107-4 あきらめさせない! 開戦、ラストバトル!!
ルクは、自分がしたことをちゃんとわかっている。
そのうえで、堂々と立つ。
姪のセレナ、その執事ヴァル、そして腹心アカシを従えて。
自らの航路に、それに付き従うものたちを、裏切らぬために。
「すでにわかっていると思うが。わたしは、もともと召喚士にして幻影士だ。
だから、お前たちを倒すのにもっとも効果的なものたちを喚びおこさせてもらう。
卑劣と怒るならばそれもよかろう。これ以上、落ちる余地もない!!」
悲壮にも聞こえるその言葉とともに、ルクは大きく手を掲げた。
謁見の間を満たす、いくつもの魔法陣。
そこから現れたのは、なるほど、もっとも効果的なメンツだった。
ミッドガルド四女神と、クレイズ様の神獣たち。そして『ダンサーズ』。
かれらがおれたちを見る目は、獲物をみるときの冷たい目。
なるほど、第五覚醒者のチカラをもって、記憶に細工をしたか。
四女神と神獣のナカノヒトは、第三覚醒者。通常の『大神意』は効果を及ぼさないが、第五覚醒者であるルクのチカラをもってすれば、強引に記憶に干渉することは可能。
さらにいうなら『ダンサーズ』には当然、抵抗の余地などない――マネージャーでマスコットの『さっきー』は第一覚醒段階のαで、ほかの面々は覚醒なしのβなのだ。
大丈夫。彼ら自身をよびさます手立てなら、ある。
アスカがおなじように手をかざした。
「よっしゃーよっしゃー。ほんならこっちも喚ばせてもらおっか。
カモン! だいたいの関係者ーず!!」
ユルいというか、ラストバトル前としては斬新な呼びかけとともに現れたのは、『うさねこ』の仲間たち。
「エアリー姐さん。待っててくれよ。俺たちがすぐ元に戻してやっからな!」
「ようシャスタ! オレを忘れたとかいわせねーぜ! 手持ちの新型全ブッパしてでも思い出してもらうかんな!」
トラオが決意を述べ、レンが威勢よく啖呵を切る。
「あんまり乱暴なのはだめだからね? 僕たちを忘れてたって、お姉ちゃんたちはお姉ちゃんたちなんだから!」
「そうね。こんな戦い長引かせたくないわ。的確かつ、全力でいくわよ!」
チアキが優しく釘を刺し、寡黙なサリイさんも、めずらしくハッキリと言葉を放つ。
「クレイズ様。俺たちをお忘れの今、こう呼ばれてもご不快かと存じます。
けれど、あえて呼ばせていただきます。クーちゃん様、どうか俺たちを、だめならチナツだけでも、思い出してやってください!!」
「みんな、ちょっとでいいから、俺のハナシをきいてくれないか! ほら、ここに先代虎神獣のシーラもいる。怪しいもんじゃない!!」
クレハがダメもとで懇願し、チナツもクレイズさまと神獣たちに呼びかける。
彼らの後ろには、フユキとコトハさん、リンカさんとサクラさん、シーラさんとユキさん。
なんと地球に残る予定だったハルオミとハルキくん、それにアキトとセナ、アオバもいる。
「きてくれたの、ハルオミくん、きーくん?」
「エルさんに言われました。いまあなたたちがゆくべき場所はここだと。
義姉上と、仲間たちのいるここだって!」
ミライの問いに、ハルキくんが晴れやかな表情で答える。
「こっちもおなじく。
ミツルとソラのチカラになってやれって言われた」
アオバがちょっと照れたように笑えば、ミツルもソラもうれしそう。
「あーあー。あっちもこっちもおあついなー。
まっ、うらやましくなんかないけどさ?」
「そうそ。おれたちは現役学園生代表だから。
みんなのぶんまで、がんばるだけだ」
「ほら、声かけてあげなよルーレアさまに」
アキトとセナも、今日はちょっぴりホットにキメてくる。
セナはニノとイズミの肩をたたき、アキトはイツカの背中に――そこに装着された制御翼に宿るレイジにウインクをとばす。
『のっえっあ?! 俺っ?! いや、俺なん?!』
不意を打たれてぼてっと落ちてきたレイジの、キョドりまくりのその様子に、時ならぬニヨニヨムードが広がる。
「だーなー、ルーレア様といっちばん一緒にいるのはレイジだもんなー?」
「イーパラ地下闘技場のツートップだからな、ふたりは」
「レイジ、そっち行って来いよ。俺はなんとかすっから!」
イツカにまでいい笑顔で退路を断たれ、レイジは開き直る。
『うううあああうあああ!! あとでおぼえてろてめーら!!
ルー!! 俺のこと覚えてるか?! その顔は覚えてるよな?!』
「……ノルン西坑道を塞いだ犯人のひとり……」
『あああ! それはたしかにそうなんだけどそのあと――!! その後思い出してたのむからあああ!!』
頭を抱えるレイジのとなりで、もうひとり頭を抱えているのがズメイだ。
『えっとー……ちょっとまって、これやっぱ俺らも加勢しなきゃな感じ……?』
そう、召喚されたみんなは、いつもの何倍ものパワーを持っている、いや、持たされている。
もちろんそのソースはルク――の背後にいる、GMだ。
おれは玉座のうえ瞑目する彼女に向けて、声をかけた。
「GM!
あなたもわかっているはずです、このまま続ければ、第三次試行にはデッドエンドしかないと!
それを回避するための手立てを持ってきたのです。五分でいい、どうか――」
「無駄だ。無駄だよ、カナタ君」
ルクは憐れむように言い放つ。
「GMは、はかない希望をお捨てになった。
お前たちを下し、地球に再び戦争を引き起こし、今年度目標を達成せんとお決めになられたのだ。
もう遅い。もう遅いのだよなにもかも!!
さあ、膝をつくがいい。圧倒的な世界の意志に!!」
もちろん、おれたちはそんなことはに屈したりはしない。
「ふざけんな!!
俺たちはあきらめねえ!!
お前たちだって、あきらめさせねえ!!
思い出させる! そして、引っ張り上げる!
希望の待ってるこの場所にっ!!」
言い切るイツカの頭上、水晶色の天輪がひときわまばゆく輝きを放ち、最後の戦いは始まった。
ラストバトルです。
おかわりはありません。
マジにラストバトルです。
いやほんと。
次回、ついに交わる剣と魔法。
再現された因縁の場面にも、屈することなくアタックチームは戦います。
どうぞ、お楽しみに!!




