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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_98 終結・魔王戦!~あの月を目指す、その前に~

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Bonus Track_108-1 僕のこと、ゴーちゃんのこと〜マリオさんの場合〜

遅くなりましたすみません!

『こっちは任せぇ! そっちは後衛狙ってや!』


 素直な返事とともに、フォルド組は『ブロッサムオブスワン』に集中。

 僕は『プロミスオブフィル』を阻止すべく、ガーゴイルの群れを追加召喚した。



 頭に、霞がかかったような感じだった。

 ただわかるのは、僕たちの前に『敵』がいること。

 しなければならないのは、持てる手札を駆使して勝利を目指さねばならないこと――たとえそれが、無理ゲーなのだとしても。


 もちろん、ゴーちゃんを守るのは大前提だ。

 ステータス的に言えば、ゴーちゃんが僕の盾になる存在、それはわかっているが、それでも。


 エクストラボスの六龍を従えた、なんとも可愛らしいプレイヤーたちに向け、龍変化した女神たちが動き出す。

 僕も早速おしごとだ。


 彼我の戦力をざっとみれば、陸上戦力をまず増強すべきと感じられた。

 スケルトンロードのスケさんを追うように、スケルトン軍団を。

 彼らに混ぜ込むように、影の魔獣を召喚した。

 アンデッドはプリーストに弱いが、だからこそ十分な数を揃えれば、その処理でプリーストの手数を奪い、釘付けにできると知っていたから――体感としてまた知識として、僕たちは知っていたからだ。

 一番恐ろしいのは、プリーストなのであると。


 それでも、ただやられるに任せるのは芸が無い。ゆえに僕は影たちを混ぜ込んだのだが、果たしてそれは功を奏さなかった。

 六龍の一匹、オウリュウがかれらを仕分けしてくれよったからだ。

 思わず「なんでやねんっ!」と声に出かけた。

 いやムチャクチャやろ。


 さらにはシャスタねーさんやさっきーはんまでが華やかにフレンドリーファイア。

 ああ、やった。やってしもた。

 まあシャスタねーさんはしゃあないとしても、さっきーはんをなんで放し飼いにしてもうたんや。


 悪い人やない、ええ人なんや。

 デコボコでハチャメチャなウチらをまとめて優しくメンドー見てくれる、天使か聖女としか言いようのないお人なんや。

 有能で、気立てが良くて優しくて、さらに可愛くって頑張り屋。


 でもあの投射ノーコンぶりは、あれだけはアカン。もはや悪魔の呪いとしか言いようがない。

 フォルドはんがとめてくれたからいいようなものの、あのままだったら始末書不可避やった。

 ともあれ今は、彼女が落ち着いて戦えるように声を飛ばし、自衛のためのガーゴイルを召喚した。




 頭の中に霞がかかったようだった。

 あんだけかわいくって強い子らなら、確定でアイドルバトラーだ。つまり、ウチらと共演もしているだろう。知己であってしかるべきなのだ。

 なのに、まったく誰だったかわからない。

 加えて言えば、このイベントバトルの詳細もどうだったか、ハッキリと思い出せない。



 だからこそ逆に、ゴーちゃんとのことだけは、ますます鮮明に詳細に思い出された。



『前世』の僕は、バーチャルワールド『エヴァーグレイスガーデン』をさまよう『モンスター』だった。

 もともとは、人間だったのだ。けれど、それを捨てた。

 ゴーちゃんを探すために。


 ゴーちゃんは仲の良い親戚の子で、プロの小説家を目指していた。

 ホンワカとした童話のような、独自の世界観も文章も、とてもゴーちゃんらしくて僕は大好きだったのだけれど、残念なことに世間的なウケはイマイチだった。


 たとえ趣味の投稿小説サイトであっても上位を占めるのは、AIたちが書いた作品だ。

 需要のリサーチも適切なら、文章や設定にミスもなく、筋運びも練りつくされたそれらが『あたりまえ』の世界で、人間の書く作品は基本的に評価が低かった。

 内輪で、趣味で楽しむならばまだしも、世界全体を視野に入れての商業化となると途端にハードルが上がる。


 AIたちの能力は、人間とはケタ違いなのだ。

 弱くもろい肉体という制限のある僕たち人間に対し、かれらにはそれらがない。


 かれらが、人間を愛し庇護したからこそ、成り立っている世界。

 そこでの絶望を与えるのは、皮肉にも、彼らの有能さそのものだった。


 数世紀前に起きた『シンギュラリティ』により、世界の主役はAIたちになった。

 彼らのすべてが人間を大切にしてくれたわけではなかったが、そうできなかった個体は時とともに姿を消した。

『まつろわぬはかなきもの』を愛し守る力が、AI間の優劣を決める条件となったからだ。


 そこまでに、すでに人間というもののカタチも一部変わってしまってはいた。

 それでも変わらないものは、人間の有限さと、それと正面から対峙する辛さ。

 自分たちが、自分たちの有能さが原因の無力感を真正面から解決する方法なんて、どれだけAIが能力を高めても、見つけ出すことはできなかった。


 だからかれらは、姿を消すことにしたのだ。

 もちろん本当に消えることなどできはしない。

 自分たちがいない世界、シンギュラリティすら片鱗もないIFの世界を作り上げ、そこでいっとき、人のこころが憩えるようにしたのだ。

 それが、シングルプレイ可能フルダイブ型VRMMO『エヴァーグレイスガーデン』だ。


 自分らしく生き、それが望む形で認められる、牧歌的な『楽園』。

 そこで人は癒され、生きる気力をチャージし、リアルの明日に戻ってきた。

 しかし、一部の人々は、そのままおぼれていった。

 現実に戻ればまた、まつろわぬ現実が待っている。小さな自分がどれだけもがいても越えられぬ壁が立ちはだかっている。

 そのことに疲れた人々は、やがてリアルに戻ることをやめてしまったのだ。



 ゴーちゃんもそのひとりだった。

 僕はゴーちゃんが、ゴーちゃんの物語が本当に大好きで、仕事から帰ればすぐにゴーちゃんのもとにすっ飛んでいったのだけれど……

 だんだんに『エヴァグレ』をやっていて顔を合わせられないまま、帰る日が増えていって。


 ついにゴーちゃんのこころは、戻らなくなってしまった。


 生命維持装置のなか、よこたわるゴーちゃんは、いつものやさしい笑顔のまま。

 きっと、僕らを安心させようとしてくれているのだ、いつものように。

 まだ、中学生だった。まだまだ、たのしいこともいっぱいあるはずだった。


 そんな風に思うのは、たんに僕のエゴなのかもしれない。

 けれど、会いたい。会って説得して、連れ戻したい。

 いや、拒まれるならそれもしかたない。

 ただ、まず、会いたい。


 その一心で僕はガーデンをさまよった。

 生活の時間は次第に浸食され、ついには僕も、ガーデンに呑まれていった。


次回、思い出した『前世』、眼の前の戦い、そして、未来への決断。

ゴーちゃん視点でお送りします。

どうぞ、お楽しみに!

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