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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_98 終結・魔王戦!~あの月を目指す、その前に~

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104-4 燃えろライアン! 獅吼鯨波の最終戦!! ~ライアンの場合~

鯨波はたくさんの人が叫ぶさまを現す実在の言葉ですが、獅吼鯨波は造語です。そのはず。

もし違いましたら優しく教えてやってください((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル


2023.06.24

一部表現を修正いたしました。

吠えた→吼えた

『双璧』なんぞと言ってもらってはいるが……

 ぶっちゃけ言うなら、俺よりパレーナの方が強い。

 冷静で頭も切れる上、俺は炎、奴は水。


 だが。

『だからこそ、俺はお前の試練となれる』

 そう言って、自らの願いに反する役目を受け入れてくれた大きな男に、だからこそいま俺は、勝たねばならない。


 勝たねばならない、のだが。


「どうした! お前の本気はそこまでか!!」


 ぶっちゃけいうなら俺は、苦戦していた。

 やはり悪いのだ、相性が。

 寄せては返す、大海の波を相手にしているかのよう。

 打ち込んでは躱され、叩きつけては防がれる。

 腕に脚に宿した炎も、水が相手では方なしだ。


 そして、カウンターで飛んでくる攻撃はどれも的確。

 じりじりと押し込まれていくのは、青く染まりゆくフィールドを見るまでもなく分かった。

 パワーと頑健さでは、俺に利がある。ひとつひとつの攻撃を冷静に見定め対処するなら、けして勝てない相手ではなかった、そのはずなのに。


 パレーナが大きく咆えた。四周のフィールドが荒海となり襲いかかってくる。

 あっという間に波に巻かれ、青の底へと叩き込まれた。


 まったく、相性が悪すぎだ。


 やつは自然の力を味方につけ戦う。

 対して俺の炎は、ただ俺に宿るソウルのチカラで生み出したもの。大自然の力を相手に、叶うべくもないのだ。


 だが、それでも。


 諦められない。あきらめたくない。

 イツカたちとともに再び、地平まで続く平原を駆け抜けたい。

 やつらとならばなにも怖くない、そう思えた小さくて大きな友たちと!!


 心が叫んだその時、俺を取り巻く水が震えた。

 聴こえてきたのはパレーナの声だ。


『そうだ、ライアン。

 海は深い。俺は強い。

 だが、それが何だ。

 燃やせ、ライアン。

 その、魂の炎を。

 この会場を埋める者たちはなぜ集まった。お前が声を上げたからだ。

 イツカとカナタを消し去った大いなるものの意志に、ソリス全体として抗うことを決めさせたのは、お前が最初に示した決意だ。

 お前の炎は、俺たちを勇気づける。お前の勇気は、俺たちを引き付ける!

 それ故にお前は、我ら六獣騎士の筆頭なのだ!!』


 熱い熱い、熱い叫びが俺に火をつける。

 深く水底に沈んでいるにも関わらず。


『燃えろ、ライアン!

 水にも消えぬ炎となれ!!

 お前を阻むものを焼き尽くせ!!』


 そうだ。燃えればいい。

 なぜって俺は、一人ではない。


 聴こえてくる。俺を鼓舞する声たちが。

 俺に燃えろと、熱い風を吹き込んでくれる。

 愛する妻と娘の。ともに歩む仲間たちの。会場を埋める人々の。

 オンラインにあふれる声援さえもが。

 響いてくる。流れてくる。俺の身に心に直接。


 そうだ。俺の炎は、こころの炎。

 燃える燃える意志の力が、自然のことわりを超えて生み出した炎なのだ。

 これだけのたくさんの意志が、情熱が、熱情が、願いが。

 一身にくべられて、燃やせないわけがない。

 そう、たとえ――


『たとえそれが、深い深い、海だって!!!』


 俺とパレーナの声が重なったその時、炎は爆発となった。

 瞬時にクリアになる視界。足元のフィールドは一面、朝日のいろに染まる燎原と化していた。


 イツカ、見えているか。

 お前と駆けるフィールドだ。

 戻ってこい。

 お前の望んだセカイは、ここにある!!


