105-6 熾烈な抵抗! 突破せよ、次元回廊!!(1)
もちろん最初っから力ずくでドカドカ踏み込むのは悪手であるとわかっている。
昨日二度にわたっておれたちは、『マザー・セレネ』を通じGMあてに謁見を申し込んでいる。
二度ともなしのつぶてだった。
そしていま。『天空神殿』まえ――ルクが教えたゲート出現地――で奏上した申し込みにも、一切の反応がなかった。
いや、あった。
エアリーさんたち、ミッドガルド四女神が職務としてひらいた、GMの居城へのゲート。
それが、目の前で閉ざされたのだ。
どっしりとした扉がどんと出現。その表面にでっかいダイヤルが3つ。典型的な、パスワードロックの具象化。
どうみても、妨害だ。
「ふんふーん。まあ、予測通りってね~。
ハッカーチームのみなの衆~、よろしゅうに~♪」
アスカが上機嫌で携帯用端末をむけてちゃかちゃか解析、そのデータを世界各地のハッカーチームに一括送信。
たちまちカシャカシャとダイヤルが回り始め、チーン。
ちょっと古風な効果音とともに、かぱっと扉がフルオープン。
開いた向こうには、えんえんと続く回廊が見えるけど。
「まった。シオっちー、フルムンチェックお願い!」
「はーい!
ずばり、この通路はフェイクだよ!
本物の通路はね……今開いた扉を閉じてみて!」
さっそく、シオンの『フルムーン・ファインダー』が威力を発揮だ。
ハヤトがさっと進み出て、重い扉をぐっと閉じると……
はたして、戸板で隠されていたところに、さっき見たのとそっくりな回廊が伸びていた。
アスカがちょっぴりビミョーな表情でうなる。
「う〜ん。このへんつくづくタカシロの血を感じるわ〜。
ま、役に立てればいいってね!
いこうみんな。あ、エアリーさんたち、この出入口、消しといてね。
余分な奴らが出てくるとタイヘンだからさ!」
「それはできるけれど、みんな、帰りは大丈夫?
戦うのはわたしたち、苦手じゃないからいいのよ?」
エアリーさんたちが、優しく心配してくれるけれど。
「大丈夫ですよ。
おれたちは成功して帰ってくるんです。
そのときには、お見送り付きで送迎していただけるはずですから」
そう、おれたちが帰るのは、この先の戦いと交渉に成功して、だ。
そのときにはもう、妨害するものはいないのだから。
そう伝えると、四人の女神さまたちは、明るい笑顔を取り戻してくれた。
「そうね、……わかった。
気をつけていってらっしゃいね!
あ、インベントリにおやついれといたわ。お腹すいたら食べてね!」
「はーい!」
そうして、手を振って送り出してくれた。
ひつじ牧場特製、ほかほかホットケーキ。シークレットガーデンでみのったみずみずしいフルーツ。
シャスタの霊水アイスキャンディー、ノルン名物のおまんじゅう。
おれたちだけでは食べ切れないほどの大きな優しさを懐に――もといインベントリに追加して、おれたちは困難のまつ回廊へと足を踏み入れた。
最初のエリアで待っていたのは、種々さまざまの罠だった。
落とし穴に吊り天井からはじまって、槍衾の壁やら目からビームを放つ石像やら、毒の沼やらバリアの床やら。
絶対確実に開けたらやばい宝箱まで設置してある。いや、誰が開けるのこの状況で。
アスカがいっそ安らかなお顔で言う。
「あー。たのしんでるわー。これ絶対たのしんでるわー。
どーする? もーまとめてテラでぶっ飛ばしてもいーけど」
「そうだね! 次の扉までまとめてどーんとやっちゃおう!」
シオンもなんだか弾む声でGOだしている。
「まってそれ危なくない?」
「そこは俺のフリフォで通過とかじゃなく?!」
常識人サイドのソラとニノが慌てるけれど、シオンはむしろ生き生きと。
「だいじょうぶ! ここふつうのダンジョンじゃないから崩落とかしないし。
っていうかここ、ルクたちの妨害工作で形成されてるフィールドだから! むしろぶっとばおっけーだから!」
「表現斬新っ!!」
「そして一ミリの逡巡もねえ!!」
ちなみに一番の常識人ハヤトはもはや諦めた顔。イズミはさっくり割り切っている。ソーヤはもちろん反対する気配もない。
「それじゃあミライ、ミツル、カナタたち。ちょうどいいから守りをかけ直しておこう。ニノは『絶対爆破防御』お願い」
「ミズキさんも平然と話を進めておられる!! ってはいりょーかいです!!」
「俺も水の鳥出しておくね!」
ニノがてきぱきと護符を発動。
ソラが水の巨鳥をまとうと、ミツルがさっとその肩に飛び乗る。
イツカたちはさっさと自己強化、おっしゃーとチャージ開始。
こいつまで砲撃に加わったら、次の扉どころかその次までぶっ飛ぶ気もするけれどまあ、いいか。
そこにいるのは、ルクの召喚したモンスターなのだ。グランマはいない。遠慮の必要はないと、おれにはわかっている。
第2エリアには、超強化版一般モンスター。つまり、見た目だけふつうのボスの群れ。第3エリアには、かつて俺たちの前に召喚された大いなる守護龍たち。第4エリアにサプライズ枠と続いて、やっとその次が謁見の間というわけだ。
謁見の間には一度行っている。イツカのちからで一気に飛ぶこともできなくはないが、それよりはこの罠にがっつりとっこんで、ルクの力をそいでおくほうがいい。そういう作戦になっているのだ。
「それじゃ〜、せーのー、『レッツ・パーリィ』〜!!」
「『パステル・パレット』びーむ!!」
「『0−Gエクストラーダ』――!!」
そして奴らがぶっぱなすと、罠も扉もまとめて吹っ飛ぶ。
もうもうと上がった煙の向こうには、幾多の瞳がこちらを睨んでいた。
罠なら罠ごとぶっ飛ばすのです!
次回、モンスターたちとのバトル開幕です。
どうぞ、お楽しみに!!




