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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_98 終結・魔王戦!~あの月を目指す、その前に~

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107-9 思い出して! ミルクのかおりのわんこ大作戦! ~チアキの場合~

2023.03.09

怒りに火を注ぐ→怒りの炎に油を注ぐ

正しいか微妙な表現のようですので修正することにいたしました。

 コリー装備の女の子に身をやつし、マウントブランシェに住むエアリーお姉ちゃん。

 とってもとってもつよいんだけど、ときにはそれがわからなくって、襲いかかっちゃう熊さんもいる。

 そんなときお姉ちゃんは、しょうがない熊さんを、片手でチョイとなげる。

 でもその日は、熊さんがごろごろ転がってってしまって、そこに、運悪く僕がいた。


 ぜったいにありえない場所で、ぜったいにかなわないモンスターにであってしまった僕は、すっかり腰を抜かしてしまって、口もきけなかった。

 お姉ちゃんはそんな僕を、ひつじ牧場に連れてってくれた。

 あったかなお部屋で、ほかほかのホットミルクと、あったかくてつめたいミルクアイスのせホットケーキをいただいて、やっと僕は「ありがとうございました」を言えたのだった。


 それから絶景の牧場に出て、ふわふわのひつじさんたちになぐさめてもらったら、僕はすっかり元気になった。


『ありがとうございます、おねえさん!

 あの。なにか、お手伝いできることありますか?

 たすけてくれた、お礼がしたいんです!』


『そんな、いいのよ? だって、わたしのせいなのに。……

 でも、そうね。牧場の中でなおしたいところもあるし、ちょっとの間だけ、お願いしちゃおうかしら?』


 その時、自分では気づいてなかったけれど。

 僕はそとが、モンスターが怖くなっていた。

 お姉ちゃんは敏感にそれを察して、僕のこころが癒えるまで、ひつじ牧場においてくれたのだ。


 優しく、ときには厳しく、牧場のいろいろをおしえてくれた。

 ときにはわんこ装備同士、ひなたの草原でおっかけっこして。

 つかまったり、つかまえられたら、ほんとのお姉ちゃんのようにぎゅーっとしてくれて。

 そんな、あったかくてしあわせな日々が、僕をすっかり元気にしてくれた。


 そうして僕は、そともモンスターも、こわくなくなって。

 こどものころからの夢だった高天原へのみちゆきを、もう一度踏み出すことができたのだった。


 つまり、いまの僕があるのは、エアリーお姉ちゃんのおかげなのだ。

 血はつながっていないけれど、こころはそのぶんしっかりつながった――

 たいせつな、たいせつな、お姉ちゃんの。


 * * * * *


 レンが<カワセミ>をかかえてまっすぐ飛んでいく。

 ちょっと見には決死の突撃、でもそんなのじゃないことを僕はしってる。

 はたしてレンは、ぎりぎりでシャスタさまをとりもどすことができたのだった。

 まだ戦いの最中だったけど、僕たちはおもわず、歓声を上げてしまった。


「すまぬリンカ、サクラ。レンをお借りしたぞ」

「ドンマイ、シャスタさま!」

「大丈夫ですか、いま回復を」

「よい。

 その手は戦いに回してくれ。わが姉を、妹たちを早く解放するためにも。

 守るべきはずのお前たちを忘れ、チカラを取り上げ、使ってしまったせめてもの詫びじゃ」


 レンの腕から降りたシャスタさまは、あの小さくってかわいい姿だけれど、威厳はばっちりでかっこいい。

 ちょっと一安心の僕たち、だけど逆に、龍になったエアリーお姉ちゃんは心配そうに鳴く。


「姉上ー! わらわならばだいじょうぶじゃ。

 このものたちは敵ではない。危害を加えられる心配など、ないぞ!」


 ことばが出せなくされているのだろう、エアリーお姉ちゃんはかぼそく鳴く。


「ほれ、姉上も矛を収め、こちらに来るがよい!

 そして皆をよく見よ、幾度もなじみ慈しんだ子らであるぞ!」


 シャスタさまは身振り手振りをまじえて説得してくれるけれど……

 どうやらその説得は、通じなかったみたい。

 怒ったように大きく吠えると、星龍の姿のエアリーお姉ちゃんは、攻撃のかまえで急降下してしてきたからだ。

 シャスタさまは「待ってくれ姉上!!」と龍化したけれど、すぐにもとの小さい女の子に戻ってしまう。


「く……すまぬ、力を使いすぎた。

 すこしだけもたせてくれ、このTPの雨を受け回復する!!」

「でしたら!『スイート・ミルキィ・レイン』!!」


 コトハさんが覚醒回復技で、僕たちみんなを回復。

 よしこんどこそと立ち上がるけれど、それはフユキがとめた。


「待ってください。

 おそらくエアリーさんは、あなたをたぶらかされたと思っているのでしょう。

 その状態であなたが前に立てば、傷ついた妹を盾にされたと、怒りの炎に油を注ぐことになる。

 どうかそこで休んでいてください。あなたの時と同様、ギリギリのダメージを与え救い出します!」


 星龍のかぎづめからとびだした衝撃波を『ホワイト・ソニック』でいなし、トラオも親指を立てる。


「そーいうこったァ!

