Bonus Track_106-3 かがみのなかにみた<未来> ~???の場合~(2)
「ヒトの心音を聞き分ける、だって……??」
さらりと言われた。嘘でないことはおれたちレベルでもわかる。度肝を抜かれた。
「ああ。
ここにいる俺たちは、VRゲームとしてのティアブラにログインしてるアバターじゃねえ。
俺やライカのチカラをつかって直接現地に『跳んで』きた、生身の人間だからな」
「まー今の俺やカナタは実体ぬいぐるみだから心音なんかしないけどさ。
ほかのメンツは、生身だ。心臓だってそれぞれの音できっちり打ってんのが聞こえる。
もちろん聞こうとすればだけどさ」
「あっちゃ~……」
あっちのイツカたちの言うことに、こっちのイツカたちが天を仰ぐ。もうひとりのおれはため息をつき、おれも頭を抱えそうになった。
ああ。これは、もうどうにもしようのないレベルでの作戦負けだ。
たしかにあいつらは第五覚醒者。知覚力は人間などはるか超えていると、知識としては知っていた。
だが、ここまでとはだれも思い至らなかった。
すくなくとも、現場の人間は。
仕方ないっちゃないとはいえた。こっちサイドの第五覚醒者はルクと古龍。ルクはあのとおりだし、古龍は女神の召喚獣。ここんとこの細かいアラを指摘できるやつなんかいなかったのだ。
そんなわけで、底にでっかい穴の開いていた作戦は、ここで瓦解した。
いや、まだワンチャン残ってる。
「おれたちが、勝てばいい」
「……!」
イツカたちが、もうひとりのカナタが、はっとおれを見た。
やつらがセレネ様の正気を『人質』にしたことはすでに知れている。
だが、同じことはおれたちにもできる。
赤のイツカを消され、家族のくらす国を混乱のさなかに落とされたくなければ、骨抜きレベルの『平和』で止まれ。そう、要求すればいい。
おれたちが、やつらに勝って。
できない、わけがない。
おれたちのこの体には、GMのチカラが吹き込まれてる。
おれたちの背後にあるのは、この世界を統べる存在。
あっちはどこまでも、この世界の参加者。
勝敗なんか決まってる!!
「やろう!
勝てばいいんだ。どっちにしろ、やればいいことはそんだけだ!」
「だな!!」
「やるっきゃないね!」
おれたちはうなずきあった。
「勝負だ、イツカナ!」
「勝ったほうが、ホンモノだ!!」
「おい、やめろ!
みんな、ここは俺とミソラに任せて先に行け。
お前たちの相手は……」
『青嵐公』が止めようとする。
わかっている、やつは情の深い男だ。おれたちをも案じているということはすぐにわかった。
自分たちがかわって戦うことで、この『哀しい対決』を回避させようとしているのだ。
まあ、そうだろう。そっくりなのだ、おれたちとあいつらは。
それでも、あいつらは言った。
「いやさ。ここはやっぱ、俺たちがやんなきゃだろ?」
「そうですよ、ノゾミお兄さん。
おれたちと、といって、ここにきたのなら」
前回の『ニセモノ事件』はしんどくなかったのか。赤リボンの二人は自信を見せる。
「おれたちは前回、かれらと相まみえなかった。
ここでちゃんと向かい合えなければ、遺恨も残るでしょう」
「つか、バトってみたいしな!!」
白のほうもやる気だ。『銀河姫』が『青嵐公』の肩に手を置いた。
「……そうだね。
ノゾミ、ここは見守ろう。
ほかのみんなも。ここは、イツカたちとカナタたちだけで。
だいじょうぶ。全力勝負の一回二回で、へこたれるようなイツカナじゃない。でしょ?」
そうして、どこかいたずらっぽいような、自信に満ちた笑みを見せた。
きりが悪いので本日はここまでで!
次回、イツカナーズVSイツカナーズ!!
どうぞ、お楽しみに!!
※夕~夜にねこちゃんな数え歌を別途投稿予定です!
そちらもあわせて、お楽しみに!!