 突き上げる昂りのままに、俺はそらに向かって吼えた。




 一つまばたきをすると、世界は変わっていた。

 我が妻コニーと娘ベル。未来の息子(仮)ルゥ。パレーナ。そしてソレア様が俺の顔をのぞき込んでいる。

 いったいこれはどうしたことだ。

 バックが青空。頭の下が柔らかい。ということは、俺はコニーに膝枕をしてもらっているようだが……。


「あなた!」「父さん!」「だいじょうぶ、どこもいたくない?」「TPBPなくなって仰向けに倒れたんですよ!」「ポイント補給と手当はしたんだれけど……」


 説明と大丈夫を口々にまくしたてる妻と娘。かわいくていとしくて、腕を伸ばしてそっと抱きしめる。


「ありがとう、ふたりとも。

 大丈夫、どこもいたくない。いま起きるよ。

 ごめんなコニー。俺の頭、重かっただろう」


 コニーはきゃしゃでか弱いうさぎトーテム。それなのに俺にひざまくらをしてくれるなんて。けなげな優しさに胸が熱くなる。

 コニーは可憐に笑ってこういう。


「わたしならだいじょうぶよ。

 でもパレーナさんが重いでしょうから、大丈夫なら起きてあげて?」

「なにっ」


 慌てて飛び起き振り返れば、はたして俺に膝を提供していたのはパレーナだった。

 何やら気恥ずかしくてキョドッてしまう。

 いや、冷静に考えればそうなんだ。俺はでかくてコニーは小さい。サイズ的にちょうどいいのは、この中ではパレーナであって。

 かくいうパレーナも気恥ずかしいようで「別に、重くはなかったが(ゴニョゴニョ」と目をそらして言っている。

 なぞの笑いと喝采が押し寄せて、どうしようどうしようとなってしまった俺たちを救ったのは、ソレアさまだった。


「えー。いまの試合について裁定を下すよ。

 はじめにフィールドを全染めしたのはライアンだ。その点からいえば、ライアンが勝者。

 しかしその直後、TPBP切れでライアンがダウン。これにより、フィールドはパレーナの色に全染めとなった。

 この場合、どちらを勝者とするべきか。ボクは思う……

 もう、どっちも勝ちでいいじゃん!

 つかパレーナ。全力でライアン応援してたよね?

 全染めの瞬間一番に歓声上げてたし。

 ボクがどんな裁定を下したとしても、もう起きることは一つしかない。

 よって、ライアン。願いたまえ。

 誰より熱く戦った、ボクの祈願者(インヴォーカー)として」


 何やら、目の中がじわりと燃えてきた。

 あふれるものを隠すように俺は、わが女神の前に膝をつき、願いを告げた。


「わが女神ソレアよ。今ここにお願い申し上げる。

 二人ずつのイツカとカナタ。その復活を。

 彼らの歩みをわれら皆でたどり続けることを、平和への歩みを止めぬことを、このソリスの国是とさせていただきたいと」

「うむ。聞き届けた!」


 ぱんと、わが肩に手が置かれた。


「いまこのときから、イツカとカナタたちの目指した世界が、ボクたちソリスのめざす世界だ。

 誰もが望まぬ不幸に落ちることのない、優しくて平和な世界が。

 この中つ国ミッドガルドを、みんなが幸せになれる場所にしよう!

 そのためにも、イツカたちとカナタたちを復活させる。

 ボクひとりのチカラでぱぱっとやっちゃうことは、残念ながらできないけれど、絶対絶対にやり遂げよう。

 だいじょうぶ、きっといける。

 だってここには、三人の『マザー』全員がそろってるんだからね!」


 いつの間にやら、ステラ様とセレネ様もそこにおわした。

 お二人ともまぶしい笑顔。

 憔悴しきっておられたセレネ様も、どうやら元気を取り戻されたようだ。


 よかったと思いつつ、ありがとうございますと今一度頭を下げれば、歓喜の声が大海の波のように打ち寄せた。

次回は閉会式です!

もちろん、ゲストは……

イツカナ復活、いよいよ迫ってまいりました。

どうぞ、お楽しみに!!

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