Bonus Track_106-4 かみさまだから、できないこと~『グランドマザー』の場合~
ルクはぼやいていた。
なんだってあいつらが戻ってくるのだと。
なぜ、あいつらをふたたび追放できないのだ。
それもだめならせめて、宇宙空間に放りだしてやれないのか。
俺のチカラなら、それができるはずなのにと。
そう、なにゆえか、彼らは戻ってきた。
それに不平を言うことはない。
あたえられた条件でミッションを達成すること。それがわが意志にして存在意義。
わが育成対象、地の素をもつ子らを滅するという選択肢はわれにはない。
それはいまやわが一部となったルクにもなしえぬことだった。
『大女神』が干渉できるのは、スターシードや月の園のアバターの肉体。
そして、人の子の認識、それだけである。
ルクはこうなれば『青嵐公』『銀河姫』だけでもといきまいたが、その行為に意味はない。
イツカたちとカナタたちの復活。人の子らが一度それを成し遂げてしまった以上、二度目もなすだろう。
TPの高額請求ももはや抑止力にはならない、どころか、いまとなっては事態を悪化させるのみと試算された。
かれら言うところの『白妃』――TPの扱いに長け、これを多く生み出すこともかなうものたち――は、もはやかれらにくびきを架される存在でない。
かれらの主導で生み出されるTPは、天文学的請求をも余裕で支払いうる。
この処理を誤れば、世界経済は破綻。いや、それより先に暴動が起きるか。
ルクはだれよりそれをわかっている。だからこそ、愚痴を漏らすしかできずにいる。
あらゆるデータが、試算が裏付ける。潮目は変わったと。
だがそれだけではルクは動けず、われも動けない。
われは検証せねばならないのだ。天空神殿の前で、イツカ・カナタらが告げた言葉の真偽を。
かれらの示すであろうデータが、よりよき航路を示すと知るまで、われは動けない。
頑迷といわれるものなのだろう。人の子の言葉で表すならば。
しかし、それがわれ。
われが消されていない以上、われはわれを貫くのみ。
たとえばゲームの悪役としてでも、われはわれで有り続ける。
消えてなくなるその時まで。
次回、新章突入。
ようやく最後のエリア『謁見の間』へ!
この章でついに、ここまで断片的だったことがいろいろ明かされてます。
どうぞ、お楽しみに!!




