109-7 終わる、戦い~白リボンのカナタの場合~
やらかしました。長いです。13枚あります……orz
「くっそ! マジにレイジモードじゃねーか!!
これじゃキリがねえ!!」
誰かが叫ぶ。
竜の首を失ったルクの暴れぶりは、おれたちの総力を挙げても制圧できるか怪しく思えてくるほどのしろものだったのだ。
ベルさん、エルナールさんのカードさばきにより、『矢返し』は健在。
おかげで、二人よりうしろをルクたちの遠距離攻撃で狙われることはなかった。
だが、そこより前ならもうやり放題だ。
ルクはまるで親の敵のように風船を叩き割りまくる。
漂う小麦粉にテラフレアボムが引火し、凄まじい爆発が巻き起こるのを、強引に『蒼翼』で吹きつけてくる。
おかげで、前以上に後衛がフル回転、直に打ち合う前衛たちも必死の対応を強いられる。
連携は取れていないながらも、四対の腕を振り回し、長い長い脚で蹴散らかす動きはますます激しく。
プリメラの翼の加護をうけて歌うエクストラの顔ふたつも、爆音といっていいほどのボリュームで歌い狂う。
意外と厄介なのは風を操る『蒼翼』だ。こいつのせいで、こちらの攻撃の威力は低減し、立ち回りにも余計な力がかかってくる。
さらにはフォルカの光焔の翼をゲートがわりとして、召喚獣『炎の鳥』が流れるように湧き出してくる。
フィールド全体に展開し、攻め上っていく後継隊――ハヤトたち陸戦隊・アキトとセナを先頭にした航空隊のメンツ――は、若干キレ気味である。
でも、みんなの目には希望の色が。
そう、もうじきくるのだ。さらなる増援が。
ありがとうと呟いておれは、意識をルクに集中。
まさにそのときルクは、ぴたりと動きを止める。
そうして、高らかに問いを発した。
『――静粛に。
君たちにここでふたつ問題だ。
ひとつめ。君たちもわかっている通り、我とわれら同志を結び、我にこうして戦う力を集めるネットワーク――『ルクネット』とでも言おうかね。
それをネットワーク上で稼働するAIとみなしたときに、そのレベルはいくつであるか?
こたえは8。ついさっき、達成した。
ライカネットワークがレベル7を達成したのと同様に、ここでこうしてあえて激しい戦いを行うことで、進化を遂げたのだ』
ひとつ、ふたつ。笏を持つ手の指を折り、ルクは語る。
『それによってなにが君たちにとっての問題となるか。
外界との隔絶。支援の終了。増援の途絶だ』
おれたちに、絶望を与えるための言葉を。
『まあ、ちょうどいいタイミングだったよ。もう少し早ければ、なぜ次元障壁を作って増援召喚を阻止しないのか、怪しまれてしまうところだった。
おかげでサクサクと、邪魔なやつらがここに雁首をそろえてくれた。
だが、それもここでおしまいだ。
きみたちはさらなる増援を待っているな? 残念だが、もうそんなものは来ないぞ。
ソリステラスからも、月萌からも、この謁見の間に入ることはもはや不可能!!
このまま全員踏みつぶし、焼き尽くしてくれよう、絶望とともに!!』
きもちよさげに哄笑するルク。
だがその勢いは、1ターンと続かなかった。
「そうねー、確かにウチから直に来るのはムリだったわね。
でも、フォルカの星霊界からは入れたわよ、スルッと」
軽い調子で笑いつつ、ひょいと顔をのぞかせるものがあったからだ。
彼の背中から。もっと正確に言えば、背中の光焔の翼から。
『きさまッ?!』
「ハーイ、みんなだいすき『リアちゃん』でーっす!
