105-4 月の照る夜の、甘いお茶会~ライムの場合~
糖分オンリー回です!(`・ω・´)
この夜は、最後のチャンスだと聞かされています。
すなわち、反対派の方々が、カナタさんたちを非公式な武力でとどめるための。
だから、この夜はもっとも守りのかたい場所、すなわち、アルム島で休むこととなりました。
ほんとうなら、天空神殿よりもどってすぐに、領主館から出ずにやすむべきだったのでしょう。
それでもみなさんは、カナタさんたちがきゅうくつでないように、それをもとめることはありませんでした。
そのお気持ちに、わたしもほんのすこしだけ、甘えさせていただくことにしました。
館のお庭の一角で、一杯だけ、お茶をたしなむことにしたのです。
大きなまるい月が昇ってすぐ。
カナタさんはわたしを迎えに来てくれました。
もちろん、準備は整っています。
インベントリにいれたお茶入りポット、ティーセットを確認して、わたしはカナタさんがさしだす手を取ったのです。
わたしとおそろいの指輪を薬指に輝かせた、やさしい左手を。
お庭の一角にそっと立つ、小さな木製のテーブルでふたり、お茶をいただきました。
この島のハーブでつくった茶葉と、この島の水で淹れた、アルム島ならではの特別な一杯を。
「うれしいですわ。
わたし、ずっとこうしたかったのです。
カナタさんと、アルム島に来て。
満天の星を見ながら、ここならではのお茶をいただいて」
「おれも。
ずーっとこうしてみたかった。ライムとふたりで」
すこし苦めのハーブティーに、そっとおとしたはちみつよりも、カナタさんのほほえみは甘くって。
「でも、これからはいつでもこうできるよ。
あした、かならず成功させる。
そうしてぜったいに、ライムのもとにかえってくるからね」
けれどこの手を取って言い切ってくれることばは、このゆたかな大地のように確かなもので。
「そうですわね。
これからは、いつでもふたりで……
カナタさん。あした、わたしずっとお祈りしますわ。
そのリボンを通じて、わたしのちからがあなたをまもってくれますように。
もしも助けが必要になりましたら、いつでもお呼びくださいませね。
この翼ではばたいてゆきますわ、時空を超えて」
その確かさにそっと寄り添いたくて、わたしは誓いを語るのです。
「うん。たよりにしてる。
ライムはいつも、かげからおれを、おれたちをまもってくれていたものね。
初めて出会った時からずっと」
いまのカナタさんは、わたしよりずっと強い。
それでも返してくれる信頼が、この胸を熱くします。
あした。わたしのもてるすべてのチカラで、きっとあなたを、イツカさんをミライさんを、ともにゆくみんなをまもります。
わたしはもういちど、こころの誓いを新たにするのでした。
最愛のひととの、あまいあまいひととき。
このままいつまでもこうしていたいけれど、あすはたいせつな日です。
やくそくどおり、用意した一杯ずつのお茶を飲み切ると、わたくしたちはそれぞれの部屋に戻りました。
道すがら見上げれば、大きな満月のなかを、ふたつの影がよりそって飛んでいます――もうひとりのカナタさんと、ルカさんです。
月あかりに照らされたこずえでは、白リボンのイツカさんとルナさんが語らう姿もちらり。
そして、赤リボンを首に結んだイツカさんは、礼拝堂からひとり出て、館に戻っていきました。
とても、とても、神聖な静けさをまとった姿で。
次回! ついに新生アタックチーム、出動です!
どうぞ、お楽しみに!!




