107-7 チビだとばかりおもってたカラス野郎が(ちょっとだけ!)大きくなっていたので、とりあえず頭突きをくらわした日~『シャスタ』の場合~(1)
ええと、書けた、書けたんです。
でもさすがに原稿用紙14枚分は多すぎるので二回に分けました……!!
違和感。違和感。違和感でいっぱいだった。
なぜ、わたしはこのフィールドに『いる』。
なぜ、わたしはこの子たちと戦うことになっている。
そもそも――かれらは何者だ。
「エア、この子たち知ってる?」
「ううん……誰だろう。シィもわからない?」
「うん、ぜんぜん……」
となりのシートの相棒も、めずらしく困惑している様子。
一生懸命に、まるで知己だったかのような言動をとるかわいらしい子供たちだが、正直誰だったのかさっぱりわからない。
ただ、ただ、彼らは倒すべき敵、それだけしかわたしたちには情報がなかった。
「まあ、……とりあえずは、やるしかないか」
「そうね。
この子達なら、……きっと大丈夫。
そんな気がするの」
「そうかもね。
ま、伝説の龍とか味方に付いてるし、なるようになるでしょ!」
フィールドもやけに荘厳、たぶん、なんかのイベントだ。
そして、あの子たちは可愛い。
ということは、あの子たちは『主人公サイド』で。わたしたちはいつものように、ボスを演じ戦えばいいのだ。
それで、事態は動く。
動かしてくれる。あの子たちなら。
予感に満ちてわたしは、目の前の戦いに意識を没入させていった。
フィールドにはクレイズとルーレアもいた。
仲のいい二人だけれど、戦闘面ではいまいち相性が悪い。それぞれ距離を取って龍化、龍と子供たちの連合パーティーに向かっていく。
足元にたくさんいる小さな白と黒――スケルトン兵士たちと影の魔獣が進攻していくなか、なんかリーダーっぽいのがど真ん中で斬りあっている――をよけるように、右翼がわから大回りして。
わたしたちはふたりと逆にタッグの相性がいいため、二人でその上を飛んだ。
左翼ではもう、緑の龍と桜の木っぽい魔導アーマーが技とブレスでやりあってるので、干渉しあわぬように距離を置いて。
ほどよきところでエアリーは滞空。後衛として動き始めた。
彼女の初手は、ある程度決められている。ひとつには強すぎるから。ひとつには、それに対応できた相手は彼女を倒せるようにだ。
それにのっとって、エアリーは動く。
相手チームが複数。かつ、すべて第二覚醒かそれ相当であるため、まずは補助魔法を使用した。
「あらっ?『星域展開』じゃないわね。
『星神域展開』……上位バージョンですって。
なにかしらこの効果の『大神意』って?」
「さあ……?」
そのときエアリーが声を上げた。リスト記載の魔法が変えられていたのだ。
わたしも説明文を見てみたが、たしかに名前が違うし、効果説明にも見覚えのないひと項目がくっついている。
『大神意』。文章内の場所的に、召喚奪取に相当する、あるいはカテゴリー的に近いものだろうと考えられた。
なんだろう、もどかしい。
脳裏のどこかにちりとひっかかるのだけれど、それ以上の情報がでてこなくて。
とりあえずネットを『見て』みる。これは、直近のイベントで味方同士を戦わせるために使われたギミックということだ。
このイベントにわたしたちも参加していたようなのだが、なぜだか記憶がさっぱりない。
というか今はそのオーラスで、わたしたちは記憶を封じられて敵側で戦っている、という設定になっているらしい。
「あー」
「あー」
二人して納得の声を上げてしまった。
『超越者』のわたしたちは、時空の制約を超えることができる。よって、更に上位の覚醒者、例えばマザーとかでなければ、記憶を強引に奪うことはできない。
と、いうことは。
わたしたちは『記憶喪失のボスキャラとして戦ってください』との依頼を受け入れ、縛りプレーとしてあえて、一時的に記憶を封じて戦っていると、そういう状況なのだ。
ともあれ眼下では、敵チームの一員がその効果を受けたようで、味方に付いた。
頭にちいさな茶色いきつねの耳をはやした、くったり眠そうなドール(※かわいい)だ。
もちぬしらしきチワワ装備少女(※すんごいかわいい)は対応できないと判断したのか、ドールをぺいっと地面に投げる。
すると起きたのは奇妙な現象。ドールは銀色のつやりとした、真四角の金庫に姿を変えた。
なんだこれ。思わず二度見した。金庫だ。なんで金庫。
しかもそれは『星神域展開』のチカラをうけ、みるみる大きくなっていく。これは。
「えー、と……防、壁?」
「かしら? かわいいわ!」
エアリーはお花を飛ばす勢いでニコニコ。なぜかいたくお気に召したらしい。
うーん、まあかわいくないとはいえないこともないかもだけど……とりあえず、役に立つのか、これ。
わたしたちは飛んでるし、正直意味ない気しかしない。
『聖域展開』系はこれが面倒なのだ。
けどまあ、金庫ってことは、なんか『レッツパーリィ!』っぽいことやってくれるかもしれないし。
それに、目の前にはもう、長い水の体を持つ龍が迫ってきている。
あいさつ代わりのアクアブレスを飲みつくして彼女――レヴィアタン――は、わたしに接近戦を挑んできた。
上等だ。わたしは勢いのままにその巨体に牙を立てた。
哀しい戦い?! というシチュエーションをサブタイ時点から全否定していくスタイルです。
次回、ニヨニヨ必須のサブタイ回収!
どうぞ、お楽しみに!!




