109-1 冴えわたる! エルカ所長のブレス封じ!! ~シオンの場合~
2023.03.23
二本か一対か、どっちにしようと思っていたらフュージョンしちまいましたようですすみませぬ……!!m(__)m
二対→二本
「うわ、…………」
思わす声が出た。
召喚したものたちをすべて奪われたルクは、とんでもないことをしてきた。
『大女神』にリンクしていることを活かし、三人の『マザー』由来の力をぜんぶ、わが身にまとったのだ。
アカシたちを、『装備』として。
アカシが――正確には彼と、彼に取り込まれた同志たちが、それぞれチカラとカタチを帯びてルクの体にくっつき、ルクの意志を受けて、各部で戦闘行動を行う、そういったカタチのチームワークだ。
いうなれば、超変形合体ロボ。
光のフォルカのチカラで濃い目の表面換装を形成、蜘蛛のクロンのチカラでリンクを確立している。
その見た目は、ナマモノになった戦神像といったかんじだ。
三つの顔、四対の腕と翼をもち、両肩にドラゴンをはやした、二足直立歩行の巨人。
細長くのびたオーラの尾が、瞑目したままの『大女神』を包みこんでいるのがなんとなく、臍の緒を思わせる。
そこに流れているのは、他の部分とは比べ物にならないほどの大きなパワー。もちろん、強靭さもピカ1だ。
つまりこれは、ただの『電源ケーブル』ではなく、フル活用してくるつもりの『最大最強の武器にして防具』ということ。アスカやミソラ先生の見立ても同様。みんなに注意喚起をしておく。
白い雲のいろを透かす、ラーハの風の翼が、サポート体制に入ったセレナとヴァルをすくいあげた。この二人は、合体させる気がないみたい。
二人はそれぞれ杖とカードを手に構えている。安全な場所から、サポートに徹する構えだ。
彼らはルクにとっての『逆鱗』、狙うのは得策じゃないだろうとクエレブレが伝えてくる。オレとしても同意だ。
もっともそれは難しいことだろうけど――ラーハは守りと移動のチカラに特化した、風の天馬の大星霊。エルメスさんをはじめ、人命救助の現場ではたらく人がよく契約しているものだから。
ともあれ、カナタはこのセレナとヴァルの扱いについてしっかりチェックしていることを示してきた。
その辺は、揶揄しないこと、と共有される。
もしかすると説得のフックになるところでもあるからだ。
ある程度の強化・回復がされるのはあきらめて。そのぶんは、こちらも盛り盛りでいく。
あっちのパッシブ強化は華やかそのもの。
炎色した光焔のフォルカの翼からは『不死鳥の羽ばたき』、各種ポイント漸次回復。
星をちりばめたナイトブルーのプリメラの翼からは『サヨナキのさえずり』。主に、二つの追加の顔が歌う歌の聞こえと効力にレバレッジをかけている。
ちなみに二つの顔が歌っているのは神聖言語による呪歌『神聖呪歌』で、ざっくりいうとさっきエアリエイルさまが使っていた『星神域展開』みたいなもの。つまり、大神意+いろいろ強化&回復+召喚・支配奪取。
ルリアさまを思わせる青空色の翼は、まさしくそのとおり、鷲<アリオン>王家直系が有していた『蒼翼』。蒼穹の加護で、風を操り、素早く自由な飛行を行うチカラをルクに与えていた。
うさロボ・ラパンにのってるオレたちでも腰を見上げなきゃならない、ちょっとしたビルみたいな脚には、大地から萌出た緑のつたと、とりどりの巌が絡みつく。これじゃ動けないんじゃないかと思ったけどそんなことはなくて、ルクが立ち方を変えると地面から伸びて追従してる。
これらはステファンさんがもってた『森護』、エルマーがもってた『地鎮』のチカラ。ふたつとも防御力と強靭さを提供しているけれど、たぶんこれで蹴ったり、地揺らしをしてくるのだろう。
その前に来るのが、肩に生えた二つの竜の首のブレスだ。
ツンと匂う毒の霧をたたえた左の首、炎をたたえた右の首が、ぐっともちあがる。ブレスの準備動作だ。
エルカ所長がふむとうなずく。
「ここはわたしが。
発射、小麦粉入り風船ランチャー!」
あわくけむる銀の月――『プラチナムーン』を背負った所長がいつのまにか生み出していたのは、ころっとファンシーな形の大砲。
ルクにむかってぽんぽんぽんっと打ち出しはじめるのは、いろとりどりの風船たち。
ふくらんだバルーン本体の中もまた、ふわふわした粉で煙っている。
みため破壊力なんかなさそうな風船たち。けれどそれに取り巻かれたとたん、ふたつの首が動作キャンセルした。
「えっえっ? なんで風船でブレス止められるの?」
サクラちゃんをはじめとした何人かがきょとん。
「それは帰ってからの宿題にしよう。
ヒントは、あの毒の性質だ。
主たる成分は第6類危険物――そうだね、ルク?」
ヒントをだされるまでもなく、オレにはわかっていた。
オレが高天原でやらかした最大のチョンボ、小麦粉粉塵爆発。
その比にならない爆発が起きるとこだったのだ。
もちろんルクがそれでたおれることはないだろう。しかし、自分のブレスで自分が焼かれることになるのはばからしい。
ルクは背中の『蒼翼』を羽ばたかせ、追い風で風船を追い散らそうとする。
そうしながら、二本の腕にかまえた銃と、ボーガンを連射してきた。
「神聖防壁!! くっそ強いなあ!!」
プリーストたちが守りの魔法を、クラフターたちが護符と錬成魔術を連発するけど、一発一発当たるたびにゴリゴリと耐久が削られていく。
ありがたいのが、前衛たちによる的確な迎撃や防御。
それでも、この状態だと動きが取れない。
どうしよう、そう思いかけた時に救いの『天使』はやってきた。
すみませぬ!!「さらに集まる仲間」がきてなかったので直前で加筆いたしておりました!!m(__)m
次回、狙撃といえば……+αでやってくる!
どうぞ、お楽しみに!!




