらは食べたあとにありがとうだが、おれたちはさいしょにありがとうだ。
ありがとう、いただきますと声を合わせてから、席についた。
「こんなバトルの後なのに……ほんと、ふたりには頭が上がらないよ」
「せめて、洗い物はやらせてね?」
すると二人の天使はニッコリ笑った。
「お気になさらないで下さいませ。
これはあらかじめ、わたくしたちで仕込んでありましたのよ」
「いつも言ってるでしょ、お料理はおれたちの癒やしなの。
だいすきなひとたちにおいしいおいしいって食べてもらって、からっぽになったお皿を洗ってるときは最高にしあわせなんだから!」
うん、天使だ。ここにいるのは、間違いなく天使だ。
イツカたちとおれたちは、ほっこりほっこりしなからもうひとおし。
「じゃさ。そのシアワセ、ちょっとだけわけてくれよ!」
「俺たち向こう一ヶ月、多分もう、したくてもできないはすだからさ。
一緒に台所、立ったりとかさ」
「もちろん、迷惑じゃなければだけど」
「そんな、迷惑なんかじゃちっともないよ!
うれしい。ありがと、みんな」
「そうですわね。今日は一緒にお片付け、しましょうか!」
その天使たちはおれたちのわがままを、あふれるような笑顔で受け止めてくれた。
ちょっと多すぎる人数でわちゃわちゃとお片付けをしたら、もう一度カウンターに戻ってひとやすみ。
着信だけチェックしていたメールを開く。
ソナタが代表としておくってくれたおつかれメールは、なぜか、2通届いてる。
ともあれまずは一通目を開封。可愛く優しい文面にメロメロになっちゃうおれたちだったけど……
追伸まで読み進めれば、さらなる驚きと納得がおれたちをまっていた。
『世界が平和になったら、もう高天原とも普通にメールやコールができるようになるよってきいて、こっちのメールはあえて、ライカネットじゃなくて、ふつうに送ってみました!
ちょっと、気が早かったかな。でも、見れてるといいな。
それじゃあ、またね!』
そうだ。もう、この世界に戦争はない。
何もかもをこの瞬間に白日の下に晒すことは、もちろんできない。
けれどもう、兄貴を慕うちいさな妹たちが、けんめいに書いて送った素朴なメールが、届かないかもなんてことはないのだ。
高天原に入ったら、二度と帰れないなんて言われることもなくなる。
かつてのハジメさんとユウミさんのように、国家機密の名のもとに、愛しあう二人が引き裂かれるなんてことも。
喜びのままにおれは、差出人リンクをタップ。
愛する妹に、通常回線での音声通話をかけてみるのだった。




