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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_98 終結・魔王戦!~あの月を目指す、その前に~

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108-2 時には強引に? クレイズさまは究極変身したくない! ~チナツの場合~

ちょっと長くも見えますがええ、そういうこともあります。←

 正直いってショックなんてもんじゃなかった。

 自分の一部がごそっとなくなったような。

 いや、そんな生易しいもんじゃない。


 俺はひたすらぼーぜんとしてた。

 あからさまにあやしい先代女神が俺の前に現れるまでは。


「うーえほんえほん。でもってワタクシが、先代森女神のチキでございますわ!」

「………………はい?」


 その声、背格好、金髪、ついでに名前。

 ぶっちゃけ、母ちゃんクリソツなんだが。

 口調はめっちゃ作ってるし、顔も隠してるけど、逆に怪しさがパワーアップしている。

 そのせいかクーちゃん軍もフリーズ。

 先代神獣たちもなんか笑ったりあからさまにそっぽむいて口笛ふいてたりするし。

 ジト目で見てるとチキ様は、大仰なしぐさでのたまわる。


「あなたがチナツさんでございますわね! はじめまして!! お噂は常々!!」

「はぁ…………」


 ねえ、これってツッコミまち? ツッコんでいいの?? それともツッコんだらいいわけ???

 混乱してるとシーラが言ってきた。


「まあ、細かいことは置いといてだ!

 チナツ。彼らをお前のチカラとするがいい。

 なに、心配はいらん。いずれ劣らぬつわものよ。かならずや……」「いえ!」


 俺の口は、考える前に動いてた。


「契約は、……できないです。

 いまここで皆さんと契約したら、クーちゃんたちを捨てたみたいになる。

 それをしちまったら、もうおしまいだ。よくわかんないけど、そう思うから、……すみませんっ」


 困っているところにせっかく来てくれたのに、申し訳ない。

 だけど、下げた頭にのっかったのは、あったかい感触。


「いいのよ、契約なんて」


 俺とチカが高天原に行くまで、いつも頭をなでてくれた、なつかしいぬくもり。

 頭をあげたらチキ様は、もはや母ちゃんまんまの口調で言ってくれた。


「魔王戦でクーちゃんたちも言ってたでしょ。

 わたしたちはね、あなたたちが大好きで、応援したいから力を貸しにきたの」


 フェイと、その背のフーカも言う。


「そ。ただ、助けたくて助けるの」

「契約なんてそんなの、飾りにすぎないよ」


 ジーンとしたところでマイキーが、これまためっさ聞き覚えあるてやんでえ口調でとんでもねえことのたまった。


「どーしても気になるってならよ、ホレ。これ使いねェ。召喚チケッツだ。

 先代召喚士がよ、全部使い切ってねえからって返してきたんだ。将来、俺の子供がマジヤバイ時にはコレで頼めるかって」

「ヲイ。」

「そんなんなくても助けるヨっていったケドー、俺の血引いてたらヘンなとこで頑固者だからってー、おっつけられたっス!」


 イスマイルさんフォローしてるようでしていねえ。つかやべえ完全確定じゃねーか。全世界にダダモレだろーよ我が家の個人情報。意外すぎだけど。


 ともあれ、こうなったらやるっきゃない。

 俺は伯父ちゃんもといマイキーから、チケットの束を受け取った。

 ちなみにそのなかには『虎』がなかった。なるほど、だからシーラは魔王戦の終局で、自分からこっちに来てくれたのだ。

 ともあれそいつを宙にかざして、俺は叫んだ。


「っしゃー! そんじゃみなさん、お願いしまっス!!

 倒さない程度に攻撃を食い止めてほしい、その間に俺ももいちど説得、やってみるから!!」

「よしきた!」

「ほいきたー!」

「ラジャー!! ですわ!!」

「合点承知ィ!!」

「やってやるデスヨー!!」


 一斉に飛び出す皆さん。

 シーラがうむとうなずいてひとこと。


「で、我はどうする?」

「スゥを頼みます。俺は降ります。

 クレっちゃんはどうする?」

「俺も行く。チナツが降りるなら一緒だ。

 ユキさん、」

「了解、空からフォロー飛ばすわ。クエレブレとシャナさんといっしょにね!」

『危なければ引っ張り上げるぞ、そこは了承してくれ』

「よろしくっス!!」


 そうして俺とクレっちゃんは、大地に降りた。


「っしゃ! 仕切り直しだ!!