 ここは俺たちにドンとまかせて回復しててくれ!

 レヴィアたんと突撃カラスといっしょにな!!」

「たんじゃないっちゅーとろーがー!!」

「だーれが突撃カラス……あ、まちがってねえわ」


 トラオのいうことはだいたい、まちがってなかった。

 レヴィアタンさんも、シャスタさまと同じように、ちっちゃい女の子になっているのだ――シャスタさまと力比べになった時、水でできた体の大部分を、ギリギリのタイミングでほとんどパージしたせいだ。

 そして、レンはほんとに突撃カラスだし。


 このバトルがはじまってからずっと、テラと『爆神』を連発して、しまいにはみずからつっこんだ。

 もう主人公っていっていいくらいの、がんばりっぷりだったのだから。


「そうだよレン! つぎは、僕ががんばるよ!

 エアリーお姉ちゃんは僕たちでとりもどすからね!」


 とはいえさっき、シャスタさまのチカラを引き上げられたのは、やっぱりきびしい。

 補充したくても、とうのシャスタさまもチカラがほぼからっぽ。

 いつもシャスタさまの加護を頼りに戦ってきた僕たちのほとんどは、大幅戦力ダウン状態だ。

 トラオとサリイお姉ちゃん、そして僕は、水の武装が消えちゃってるのでいったん後退せざるをえない。


 僕たちにかわって、シャスタさま頼み率の低いフユキ(ナツキくんが中にいる)とサクラちゃん、ジズくんが前に出てくれた。

 その背中に、コトハさんとリンカお姉ちゃんがどんどんフォローを飛ばしてくれたから、なんとか崩れないですんだというところだ。


 だいじょぶ、こんなところでくじけない。

 僕はもともと、クラフターなんだから。アイテムいっぱい、もってきたんだから!


「トラオ、サリイお姉ちゃん。

 このまま水属性で行くなら、『シャスタの霊水』がある。

 属性変えてくなら、アミュレットと護符とポーション、そろえてあるよ。

 どれでも好きなの使って!」

「そう……だな。

 ここは、炎で行くか」

「賛成。

 霊水はチアキくんが使って。あなたは『シャスタのカンナギ』だから、きゅうに他属性は厳しいでしょ」

「ありがとう! それじゃはい、炎セット!」


 ふたりはてきぱきと炎吸収装備に換装。アミュレットを装備して、護符をふところに。思い切りよく炎の加護のポーションをかぶると、そのまま前線に飛び出していく。


 入れ替わりにやってきたのが、ドール姿のグリードさん。

 ちいさくかためた『それ』を『ほらよ』と僕に投げてよこす。


「えっ、これ……」

『さっきのだ。牧羊犬のお前なら制御できんだろ』


 たしかにいまの僕のめいっぱい――『牧陽犬(シャイニー・ドッグ)+』なら、爆発以外も導ける。

 つまり、これの効果を味方限定にできる。


 でも、僕にひらめいたのは、別の、もっと優しい方法だった。


「ありがと、グリードさん。

 でも僕、説得したいの。

 僕もやってみる。僕なりのやりかたで!!」

『おお……はあ?!』

「みんな――!! おねがいがあるの!!

『コルヌコピア+』つかうから!

 いちど、攻撃をやめて!

 僕に、おねえちゃんを、説得させて!!」

「おお、たのんだぜ!」

「気を付けてね、チアキくん」

「しっかりね!」

「っしゃー!! これで勝つる!!」


 声をあげればかえってきたのは、信頼にみちた「いってこい!」だった。


「ありがとうみんな!

 起動、『コルヌコピア+』! さらに倍率、ドン!!」


 その場にそそりたつ、巨大な羊角杯。

 それに僕の『牧陽犬(シャイニー・ドッグ)+』を全力でかけて、回復を一時的に毎ターン10万に。

 これで、だれもやられない。

 満を持して、コルヌコピアのうえに跳んで装備解除。

 あのころみたく、大きく両手を振って、笑顔を向けて、エアリーお姉ちゃんによびかけた。


「エアリーおねえちゃーん!

 僕だよ、チアキだよ!

 おねえちゃんと、ひつじさんのお世話をしてた!

 ね、おねがい。僕のにおいをかいでみて。

 そしたらきっと、おもいだすから!!」


 星龍のおねえちゃんは、おどろいたように僕をみる。

 しっぽを振りつつじっと待っていれば、お姉ちゃんはすっとはなづらをよせて、僕をくんくんとかいだ。

 そして待つこと、一秒、二秒。

 きれいなおめめが、いつものようにやさしく、僕を見た。


「おねえちゃん!」


 うれしくて大きな鼻面に抱き着くと、星龍はキラキラのかがやきとともに、エアリーお姉ちゃんの姿に戻る。


「ただいま、チアキ。

 ごめんね、心配かけて」


 そうして僕のことを、やさしく抱きしめてくれた。

 あの頃とおなじように、ぎゅうっとあったかく。


香りは記憶を呼び覚ますのです^^b


次回、新章突入を飾るのは、VSクレイズ様&愉快な神獣たち!

この章でルクまでたどり着きたい!

どうか、お楽しみに!!

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