108-8 ゴーちゃんの決断、そして
2023.03.18
優しいやさしい→優しい
いや間違ってはないんですが^^;
言い訳しますとここのところ「再変換すると二つに増える」現象に見舞われてこうなることがございます。ともあれ気を付けます!
ドラオさんとササキさんが、仲間を思う気持ちはほんものだ。
なぜって、フォルドはみるみるいつも通りの大きさに。『さっきー』も元気を取り戻し、二人してスパッと離陸。おれたちを追ってきたからだ。
ナナさんの第二覚醒『ひろがるかぴばらんど』がもたらす超回復力をもってしても、この速度は驚異的といってよかった。
ライムとふたり驚きの声を上げていると、『さっきー』がハツラツとした声で呼びかけてきた。
「おまたせしましたっ! マリオンさんとゴーちゃんさんと、話しますね!」
「よろしくお願いします!
流れ弾からはおれたちで守るので、安心して説得してくださいね」
「はいっ!!」
ライムの神聖防壁が優しく二人を包む。
二人がとびたつ直前に、シャスタさまがレンの『説得』で奪還された。そして『さっきー』は説得モード。
ノーコンの流れ弾がぶっとんでくる懸念はほぼ消えたといってよかったが、油断は禁物だ。
おれも、耳を澄まし目を配った。
『プロミスオブフィル』はすでにかなり距離を詰め、ルカが一度説得を行っていた。
けれど結局、記憶が戻るには至らず。マリオンが迷いつつも追加召喚したガーゴイルと戦っている――正確には、片づけつつあるところだった。
そこへ、『さっきー』が声をかける。
「ゴーちゃんさーん! マリオンさーん!
しっかりしてください! 今戦ってる相手、イツカナさんたちですよ!!
みんなで言ってたじゃないですか。今度こそ仲間として戦える、楽しみだねって!
ほらっ、いったんやめましょう!
イツカナさんたちと戦えなんて業務命令、受けてないんですから!!」
ゴーちゃんの肩の上、かすかにマリオンの表情が動く。
けれど、彼はまだ戸惑いから脱することができない。
ゴーちゃんはなにか、じっと考え込んでいるようだが。
「マリオンさんてば!
……もう。わたしたちもやるしかないんですか……?」
いましも、レイジの捨て身の作戦でルーレアさまも記憶を取り戻したところ。っていうかなんかラブラブなかんじになってるところ。
急いでおれとライムで制止した。
「まって、二人とも。早まっちゃだめですよ!」
「あれはあのお二人だから可能なのですわ。
ゴーちゃんさんもマリオンさんも、『さっきー』さんをたたいたりしてしまったら、泣いて後悔なさるに違いありませんわ?」
「うう……ですかね……?」
ルーレアさまとレイジは、しょっちゅう手合わせをする仲だ。
お互いえげつない攻撃はしないものの、けっこうガシガシと『殴り愛』をかましてる。
それでいて直後、一緒に仲良く焼き魚定食食べたりしてるんだから、少なくともおれには絶対真似できない。
「そうですよ。
それに、あれ。
一度見守りましょう」
ルナが『プロミスオブフィル』から飛び立ち、ゴーちゃんに近づいていく。
白の翼のイツカも、彼女を守るためともに飛んでいく。
おれたちはみんな、知っていた。
ゴーちゃんが、ルナにいちずな恋をしていること。
もちろん、彼女がイツカと愛し合っていることもわかった上で。
たぶんその決着が、いま、着くのだ。
おれのみたところ、ゴーちゃんはもう、自分と記憶をとりもどしたようだった。
それでもふりきるように大きく一歩を踏み出し、必殺を飛ばす。新規実装の『ひっさつ★ロケットパンチ』だ。
月萌第三中学の校舎くらいある、巨大きわまるこぶし。これが飛ぶとはどうやったって思えないデカブツはしかし、構えた腕の先端から、うなりをあげて飛びだした。
