105-8 熾烈な抵抗! 突破せよ、次元回廊!!(3)~ソラの場合~
生きてきた時間、見てきたもの。すべて、離れてしまった。
ルクがいら立つ気持ちはわからないでもない。
さきにルクが召喚した古龍たちを、俺は倒すことができない――せいぜい、ミツルの支援を受ければしばらくタンクを務められるという程度。
けれど、ルクは倒すことができる。セレナの支援があれば、全滅すらさせられるだろう。
俺たちの実力差は、天と地ほどに開いてしまった。
かつては、肩を並べた仲だったのに。
国と国の境も超えて。ともに、平和の天地を目指した仲間だったのに。
* * * * *
前回の人生の、おしまいのときのこと。
俺には、選択肢があった。
危地に陥ったミツルにこういわれたのだ。
『俺をたすけることはもう無理だ。
この手を放すんだ。そして月萌に、ルクのところに行け』と。
ミツルを見捨てれば、俺は生きられたかもしれなかったのだ。
そうすればたぶん、会いにも行けたのだ。ルクに、そしてセレナに。
おなじものをみて、同じ場所にいて、そして支えてやれたのだ。
それでも俺は、ミツルを選んだ。
一瞬たりとも迷うことなく。
ミツルは俺にとって、欠くべからざる半身だったから。
生まれたときから一緒だった、ふたごのきょうだいを失って、生きられるはずもない。
けっきょく、俺たちはふたりともに命を失ってしまったのだけれど、それでも後悔はなかった。
ミツルといっしょがよかったから。生きていても、死んでいても。
それはルクもおなじなのだろう。
俺にとっては、ミツル。やつにとっては、セレナ。
ルクはひたすらセレナをしあわせにしたいのだ。自らの手で。
たとえ、どれだけの犠牲を払ってでも。
俺たちの航路は離れてしまった。
ルクは自分たち以外の何を犠牲にしてでも、ミッションを進めることにした。
俺たちは、だれも犠牲にしないため、ミッションの改廃のため進む。
その結果たどり着いたのが、この戦いだ。
その根底には一言で言えぬわだかまりが横たわっているけれど。
いまは、やり切る。ただ、それだけだ。
* * * * *
さきにルクが召喚した古龍たちを、俺は倒せない。
せいぜい、しばらくタンクを務められる程度。
だから、このエリアでは先陣を切った。
ボスであるギガンテッド・ドラゴンに、まっすぐに向かっていったのだ。
こんな俺にも一つとりえがある。3S多重憑依。これによって俺は『永久機関コンボ』を常用できる。タンクをつとめるにはおあつらえむきのチカラだ。
ギガンテッド・ドラゴンがたとえ、生き残りの巻き添え上等でブレスをはいてきたとしても、俺なら――ミツルの支援をもらっている俺なら、止められる。
幸い山のようなドラゴンはそんな無体をすることなく、俺たちの到着を待った。
そして、大きく息を吸い込むと、まっすぐ俺に、破壊の息を吐いてきた。
「『ブレス・レジスト』!!」
けれど、そいつは俺に打撃を食らわせはしなかった。
桜のツリーアーマーのカナタがタイミングよく投げ込んでくれた、護符のおかげだ。
「あ、ありがとっ!」
「どういたしまして!」
微笑むうさぎの王子様は、思い出させてくれた。
俺たちにはいま、あのときなかったチカラがあると。
ルクと俺はハンター。セレナとミツルはプリースト。
仲間にクラフターはいたけれど、当時かれらの役目はもっぱら後方支援。
いつも俺たちの装備を見てくれて、ときどき変なボムやポーションをよこしてきたあいつも、拠点警備などでの会敵を除けば、戦いの前線には出てこなかった。
けど、この世界――第三次試行では、クラフターはふつうに出てくる。むしろカナタなんかトップアタッカーだ。
そして、カナタのとなりには、ねこみみはやした究極の切り札がいる。
まえとはちがうのだ。世界も、俺たちも。
だから、きっとやれる。
大いなる女神と対峙することになったとしても、迎えられるのだ。
規格外のやつらとつかむ、規格外のハッピーエンドを。
ギガンテッド・ドラゴンのブレスは強烈だ。『ブレス・レジスト』の護符は、一発で焼けきれた。
それでも、一発無駄うちさせられたことは大きかった。
俺はしっかりとタンクとしての位置をとることができた。
仲間たちがぶじ追いついてきた。俺に、強化が集中する。
シオンからの情報によれば、ここ第二エリアへの増援はもうないようだ。
終わらせる時がきた。
俺は、ドラゴンの背後にあるはずの扉も貫けとばかり、必殺の蹴りをくりだした。
次回はシリアスひとやすみ、掲示板回です。
白熱ラスダンバトルにナチュラルハイの観戦者さんたちの様子をお送りします。
どうぞ、お楽しみに!!