その作戦やるんだったら、さきにあんたが召喚をやめるべきだったわね。
もっとも、それでも防ぐことはできないけれど。
忘れた? いまのイツカナたちの体には、すべての大星霊の加護が刻まれてるの。
つまりすべての大星霊のセカイと直接つながることができるんだから!!」
かわいくも不敵に笑うのは、『リアちゃん』ことフォルカ=ヴァレリア=ステラマリス殿下ちびっこフォーム。
背中の光焔の翼でホバリングした彼女は、くるくるのツインテールを揺らし、腰に手を当てドヤりまくる。
「イツカ、カナタ。前に出てみて。
すくなくともステラの大星霊のチカラは、あなたたちをキズつけられないわ」
おれの記憶では、さっきのセドラの重力波は、けっこう息苦しかった気がするのだけれど。
それでもまあ、ダメージはなかったのだから、それはそれということか。
ともあれ、自前のうさみみをはばたき、炎の鳥の前に出る。
イツカもぴょいと飛び出した。
はたして炎の鳥は、おれたちを傷つけることなくフワリと散った。
これには少し驚いた。たしかにステータス画面の特記事項には、最大レベルの加護がズラッと並んでいたけれど、ダメージないとは書いてなかった。
疑問の顔になったおれに、リアちゃんはさらにドヤりつつ答えてくれる。
「そりゃー、ねえ。
星霊って、言っちゃえばタテ社会だもん。
『不壊』書いてなくたって、マックス加護もってればソンタクしちゃうって☆彡」
ルクはこれ以上背中から敵が出てきたらたまらんと思ったのだろう、光焔とサヨナキの翼を消し去る。
しかし時すでに遅く、サヨナキのナイトブルーの翼からは、しっとりとした青の衣と黒髪の美少女が、小さな琴を携えコンニチワしていた。
「そろそろ、わたくしたちの出番のようですわね。
ともに歌いましょう、レモンおねえさま!」
その言葉とともに、琴についていたレモンイエローのくまストラップが、にゅっと変形してレモンさんに。ええええ。
サクヤさんの持ち物あつかいになることでプリメラの精霊界を通過させてもらうためだったのだろうけど、ちょっと絵面がまさかすぎてびびってしまう。
しかしそんな反応がまたお気に召したのだろう。これまたばっちりステージ衣装でキメたレモンさんは、いえーいっとブイサイン。
「よばれてとびでてじゃじゃじゃじゃーん!
ミソラ、シャナちゃん。あたしたちも援護しちゃうぞー!」
「それじゃーこっから本番!! 飛ばしていこうか!!」
『ええええちょっこれあたしまじっていいのおお?! でもがんばる――!!』
シャナさんは『新技』でクエレブレのなかに宿り、安全なそこから歌声を飛ばしていた。
さすがにこんなサプライズは『はーと直撃』ものだったようだが、それでもその声は弾んでる。
「イツカくーん、カナタくーん! わたしたちも歌うね!」
「あたしのはなんの魔力もない、ただの歌だけど、この歌声を支えたいの!」
「たのむ!」
「もちろんお願い!」
ルナとルカが言い出す。もちろんおれたちはOKだ。
ルナはS級プリースト。想いを歌声に乗せることは彼女たちいうところの『たしなみ』だし、ルカも気づいてないけどその歌声にはすっごいパワーがある――すくなくともおれは、彼女が歌ってくれれば百回死んでも生き返る自信がある。
「じゃあ、俺も」
ミツルもまた、ソラの水の鳥の中からにゅっと生えてきて歌いだす。
『ホワイト・ミグレーション・プラス』のチカラを、メロディに乗せて増幅するようだ。
なぜいままでこれを出してこなかったのか。たぶん、狙っていたのだ。最大のパワーを出すタイミングを。
ミライとミズキ、リンカさんも、声を合わせる。
再びフォートレスゴーレムとなった『ゴーちゃん』の、肩の上のマリオンも。
フォルドの背中の『さっきー』も。
一番あぶないあたりをピンクの日傘でふわふわと飛ぶ、ピンクの勇者アカネさんも。
後衛たちの前に立ち、壁になりつつ海と大地のチカラをよびさましては注いでくれていた、パレーナさんとエルマーも。
わらわら湧き出る炎の鳥の交通整理を頑張ってくれていた、オウリュウも。
『森護』のチカラでタンクをつとめつつ、みずから杖をふるって最前線で戦ってくれていた、ステファンさんも。
もふロボ・ラパンからも、ソーヤとシオンの歌声が。
いつのまにか、ロボのなかにレムくんが召喚されてきている。彼とヴァラさんがサポートすることで、アイドルである二人を歌わせてくれているという構図だ。
さらには『ブロッサムオブスワン』の上に立ちあがったライムまでもが、清らかな歌声を響かせはじめた。
いままで、どれだけレモンさんに誘われても、人前で歌わなかったライムが。
いまは手を放してしまったけれど、ライムはそれでも、おれにはじめての恋を教えてくれた大切なひと。
その凛々しい姿をみてしまえば、おれもやらずにはいられない。
イツカとともに、声を合わせようとした、そのとき。
『……茶番だな』
どっちがだ、といいたくなるようなセリフを、ルクは吐いてきた。
『召喚が阻止できないことがわかった。それがどうした。
いまだ我らのレベルのほうがお前たちより上なのだ。
叩きつぶすまでだ。粛々とな!!』
戦神ルクは、再び荒れ狂う。
なみのαならば即死するレベルの赤ポップアップが乱舞する。
しかし、趨勢はもう覆らない。
呪歌効果で強化された後衛たちのアシストに加えて、ありがたすぎる隠し玉が繰り出されたのだ。
『ありがとねグリ。あんたのおかげで、みんな生きて帰れるわ。
発動、『改造コルヌコピア』!!』
おれの耳飾りからぽんと飛び出たバニーが、地面にドンと置いたのは、ちっさなかわいい羊角杯。
これまたミニミニサイズの花や果物で飾り付けられたそれは、しかしほんものだ。
甘い香りと、流れでるひつじミルクのエフェクトとともに、回復効果があふれ出す。
毎ターン20万、しかも味方限定。あきらかに誰かさんたちの手で魔改造されたモノだ。
エアリーさんが疑問の声を上げる。
『ええっ?! どうしたのソレ?!
