110-1 セキニンとります?! 大魔神たち、師を求む!!
ミッション『エインヘリアル』の終了を宣言すれば、GMの様子はずっと柔らかなものになった。
彼女はおれたち全員に全回復を施し、謁見の間を解放してくれた。
すなわち、すぐに取り決めることがあるなら、ここでどうぞと場を提供してくれたのだ。
正直いってありがたい。
『俺は言うこともねーし帰るぜ~』と三つ首を抱えて去るだろう黒龍とか、スカッと寝落ちして地面にずぶずぶ消えてくはずの女神とか、そういったフリーダムな連中を見送ってなお、ここにはそこそこの人数が残るのだ。
ともあれ、まず真っ先に口を開いたのはルク。
武装を解除し、いずまいを正し、おれたち全員に深くこうべを垂れたのだ。
そして、今後はグランマの一パーツとなり、全てをあげて贖罪につとめると言ってきた。
それも、犠牲となった人々の数と等しい輪廻を捧げるとまで。
そこは『一生』で充分だろう、と、思ったが、それを言う前にセレナまでが同じことを。
執事ヴァルも冗談めかせているが、実質それに具する所存のよう。
アカシたちが「寂しくなってしまいます」「惜しむものも大勢おります!」とかき口説くが、『いつでも連絡をおくれ、月明かりに紛れ、夢枕に会いにゆくよ』なんてちょっときざにすら思える返事をしている。
もちろんこのやりとりは、二回目だ。
一回目は『エヴァグレ』内で――すなわち『ティアズ アンド ブラッズ』をログアウトしての参加者ミーティングのさい起きている。
ルクたちが試行からの実質オミットとなることを惜しむ者は多かった。
けれど、かれらの意志は固く、説得は困難だった。
人の人生の全てを奪う。それは非道なことであるとわかっている。
なぜなら、そうされかけた者たちはみな、つらい瞳で往時を語る。
その償いのために、一生をかけさせる。
それは、間違っているわけではない、と思うけれど。
それは、そのカタチは、おれたちがなくそうとしたΩ制に、限りなく似ている。
それでいいのか。
そう思った時に、イツカたちは言った――
『もしさ。ルクに会いにきたいってやついたら、俺つれてくるぜ!
そのかわり、頼んでいいか?』
――ルク、俺たちに、剣を教えてくれよと。
はたして今目の前のイツカたちも、同じように言った。
「いまのルクさ。すんっげ――強かった!」
「俺ももっともっと、強くなりたい!」
「ほら、なんだかんだルクって、抑止力になってたよな、いろんなことの。」
「そのルクが月にこもっちまうなら、そのぶん強いやつが必要になるだろ?」
「俺たちはそれにならなきゃならねえ。
それがこのエンディングを導いた、俺の果たすべきセキニンだ」
「無私になんかなっちまったら、剣なんか教えらんねーだろ?
だから、自分の中のぜんぶ、なにもかもをなくすなんてことはやめてくれないか」
「頼む! このとおり!!」
二人そろってルビーのひとみをキラキラさせて、身振りぶりを入れまくって熱弁し、さいごはぺこっと頭を下げて。
『ふたりでミッドガルド最強』のはずなのに、その姿はどこか妙に、かわいらしい。
ミーティングのときそのまんまの光景に、ふしぎな心持ちになる。
そうだ。そのときおれたちも、言ったんだった。
ちょっとだけくすっとしながら、セレナにむけて。
「おれもいいですか。
セレナさん。あなたの神聖魔法も、とても強力でした」
「だから率直に言います。おれたちに、魔法を教えてください。
理由は――イツカとおなじです」
おれたちも、頭を下げた。
帰ってきたのは、今度もイエスだった。
次回! ミッドガルド内での後日談!
さすがに人数いるので数話かかりますが(滝汗←チェックおわってない)、のんびりまったりお付き合いくださいませ♪




