107-6 これもひとつの、ごおんがえし~コトハの場合~
あれれ……1ターンめだけ……だと……?!
「シャスタ様、エアリーさん。あなたがたのおかげでコトハとのきずながむすばれ、ナツキも救われました」
『たとえおぼえてなくっても、おねえちゃんたちは、オレたちのとってもだいじな、恩人だよ!』
「だから、必ずお救いします!
『すべて、愛する者たちのために』!!」」
フユキくんと、フユキくんに宿ったナツキくんが言挙げる。水龍のシャスタ様と、星龍のエアリーさんはこちらに向けて飛びつつも、けげんな目になった。
わかっていた。フユキくんがひとりで、びみょうに口調を変えてしゃべってるように見えるからだ、と。
ああ、いまのおふたりのなかからは、わたしたちのことが消えてなくなっている。
そのことがいやでも胸に迫って、せつないきもちになる。
わたしたちはみんな、おふたりにたくさん、たくさんお世話になった。
いつもまるで、ほんとうのおねえさんのように親身になってくれた、だいすきなひとたち。
そのふたりに『突然やってきた敵』を見る目で見られるのは、ほんとうにつらくて悲しい。
でも、だからこそがんばるのだ。
たのしかったあの日々を、とりもどすために。
その先も、もっともっと、つづけていくために!
決意とともにわたしは、護符とポーションを握りしめた。
エアリーさんが、中空でホバリング。
ビードロ細工のような翼を大きく広げると、ステンドグラスを透かした光のような輝きが、空中に陣を描いた。
『星神域展開』。
聖なる加護を広げ、範囲内の味方に各種強化をかけ続け、敵側には弱体化と召喚奪取をかける神聖魔法の、星属性バージョン――の、上位進化版だと、シオンくんからの情報が告げる。
強化された『大神意』が加わっているため、意志をくじき、GMの支配下へといざなわれる、強力な魔法だと。
わたしたちとのことを、覚えていれば、これを使ってはこないはずだった。
なぜって、わたしたちはこれのもととなる『星域展開』を完封している。同じことになると、そう判断できるはずだからだ。
それでも、サクラちゃんは知らん顔で、ちょっと棒読みのうめき声を上げ始めたグリードさんのドールをほうりなげる。
月色のクレイフィールドに落ちたドールは、抵抗するように大きく四角い箱――金庫に姿を変えた。
そうして、グリードさんは『大神意』のもと、エアリーさんがわの『盾』となった。
「おおい?! グリードおま、なんでだあああ?!」
トラオくんのほうは、名演技。ほんとうに驚いてるみたいに声を上げた。
「トラ、ブレス来るわよ!」
サリイお姉さまもさすがの女優っぷり。わたしたちもがんばる。
『アクアブレスなんて飲み物よ!!『呑みつくす大海』!!』
「『ブレス・レジスト』!!」
『風よまもって!『つつみこむ追い風』!!』
レヴィアタンさんは、攻撃をのみつくす技で『アクアブレス』を飲み込む。
わたしは護符を、ジズさんは加護付きの追い風を発動した。
ホバリングしてとどまるエアリーさんに対し、シャスタさまはこちらにまっすぐ突撃してくる。そしてレヴィアタンさんも、シャスタさまにまっすぐ向かっていく。
その動きからは、レヴィアタンさんが身をもってシャスタさまを止めるつもりであること――そうである以上、以降のブレス対応は『呑みつくす大海』を頼れないことがあきらかだ。
それにたぶん、ジズさんは。
わたしは一つ息を吸うと、大きく声を上げて宣言した。
「わたし、ブレスレジストやりますっ!」
『うん!』
「りょーかい!」
「お願いね!」
「頼んだ!」
みんなからの信頼がこもった声に勇気づけられて、胸がほかほか。
頭はすっきり、さえわたる。
華やかに攻撃をかけるみんなの様子を静かに見つつ、わたしはタイミングをはかった。
トラオくんとサリイお姉さま、チアキくんとリンカおねえさまは『シャスタのエンゲージリング』『泉水晶』のちからで、シャスタ様のチカラを吸い上げて、攻撃と補助を。
レンくんは、シャスタさまとエアリーさんが両方爆域にはいる位置にテラフレアボムを放つ。
サクラちゃんは、リンカおねえさまの前に陣取って「はああああっ! 超超すごくてでっかい! ロケット・わん・ぱーんち!!」とかっこよく新技をはなっている。
シャスタさまとお会いしたばかりのころ。フユキくんに恋したわたしは、活発で華やかなサクラちゃんと、おとなしくてじみな自分を引き比べて、落ち込んでしまったことがあった。
結局その事件がきっかけで、ナツキくんと再会、フユキくんも救われ、わたしたちの距離はちぢまったのだけれど……
そのときわたしは、たくさんのひとに心配をかけてしまった。
反省したわたしだったけど、それでもやっぱり自分に自信は持ちきれぬままで。
レオナさんたちがつくってくれたシックかわいいドレスローブにも、言い訳をつけてなかなか袖を通せなかった。
でも、今は。
わたしは、わたしと思うことができる。
フユキくんが、ナツキくんが、わたしを世界一すきといってくれたその時から、わたしはもう、なにも怖くなくなった。
ナツキくんを宿したフユキくんは銃撃にパワーを乗せてどんどん打ちだす。
放つ全力を維持できるよう、わたしはその背に、『がんばれ』をこめた甘いミルクポーションを投げた。
シャサさん「やっぱ無理だったかー」
このネタをわかる人は何人いるのだろう(爆)
はい、この回でシャスタ戦を終えるつもりだった人がここにいます。
正確に言うと2ターン目入りくらいです。
そんなわけで、次回、つづき!
次回2ターン目だけとかそんなことはない……はず……なので、ご安心くださいませ。
どうぞ、お楽しみに!!




