108-7 初恋ノーカウント?! かっとばせ、二人の全力無双!! 〜ハヤトの場合〜
所用で遅くなり申した!
取り急ぎ、投稿まで!
そう、かつての俺たちはわかってとっこんだ。
この、クソッタレな『氾濫』に。
俺はアスカを。アスカは、俺を守るために。
出会いは絶妙に微妙だった。
体力づくりのためにと行った近所の水泳教室、その説明会で見つけた天使のような『少女』、それがアスカだった。
もちろんやつは野郎で、俺の初恋はハッキリと意識すらする前にあえなく散った。
しかもやつの性格ときたら、町内の誰よりはっちゃけていた。
友だちに囲まれる明るいムードメーカーのアスカと、地味で真面目な堅物の俺とは、まったくの正反対。
それでも俺たちは、不思議なくらい馬が合った。
互いのうちを行ったり来たり、いつも一緒につるんでいた。
時には甘えん坊の弟で、時にはそこらの大人より頭のキレる頼れる兄貴。
そんなアスカは、ずっと兄弟が欲しかった俺にとって、天のつかわした『生きた宝物』だった。
俺は体力担当、アスカは頭脳担当で、ティアブラでもリアルでもバディを組んできた。
だから、俺にとってそれは当たり前の、まったく自然なことだったのだ。
あの、最初で最後の錬成事故のとき、アスカをかばったのは。
それでもアスカは泣いて泣いて、何度も何度も謝って。
俺はお前の相棒だからいいんだ、これはゲームだから大丈夫なんだといっても、もうアスカは、大好きだったクラフトをやれなくなってしまっていた。
それが仕組まれたものだとわかったのは、それから八年ほど後。
俺たちは、狙われていた。
罪なき子供を――アスカを泣かせ、その航路をねじ曲げて、人生まるごと利用しようとするような奴らに。
それを知ったとき、俺たちは決めた。
奴らの思いどおりには絶対にさせないと。
都市伝説のトラップクエスト『竜の呪いとエンジェルティア』。いずれ仕掛けられるそれを完全クリアし、最短距離で高天原に食い込む。
そしてそこにいる、すべての敵を下そうと。
俺はアスカを。アスカは、俺を守るために。
アスカはあれで、気性の激しい男だ。
一度決めたら、自らが傷つくこともいとわないところがある。
石橋を叩いて渡る俺とは正反対。
だが、それでいいのだとも思う。
アスカを、その行く道を。
ときにはアスカの抱いた激情から、アスカ自身を。
守るために、俺はいるのだ。
夢の中だけに記憶を残す過去、その当時から、きっと。
そして今。俺たちは再び、悪夢のスタンピードに臨んでいた。
アスカは俺に言う。
「『精兎降臨』いっとく?」
「ああ。
お前に何かあったら、たまらないからな」
「それはおれもだよ。
だから、守るよ。全力で!」
光のうさぎに姿を変えて、アスカが俺の中に飛び込んでくる。
自らを俺専用の拡張モジュールと化し、内側から全面サポートを行ってくれる、究極に凄い覚醒技だ。
身のうちから湧き出る力に吠えたその時、ふといつもと違う感じがするのに気がついた。
あたたかい。俺がアスカを宿しているはずなのに、逆に包まれているような安心感がある。
視点変更してみれば、真っ白なうさぎの形をしたオーラが、俺をすっぽり包み込んでいた。
「これは?!」
『へへ。いつも守られるばっかじゃなーって。
だいじょぶ、こいつはおれが作ったオーラだから、攻撃防いでもおれ本体にダメージが来たりはしないよ!
もちろん攻撃に乗っけて使うこともできるし。
……だめだったかな?』
「そんなことない」
そんなの、考えるまでもない。
「最高だろ!
ぶっとばしてくぞ、アスカ!!」
『ラジャッ!!』
『おーおーあっついあっつい☆彡
そんなラブラブな若人たちをライカさん全力で応援しちゃうもんねー!!』
わらってまぜっかえすライカ。もちろんやつにもよろしくを伝える。
駆け出す俺たちの前には、すでにもろ肌を脱いだ師の姿。
おいかけて、追いついて。
「お前たち、左を頼む。俺は右を殲滅する!」
「はい!」
追い越すつもりで、左翼へとかじをきる。
「惜しまず行くぞ!『グランドスラム・トライアド・改』ッ!!」
黒い影で身を成す敵は、地平を埋めるかのようにさえ見えた。
だが、なぜだろう。
どれだけ奴らが押し寄せてきても、全く負けるビジョンが見えない。
奴らの召喚が尽きる気配はなく、一体一体がすでに、一人前のαを遥か超えるパワーの持ち主であるにも関わらず。
言い表すなら、正しく無双。
そんな勢いで俺たちは、影の魔物を蹴散らしながら、前へ前へと走っていった。
次回は趣を変えてマリオさん視点の予定でございます。
どうぞ、お楽しみに!!




