106-1 フリーダム! 厄災の龍と清めの香り! 〜白のカナタの場合〜
ちょっと体調を崩してしまいました。不覚!
おかしいところを見つけましたら後ほど修正します……m(_ _;)m
人を憎み、天を荒らし、作物を枯らす。
まっこうから『おれたち』にぶつけるためのチョイスだということは一目でわかった。
毒々しい、金属的な虹色を浮かべた黒の三頭龍。
かったるそうに右一つの首だけをあげる仕草とうらはらに、金色の眼光は鋭く突き刺さる。
『ハァ……面倒……
もうじゃんけんとかで決めねえ?』
「おっし」
おっしゃ~とノリノリに乗りかけた黒にゃんこ野郎をうさみみロールに。おれが笑顔で問いかける。
「それも面倒なんで、もうやっちゃったことにしません?」
『いいのか? そんじゃあ俺の勝ちってことで』
「えー、俺の勝ちってことにしよーぜ!!」
「やっぱりやらざるを得ないみたいですね」
『ハァァァ……』
ふかーくふかーくため息をつくズメイは、どっこらしょと残り2つの首を上げた。
『ムダだ、イツカナ。
お前らのちっこいハネで俺の嵐は越えられねえ。草を生やそうが森を生やそうが全て、毒を食らって枯れ果てる。
わかったら無駄な抵抗はやめて投降してくれ』
すると、イツカが熱血する。
「無駄なんかじゃねえ。
ルカとルナのくれた翼は無敵だ。カナタは毒程度で参るやつじゃねえ。
むしろこいつの毒舌ときたら」「いらないことは言わないでいいからねイツカ?」
しかし、ついでにいらないことを口走り始めたのでうさみみロールでシメておく。
ギブギブとうさみみをたたくのを確認し、ぺいっと放免。
『うおおイツカナブレなすぎ……』
「すみません、それじゃ始めましょう」
なぜかいたくビビってるズメイに笑顔を向けて、おれは戦いの始まりを宣言した。
『じゃあもうめんどくせえんで。
発動、マルチディザスター』
キャラのブレないズメイがボソッと唱えると、彼を中心に暴風雨がうずまき始めた。
どっしりと立つ足の下からは毒々しい色合いが広がる。なるほど、嵐と毒の沼による複合攻撃というわけだ。
彼が台風の目になっているということは、イツカが上から『0G』で攻撃すればクリーンヒットを狙える。
問題は、台風の中及び周辺が毒の大地となっていること。伝説の古龍の毒なのだ、なめてかかれば大変なことになる。
第五覚醒者としての超越力でスルーするのも不可。なぜなら、ズメイも第五覚醒者だからだ。
ここは、正面からやるっきゃない。
大丈夫。おれは『プロミスオブフィル』で前進、毒の沼に足を踏み入れた。
清冽なるフィルのチカラが、触れた大地を浄化する。
でも、これだけではだめだ。
一歩を踏み出せば、足の離れた大地はすぐに毒に侵される。だからおれは。
「『卯王の(ラビット・)幻想園』!!」
この毒を愛し、この毒で育つ植物を作り出し、毒の大地に植え込んだ。
みるみる育つ植物たち。咲き乱れた花花は、ふくいくとした香りを放つ。
もちろん、その香りにはもう毒などない。むしろ毒を浄化する働きを持っている。
嵐に巻かれたらかわいそうなことになるので、植物たちを生やすのはズメイから離れた周辺だけ。それでも、浄化の香りは嵐の中心へとぐんぐん引き込まれていく。
『ちょっげっうわ? なんで集まってくんのこのにおい?! いやいい匂いだけど厄災の龍的にはやばいんですケド?!』
『そりゃ、そうですよ。
台風ってのは超強くなった低気圧です。風も何もかも、その中心に集まっていくんですから』
『なあああ!! どーしろってんだー!!』
『技、解除されてはどうですか?』
『あっそっかそうだった!』
『マルチディザスター』を解除し、多頭龍は首をどかっと地面におろしてため息。なんだろう憎めないこのひと。
『はあああ……たすかったわー……』
「えーと……だいじょぶか? ちょっと休むか……?」
そのぐったりぶりにイツカもちょっと気の毒になったのだろう、そんな声をかけてやってる。
『あー……おう……いや。
とりあえずやるだけやらなきゃカッコつかんだろ。
ちょっと変身するわ、えい』
どこまでも脱力した掛け声とともに、ズメイは黒衣の美丈夫に姿を変え、黄金の剣を抜いた。
『こっちのほうがお前たち相手にゃよさげだわ。
んじゃ〜第2ラウンドってかんじで』
力の抜けた立ち姿、人差し指でちょいちょいと招いてくる。
ぴん、とイツカの耳が反応した。
こいつは、強い。
おれはすかさず距離を取りつつ、ふとももの双銃を抜く。
ミックスポーション弾をイツカの背中に撃ち込んだときにはもう、2つの剣は交わっていた。
次回、フリーダムどもを横目で見つつのクエレブレvsイズニノ戦!
どうぞ、お楽しみに!




