表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_98 終結・魔王戦!~あの月を目指す、その前に~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1292/1358

109-4 祈り、説き、吠える! 前進のうさねこチーム!!

2023/05/08

フィールドあらへん! 修正いたしました!

月色のフィールドが柔らかな光をまとう。

銀の光条が柔らかな月色をまとう。

『残念だが、エルマー君』


 そのときルクの口が動いた。

 流れ出てきたのは、彼本人の声。


『愛する者、信じるもののためならば。

 我らはアースガルドを滅ぼすことももはや厭わぬ。

 すでに、一度おかしたあやまちだ。

 わたしが悪に染まり。

 そうして、救えるならば。

 いくらでも悪になろう。

 アースガルドも人間の世界。

 なら。誰かがやらねばならぬことにかわりはない。

 わたしは、人間になる。

 愛する者のため、身を挺し、手を汚すことのできる人間に!

 さあ、『お話』はこれで終わりだ。

 我らを敗者とあわれみ、救いを与えようというつもりなら、それが完膚なきまでに間違いだったということを思い知るがいい!!』


 おれやイツカに対してより、ずいぶん優しい物言いだ、ということは確かだ。

 けれど、内容は看過しえないもの。


「……なんで」


 悲しく問いかけようとする声を、さらなる波の轟きがかき消す。

 パレーナさんがエルマーの肩にそっと手を置き、静かに諭す。


「これがこたえということだ、エルマー。

『殴って従わせられる程度の相手と、話し合いをするバカはいない』、先だって彼が口にした言葉だ。

『話し合いをするかどうかを決めるのは強い者だ』、とも。

 ならば、強者のあかしを立てるまでだ。

 われらの決意と努力のあかしをもって、疑義の出ぬほど明確に」

「そうだね……うん。

 戦う。それしかいまは、受け入れられないというなら!」


 きゃしゃな体躯の優しい少年は、別人のように凛々しく立った。

 戦う。勝つ。否、打ち倒す。

 そのことをしかと思い定めた『大地の支配者』のオーラは、これまで見たことのないカタチをとった。

 地上から地下までその身を広げる、大きな大きな黒竜。

 エルマーを起点に、ひとつの生命システムが、しずかな地鳴りとともに形成される。

 フードつきの黒ローブの下、褐色の素肌に広がる銀の光の文様が、いのちの拍動を映し脈打った。

 そのかがやきは、クレイの大地にもつながり、広がり、深く深く伸びていく。


「お願い、大地。

 大地に連なるみんな。

 力を貸して。

 生きたいものが、生きられるように。

 世界を滅ぼすなんて、させないで済むように……!!」


 月色の瞳を伏せ、鈴を振るような響きの祈りを紡ぎ。

 目を開いたそのとき、銀の光条が柔らかな月色をまとう。

 じんわりとあたたかな、しみいるようなその光は、ルクの右脚までとどき、そこにまつわる巌を優しく溶かしていく。

 全力を持って、戦うと決めたエルマー。そのチカラのカタチは、それでもやはり、優しさを感じさせるものだった。


「まったくお前は、どれだけのポテンシャルを秘めているのだろうな。

 こんなにきゃしゃで、小さくて、優しいのに。

 いや、わかる。

 そんなお前だからこそ、皆が力を貸すのだ。貸さずにはいられないのだ。

 俺も、そのひとりだ。

 いまはそのとなりで、できることをしよう。

 友として、同志として」


 パレーナさんもまた、そんな『愛され支配者』のとなりで気合を入れる。

 うるわしの王者は、ろうろうと響く美声で、ルクの海によびかける。


「いのちなき海。死しか知らぬ海。

 お前をその悲しみから解き放とう。

 さわやかな風となり、優しき雨となって降り、再び流れ豊かなる海となれ。

 鳥を緑を虫を、けものを魚をひとを、育み生かすしあわせの輪廻を、我とともに紡ごう。

 海よ、お前は殺しの道具ではない。

 未来はぐくむ、生命の世界だ。

 我とともに行こう。お前をつれてゆこう――

『大海の王者』の名に懸けて!!」


 パレーナさんがエメラルドの海に向けた瞳は、慈しみに満ちた優しいもの。

 かける言葉もまた、愛に満ち満ちている。

 こんなふうに口説かれたら、海だってたまらないだろう。

 はたしてルクのくじらのような尾と、そこからあふれる海は、するするとルクのもとから流れ去る。

 すきとおるリボンのように列をなし、あらたに認めたあるじのもとへ。

 パレーナさんはそこに手を浸し、ようこそと暖かく微笑むと、おれたちをふりむいた。


「もう、ルクは海を呼び出すことも、支配することもできなくなった。

 大地を操ることも。

 そのチカラはいまやわれらのもの。

 行くぞ。いまこそ、決着をつけに!」


 エルマーが「えいっ」と一声。さっきまでナイアガラ・フォールだった地割れに、太く丈夫な橋を架けてくれた。

 地の民のつくった橋なら、崩れたりする心配はない。


「よし! 後衛はここから支援たのむ!」

「前衛は俺たちに続け――!!」

「おうっ!」


 イツカたちが高らかに声を上げ、先頭に立って走りだす。

 白イツカも今じゃ翼で飛べるのに、走ってる。まったく、こいつらはほんとに天才だ。


「カナタさん。わたしも後衛ですが、このままともにゆきますわ。

 必要ならば、『ブロッサムオブスワン』の制御はお任せください。

 ここでカナタさんとしばらく乗って、わたしもこの子がわかってきました」


 そんなことをつくづく思っていれば、ライムが力強く言ってくれた。

 プリースト一本の、完全な後衛なのに。

 でも、彼女のつよさは確かなもの。おれは信頼をもってうなずく。


「そうだね、いざというときはお願い。

 もしおれと切り離すことになったとしても、ちゃんと動くようにしておくから」

「はい!」


 そんな会話をしつつ、おれも『ブロッサムオブスワン』で後を追った。

 


 ルクの腕のひとつ、錫杖をにぎる腕がひとふりされる。

 召喚されたのはまさかの『フィルの雪狼』。

『プロミスオブフィル』ができるまえに企画されたものなのだろう。もしくは、ハヤトが『狼王』の称号を得るまえに。

 ハヤトが走りながら吠える。


「任せろ!『王威咆哮ライジングロア』!!」


 スキル『王威咆哮ライジングロア』。相手に『威圧』、味方に『鼓舞』の効果を同時にもたらす、キング系ならではのスペシャルスキル。

 イヌ科の仲間たちがすかさず吠え声を合わせ『友群強化パック』も発動。

 なんと、もうひとりのおれの『プロミスオブフィル』までがこれに呼応、雪狼は粉雪となってこちらのひざ元にはせ参じる。

 このタイミングでなぜか『プロミスオブフィル』のなかからにぎやかな声が聞こえだしたが、それはそっちに任せておこう。


 ルクの腕のうち、武器を持つ三対、蜘蛛の文様を描かれた一対が、大きく振りかぶられる。

 おれはライムとともに、仲間たちへの支援を開始した。


Q:なんでフィルの雪狼呼んじゃったの?『プロミスオブフィル』いるのにさ?

A:あー、それはほらさー、せっかく準備したからー……


次回! スーパールク、八面六臂の……もとい、三面八臂ぷらす蹴り技で大暴れ!

グリードによる仕込みも発動、ここまで出番のなかったあいつもお目見え。

双方総力あげての格闘バトル開幕です!

どうぞ、お楽しみに!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