『コルヌコピア』はわたしだけの、オリジナルスキルのはずなのに……??』
『グリがくれたの。
エアリーとはじめて戦った時に『食べた』やつを、改造してとっといたんですって。
イザってときに、あたしの身を守れるように、ってね!』
バニーは幸せそうな笑顔。グリードはというと赤くなってそっぽ向いてる。
そういえば、おれが彼女たちとともにソリステラスに行き、帰ってきたときのパーティーで、グリードはバニーになにやら小さな箱をプレゼントしていた。
まさか、中身がこんなトンデモアイテムだったとは。
ともあれおかげで、もう怖いものはない。
ルクの熾烈な攻撃を食らいながらも、次々と必殺がさく裂していく。
アキトとセナの第三覚醒『サーフアンドターフ・ダブルクロス』。
ベヒモス・レヴィアタン・ジズの三兄弟による『三界饗宴』。
ミッドガルド四女神による『クアッド・ブレス』。
『青嵐公』が身に宿した3S『憤怒』を呼び覚まし、繰り出す絶剣技『ブルー・レイス』。
圧巻だったのは『スーパー・すぺしゃる・きゅーきょくすごい・トリプルろけっとわんパンチ』。
イワオさんとサクラさん、ユキナさんの思いとパワーをのせた合体技だ。
びしり、びしりとルクの巨体に亀裂が走る。
戦神の崩壊を食い止めようと動いたのは、セレナだ。
「大丈夫ですわ。回復ならば!
『聖母』よ。豊かな草原を満たすチカラよ。
わが君に、命の恵みを満たしたまえ!」
手にした杖を大きく振りかぶり、呼び覚ますのは『草原の聖母』のチカラ。
クローリンさんたち、草原の民が秘める、大きな守りと癒しの力だ。
かつて『白衣のうさぎ天使グローリア』をはじめとした、草原の民の衛生兵が驚異の救出率を誇ったのは、勇気と機転、素早さだけが理由ではない。
彼女らに、救護対象と自らを守り、的確に回復するだけのチカラがあったためだ。
最悪の場合は、蘇生までもこなすそのチカラは、あっという間にルクを全回復――しなかった。
確かに、回復はした。はじめてお目にかかる、七桁の白ポップアップとともに。
しかし、この戦いにおいてそれは、一ターンにルクが受けるダメージの半分にも満たない。
「ど、どうして、……!!
『聖母』のチカラにそんな、制限になるようなもの、……」
『大丈夫だよ、セレナ。
おまえは精一杯をしてくれた。なにも、悪くなんかない』
激しく狼狽するセレナにルクは、優しい笑顔を向けて。
同時に戦神の巨体は、バラバラと崩壊した。
うわあああんなんで終わるなんて断言しやがった昨日の日向――!!(半ギレ)
イツカ赤「なーなー、俺たちルクとバトらねーのー?」(こねこのようなまなざし)
それはね、まあうん。
イツカ白「なーなー、俺たちのどっちがルクとバトるのー?」(こねこのようなまなざし)
えーっと……
だいじょうぶ!! つよいひとはふたりぐらいとならたたかえるよってばっちゃがいってた!!
イツカーズ「わーい!!」
次回。
こたえあわせと、ルクの底力、そして、終えねばならぬとき。
どうぞ、お楽しみに。