 こっからでわりいがきいてくれみんな。俺は」

『グオオオオオオオオオオオオ!!』


 そのとき、させじとばかりにクーちゃんドラゴンが咆哮する。


「ちょおおおお?!」

『ガアアアアアアアアアアアアアア!!』

「どーしろってんだあああ!!!」


 その間にも先代+航空戦力チームは奮闘し、みるみるクーちゃん軍のHPが削れていく。

 母ちゃん、もとい、チキ様が念話をよこしてきた。


『チナツ、皆さん!

 そろそろ第二形態がくるころよ。警戒して!!』

「だいにけーたいっ?!」


 なんだその、ボス味満点の言葉は。

 こんな状況だというのに、不覚にもテンションあがっちまう。

 それはクレっちゃんものようで、ごまかすように咳払いした。


『ええ。

 すべての神獣のチカラを一身に集めた究極形態。いまとは比べ物にならないほどに強力……あら?』


 チキ様の言う通り、クーちゃんドラゴンはなんだかやばそうな光をまといはじめている。

 だが、おかしなことに、その光はついたり消えたりしている。

 じいっと見てると、クーちゃんドラゴンの表情がゆがんでいるのに気付いた。

 ばちっと目が合った瞬間に気づいた。クーちゃんは、変身したくないのだ。

 なにが理由か、そこまではわからないが、変身を拒否ってる。


「チキ様! 変身止める方法は?!」

「HP回復よ!」


 俺は飛び出した。クーちゃんドラゴンに届く位置までかけつけて、回復のポーションを投げた。

 驚くみんなに詫びつつも、俺は全力で手を打った。


「悪いチキ様みんなっ! でもクーちゃんは変身したくないっぽい!

 だから、とにかく、動きを止めるっ!!

『カモナ・ハッピーフォレスト』ッ!!!」


 第二覚醒技をフルパワーで放つ。

 周囲にたちまち広がる楽しい森。木々の陰には、獣たちと森の女神の影がちらり。

 しかし、ヒャッハーとはじけまくるはずの彼女らは、そこから姿を現さない。


「…………なん、でだ?」

「チナツ。

 あの森に現れる獣と女神って、だれの姿かわかるか?」


 するとクレっちゃんが、おもむろに質問を投げかけてきた。


「え……いやそりゃ、クーちゃんと神獣のみんな、だけど……」

「そうだ。

 あの幻影は、シークレットガーデンで、アルム島で、みんなと過ごした思い出が、元になってる。

 いまさ。チナツめちゃくちゃショック受けてるよな。それで、思い出せなくなってるんだ。

 みんなとすごした、楽しい記憶。

 思い出そう、みんなのこと、もっともっと。

 そしたら、この森がもう一度、楽しい森になって……

 みんなの記憶を呼び戻してくれるはずだ。

 まあ、カン、なんだけどさ」


 そうしてくれたアドバイスは『ぐう正』というよりほかないものだった。


「いや! いやいや! それだよクレっちゃん!!

