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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_98 終結・魔王戦!~あの月を目指す、その前に~

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107-2 かつての友と、『暴かれた』秘密~エルカの場合~

 ジャンク屋といえば聞こえはいいが、その実態は戦場のコソ泥。

 そんな野良仔ギツネを拾ってくれたのは、お得意さんの少年だった。

 いっしょにいこうぜ、もっともっときれいな景色を見せてやるよとやつは笑った。

 イツカ君にどこか似た、あけっぴろげな笑顔で。


 やつはみんなの『おひさま』だった。

 薄汚れたスラムのただなかにあってなお、いつもきらきらとかがやいて、みんなを照らし温めてくれる。

 そんなやつに、みんながひきつけられた。

 やつのまわりにはいつも笑い声が絶えず、やつが行くところ、しあわせがあふれた。


 けれど、そんなやつでもできなかった。

 地球からすぐに戦争をなくすなんてことは。

 せめてカタキを。戦って死なせてくれ。なんで我らが許さなければならないの。

 悲痛なその声たちを押しつぶすことは、優しいやつにはできなかった。


 そこで我らは宇宙に飛んだ。

 戦いの連鎖を終わらせるため、経戦をのぞむ者たちだけを地球に残して。

 しかしそこは見えない壁のたつ袋小路。

 このさきにはけしてゆけぬ。そう忠告を与えてくれた女神を『門番』と断じ、ルクたちは戦いを挑んだ。


 そのとき僕は見たのだ。青い地球に走る不吉なノイズを。

 やめさせなければ。しらせなければ。

 すでに戦いは激しく、だれも通信には答えなかった。

 この時代、僕たちクラフターは後方支援専門職で、戦場に出ることはなかった。

 それでも僕は走った。必死に全力で走った。


 結果。僕は間に合わなかった。地球は、リセットされてしまった。



 つぎの生をもって、この過ちの責任を。ルクたちがそう『大女神(グランドマザー)』と話したあとに、僕も御前に進み出た。


『どうしたのです、エルカ? ミッドガルドになにか、心残りが?』

「はい。

 僕にはもう、虹の橋の向こうへ旅立つ資格がある……そうお聞きしました。

 ですので僕は、アースガルドで人間になります。

 ですが、そのあとすぐもう一度、戻ってきたいのです。

 こんどこそ夢をかなえたい。ルクからもらった、世界の平和という夢を。

 そのために僕は、もっと力を尽くしたいのです!!」


 アースガルドで人間となった僕は、体の調整ののち、すぐにミッドガルドに舞い戻った。

 こんどはアースガルドからの使者として。

 当然、僕の記憶は封じられ、何も知らぬまま成長した。

 あらたな人生、あらたな生活のなかで得た仲間を愛し、それを消そうとした『巨悪』と、敵対するに至った。

 その底にいるのが、かつて夢わけ合った、たいせつな友と知らぬままに。




『……で。

 何をしに来たんだ、エルカ。

 俺たちとのことを思いだした。それはわかった。

 そのうえでお前は、どうするつもりだ』


 たどり着いた『謁見の間』にて。やつはわたしをじっとにらんだ。

大女神(グランドマザー)』本体とつながった、薄青いカプセルポッドの中から。


「『エルカ・タマモ』としては、きみは敵だ。

 だが、『スラムの仔狐』としては、だいじな友だ。

 わたしがただ敵にしか見えぬなら、いまは何も言うまい。

 だが、ひとひらでも友情があるのなら、ひとつだけお願いをしたい。

 この子らの話を聞いてやってはもらえないか。

 本当に、新たなプランを持ってきたのだ。

 古き肉体の消滅を越えてなお、世界のために尽くさんとする。

 その精神性は、我々とおなじだ。

 頼む。いま一度、静かに耳を貸してはもらえないか」


 わたしが頭を下げると、帰ってきたのは長い沈黙ののちのため息。


『頭を上げてくれ、エルカ』


 青い明りの向こう、当時と変わらぬ姿の友はこういった。

 苦渋に満ちた声と顔とで。


『もう、本当に時間がないのだ。

 現行三国のすべてを挙げた世界大戦。それにより虹の橋を渡る、万の魂。

 滅びを免れるのに必要なのはもはやそれだけ。

 もう遅いのだ。我らにはもう、選べる『カード』など残っていないのだ』

「ちょっと待てよ、だからそれを」

『うるさい黙れ!!

 話したいなら死んでからにしろッ!!』


 イツカの言葉をルクはぶった切る。

 それはやつの会心の叫びだった。


『わかってるんだろうどうせゲームなんだこんなのは!!

 全員同意の上で始めた教育プログラムとしてのウォーゲーム!! 死んで殺してステージアップ!!

『ミッドガルド』はそのためにつくられた特設ワールドでしかねえんだよッ!!

 ちゃんとそこまで話したんだろうな?! ただのゲームと分からせたうえで引っ張ってきてんだろうなお前の友をッ?!』


 けして口にしてはならない秘密を暴く言葉は、仲間同士の信頼をズタズタにし、士気を瓦解させるに足る最悪の呪い。

 こめかみがきりりと痛む。記憶の封印が悲鳴を上げる。


 けれど、イツカとカナタは言った。


「ああ、話したさ」

「話してきたよ。なにもかもね」

『ティアブラは架空世界でのVR』……鋭い!

あれから三年、やっと言えます。あたりですよおおおお!!

ええ、もう一階層ばかしあるのですが(∀`*ゞ)エヘヘ


次回、イツカナがした打ち明け話。

ミライたちの反応はもちろん……

どうか、お楽しみに!

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