「にゃあああ、あっ!!」
白のイツカが一気に前に出た。正面からがっぷり組み付き、受け止める。
ぶった切ろうと思えば、できたはず。
けれど剣さえ抜かず、抱きとめるように。
ルナもそのとなりにならんで手を触れると、ゴーちゃんの目をやさしく見上げた。
「ね、ゴーちゃん。もう、やめよう。
きっともう、思い出してくれてるよね。
わたしたち、ともだちだったんだよ。
なんどもいっしょにステージに立って、いっしょに踊った。
ゴーちゃんは、マリオさんは、わたしたちのこといつも、思いやってくれてた。
そんなひとたちと戦うのは、かなしいよ。
なかよくしよう。いっしょにうたおう。きのうまでみたいに」
ふるふると、ゴーちゃんの体が震えだす。
やがて内側からあふれる金色の光。
いまのゴーちゃんのからだは、アンオブタニウム――『入手不可』という名を冠した、究極金属でできている。イツカでもなければ斬るのは困難なはずのそれは、まるで奇跡のようにボロボロと崩れ落ちはじめた。
金の光に包まれ、装いを変えていくのはマリオンもだった。
ふたりして、人間の姿に。身に着けているのは、シンプルな上質感のすがすがしい白シャツとジーンズだ。
ゴーちゃんが縮んでいくのにあわせ、ルナたちも地上へおりる。
すっかり人の姿にもどり、ルナと向かい合ったゴーちゃんの口から出たのは、朴訥でまっすぐな、愛の言葉だった。
「ルナさん。
ずっと、ずっと、すきでした」
「……うん」
優しい目をしてうなずくルナ。もう、つづく言葉がわかっているようだった。
はたしてゴーちゃんは、告げた。
「イツにゃんと、どうか、お幸せに」
「…………うん」
そうしてルナとしっかりと握手を交わす。つづいて、イツカとも。
マリオさんに背中を支えてもらいながら。涙を浮かべながらも、すがすがしい表情で。
「ゴーちゃんさん……!!」
となりでライムが。フォルドの背中で『さっきー』が、目元をおさえた。
もちろんライムの肩を抱いてあげるけど、おれもちょっぴりウルウルしてしまう。
いやいや、感動するのはあと。ここは状況確認だ。
意識をこらせば、状況はもう動いていた。
影の魔物の群れと、スケルトンの群れがほぼいなくなっていたのだ。
理由はシンプル、マリオンが戦いをやめたことで『おかわり』がなくなったためだ。
ノゾミお兄さんが右を、ハヤトが左をそのまま受け持って、影の魔物を掃討。
スケルトンの群れは、『ぴょこグリ』にあまさずとっこんだ。
「ぶっはあ~!! やっとおわったのじゃあ~!!」
交通整理をがんばってくれたオウリュウはふたたびちびオウリュウに。優しいミライとミズキは、彼女をぴょこグリのなかにご招待。
ひかりの草原にきもちよさげに寝転ぶ幼女と、それによりそうこいぬとうさぎという、癒ししかない光景が生まれた。
クレイズさま、エアリエイルさまももう記憶を取り戻し、女神姿でみんなに合流している。
のこるは、イツカとスケさん。そして、グランドマザーのお膝元に陣取るルクたちだけ。
チカラを注ぐ対象が減ったためか、ルクの様子にも若干の余裕が生まれた様子だ。
それでもいまだ状況は予断を許さなかった。
スケさんに、アカシに注がれる力が大幅に増したのだ。
「イツカ!」
呼びかければ、イツカはしっぽで返事してきた――大丈夫だと。
ならば。おれはひとあしさきに、ルクたちのもとへと駒を進めることにした。
やっとここまで進んだあああ!!
次回、満を持してぶつかりあうアカシとベヒモス。
そして、スケさんとイツカの決着。
どうぞ、お楽しみに