 っしゃー! やるぞやるぞ――!!」


 俺は一度目を閉じて、それから開いて。

 みんなをひとりひとり見つめ、思い出していった。


 ひとり、またひとり。思い出すほどに、森の仲間の姿が鮮やかなものになる。

 そのせいか。戦いの手はいつしか、止まっていた。

 緑のドラゴン姿のクーちゃんも、もう吠え声をあげることなく、まっすぐに俺を見ている。

 ああ。いまこそ語る時だ。

 俺はみんなとのことを、短い言葉にしてはなっていった。


「……はじめて呼ばせてもらったターラ。

 鋭い指摘に、俺の浅さや至らなさを気づかされハッとすることも多かったけど、そんな俺と仲良くしたいと、いつも優しく包んでくれた」


 すると、しなやかな大猿の姿がゆらり、しんきろうのようにゆらぎだした。


「次に呼ばせてもらったのは、ヴァラ。

 ソラ発見からその探し物スキルにはお世話になりっぱなし。引き出しが多い才媛で、いつも俺たちを立てて、誠実に懸命にフォローしてくれた」


 大猪も、つぶらな瞳でこっちを見ながらゆらり。


「スゥには悪いことをしちまったよな。俺の不注意な言葉に傷ついて、でも誤解が解けたらすぐ仲良くなって、契約もそのとき決めてくれた。

 トレーニングも悪ふざけもノリノリで付き合ってくれて、なにかとつるんでくれた」


 でっかな虎は、まるで猫ちゃんのようにかわいく座ってゆらり。


「つるむといえばシャシャだ。唯一普段が男だから、島では一緒に風呂も入ったり、いろいろ相談も聞いてもらったり。

 ときには相談する前に声をかけてくれたりもして、たよれる兄貴役だった」


 青くきれいな大蛇は、ますますきれいに輝きつつゆらり。


「ルゥはぽうっとしているようでてしっかり優しい。はじめてのオソラドライブの後に「なんかあったら次回はチケット消費なしで来るから」といってくれた。

 気づいてたんだな、クレっちゃんがむしろ、落ち込むんじゃないかって」


 巨大なロック鳥も、うれしげに羽をふくふくさせてゆらり。

 最後はクーちゃんドラゴンだ。じっと、もはやけなげなほどの表情で、俺を見てる。


「……そして、クーちゃん。

 シークレットガーデンで最初に会ったとき。俺なんかモテねえっていじけてたら、すっげえアドバイスくれたよな。

『情熱! 滾る情熱! お前に足りんのはそれよ!

 まずはただ一人を真っ向から愛せ! どっしりと腰を据えて!!

 ケツの据わらんチャラ男なんぞ、せいぜい動くブロマイドとしての需要しかないわっ!』て。

 ……いやさ。それをまっこーからガン無視する感じになっちまうよな。ごめん。

 でもさ。

 それでも俺は言う!!

 俺、クーちゃんもターラもヴァラもスゥもシャシャもルゥも、みんなみんなだいすきだ!!

 だから、戻ってきてくれよ!! だいすきなんだ!!

 みんながいなくちゃ楽しくないんだ!!

 俺の幸せの森は、みんながいてくれてはじめてできるんだよ!!

 頼む!! もどってくれ!! 俺のだいじなひとたちに!!

 究極変身なんかさせないから! しないで済むよう、俺が守るからあああ!!!」


 腕にはまった、結びの腕輪を掲げて、俺は絶叫していた。

 俺のとなりで支えるように、クレっちゃんも腕輪を掲げる。


 体の奥から熱いものが湧き上がってくる。次から次へと。

 そいつは腕輪を通じてあふれ出し、不完全な森を暖かな光で満たした。



 そして光が引いたとき、目の前には優しい表情のみんながいた。

 笑みをたたえ、目には小さく涙をたたえて。

 確かめるまでもなく分かった。みんなは、正気に戻ってくれたのだと。

 クーちゃんがみんな代表として、一歩進み出て言った。


「まったく……まったく。なにが、ガン無視じゃ。

 滾る情熱。我ら全員の胸にあふれてなお余るほどの情熱。

 しかと、しかと、受け取った。

 チナツよ。お前こそが、われらの真の契約者。

 そして、クレハ。チナツを時に導き、時に支えるお前もまた、我らがよき契約者。

 惑わされたりして、すまなかったな。

 我らみな、ここに誓おう。

 われらの絆、命ある限り二度と、もう二度と、見失わぬと!」


 クーちゃんがさしだした手を、俺はしっかりと握った。

 すると、クーちゃんの緑に染まる指先から、ふしぎなつる草のような文様がするすると広がった。

 渋い緑色したそれは、俺たちの前腕を一つにつなぐように、その身をのばし横たえた。


「イヤッッホ――ウ!!!」


 先代女神チキ様が、葉っぱの仮面をかなぐり捨てて快哉を上げる。

 それを契機に『楽しい森』の中は、仲間たちの歓声に満たされたのだった。


結局変身させませんでした。

クレイズ「なんで嫌かってそりゃー、おとめごころじゃ///

つーかほら、めっちゃキメラなんでなあ……」

チキ「チナツそういうの大好きよ?」

クレイズ「のあああ! やればよかったあああ!!」


次回、四女神戦ラスト、ルーレア戦です!

どうぞ、お楽しみに!!

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