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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_98 終結・魔王戦!~あの月を目指す、その前に~

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104-3 セレネ、立つ~セレネの場合~

 わたしはこんなに弱かったのかと驚いたのは、なにも今回が初めてではない。


 イツカたちが大神意を受け高天原から追われたときは少なからず落ち込んだ。

 第四陣での『敗北』は、一部強硬派の策が成ってしまったようにもみえて、血の気が引いた。

 そして今回。

 イツカたちの肉体が、この世界から消されてわたしは。



 もちろん信じている。わたしの愛する男は、不可能を可能にする男だ。

 けれど、一体全体、GM(グランドマザー)の意に反してどうやって、上位世界(アースガルド)からここへもどるのか――我が演算能力では、導き出すことができなくて。


 もちろんしごとはきちんとこなしていた。しかし、他の目からはわたしは、おかしく見えていたようで。


『ねえ、セレネ。ソリス杯、一緒に見よう?

 ソレアたちの渾身のイベントよ。きっと、元気になれるはず』


 ステラからはこんな風に誘われてしまった。


 優しすぎるくらいに優しい、友にして姉妹たる存在の隣。

『イツカたちの夢を継ぐことをソリスの国是とし、そのためにかれらの復活を』という願いにより開催されし女神杯をわたしは、観覧することとなったのだった。



 第一カード、ゲスト戦。ハルオミとハルキが挑んだのは、ステファンとルー。

 あきらかに格上の相手だった。

 それでも、エルメスが祈りを込めて見つめる中、二人ともに新たな覚醒にいたり、力を合わせた一撃をルーに放った。

 ステファンの守りがきいていたこともあり、完全にK.O.するには至らなかったものの、感激した二人からそのまま勝ちを譲られた。

 意義を唱える者は出ることなく、オンライン・オフラインともが拍手であふれた。

 もちろんわたしも、惜しみなく拍手を送った。


 月萌からのアーティストらによるミニライブ。『しろくろレモン』に『おこんがー!』という、ミニをつけるのがおこがましいほどの豪華布陣は、しかし完全ノーギャラ。

 しかも『あたしたちは、イツカとカナタたちの復活を願って歌い、踊ります!』『もしもいいなと思ってくださったなら、そのお気持ちはすべて、わたしたちのかわいい妹にして、頼もしい仲間たちの手に託してあげてください。よろしくお願いします』と、投げ銭をすべて『ホシフリ☆ソングちゃんねる』名義のファンドに誘導。

 その凛々しいふるまいに、曲が流れる前から世界が沸き立った。

 宣伝広報のルリアと『リアちゃん』、さらにはセラフィーネまでが最前列で自らオタ芸を打ち、レモンによってステージに上げられてしまうと、盛り上がりはさらに加熱した。

 わたしたちもいこっか? とステラに言われて一瞬ぐらついたが、これはさすがに遠慮した。


 ルリアとバルトに対し、リンとミルルが挑む第三試合。

 女王とその執事からなる空の最強タッグに、それでも少女たちは果敢に挑む。

 激しい空中戦のさなか、トラウマとなっているはずの暴風を乗り越えたリンに、生まれ持った翼がよみがえったときには、私の涙腺も熱くなった。

 二人はそして、大きく腕を広げて待つルリアの胸に、イツカとカナタ直伝の技で飛び込み、勝利と継承者候補の座を手に入れた。


 クロートーとベル、黒と白のうさぎ少女たちが腕を競う料理対決。

 熟練の手際に感動していたらベルにポイズンクッキングが発動、しかし判定者ルゥはむしろ『その毒味でうまさが引き立つ』と蕩ける、予想だにしない展開。

 最後には勝ちを決めたはずのベルが、盛大に墓穴を掘って逃げ出すという、もはやラブコメのようなシメ。

 真剣なベルには申し訳ないが、わたしも吹きだしてしまった。


 異色の対決に続いたのは予想だにしていなかったサプライズ・エキシビション・バトル。

 なんとタクマ・エルマーの二人が、バディ名『グランドラゴンズ』を冠した『合体ロボ』に変身。

 身分を隠した(すぐに忘れた)巨大化ソレアと、熱い格闘戦を繰り広げた。

 大いに沸いた戦いは、エルマーにかばわれ、あとを託されたタクマが、熱い言葉とともに放った第三覚醒で決着。

 すなわち、素直にもらって吹っ飛んだソレアが、タクマとエルマーの健闘をほめたたえ、その勝ちを宣言したのだ。

 その後とってつけたように『あっと、ボクはただの通りすがりのゲストだから! この後もみんな、楽しんでねー!』と言って立ち去ると、熱狂と笑いがごちゃ混ぜになった。


 間髪入れずに始まった、ステラのアーティストたちによるパフォーマンス。

 試合の盛り上がりにそのまま乗っかる胆力とセンス、歌舞音曲そのもののレベルの高さ。そしてこちらも『ホシフリファンド』に投げ銭をすべて誘導する思い切りのよさに拍手を送りつつ……


 わたしは、考えにふけっていた。


 あえて試練を与える者たち、それに挑戦する者たち。

 祈りを込めて、歌い踊る者たち。

 皆、動いている。全力で。イツカとカナタの復活のために。

 わたしは、なにができている?


 たしかに、ここにこうして姿を現し、この祭りを楽しむものの列に加わることで、ソリス杯の提唱者らに賛同を示している――それは確かなことだ。


 しかし、もっと、もっと、できることがあるのではないか?


『マザー』として国を見守る以上、心ぶれてはならぬと、セレネの名を神族三家以外には明かさず。

 人に親しみつつも、超越者たる立場を守り、近づきすぎず。

 そうやって何百年も守ってきた自らへの戒めを、わたしは解いてしまった。

『ティアブラ』を通じてイツカに触れたときに。

 朝日のように輝く、ルビーの瞳にまっすぐ笑いかけられたときに。

 恋に落ちてしまったのだ。あの一瞬で、どうしようもなく。


 そう、わたしは、イツカを愛している。

 なのになぜ、動き出さない?

 ショックなんぞ受けている場合ではない。

 平気を繕い仕事をしている場合ではない。

 取り戻さなきゃならないのだ。

 女神として、恋する女として、このわたしができることは……


 そうだと思いついたのは、最終試合の始まる直前。

 そのアイデアをステラに告げると、彼女は破顔してうなずいてくれた。

 次々と入る、星霊たちからのメッセージ――申し子たちが突撃してきてくれたので、イツカとカナタの復活に力を貸せることになりました、というもの――に、感謝のレスを送りながら。


 イツカナ・リズムセッションに導かれて始まった闘いは、互角に推移している。

 一体どちらに転ぶのか、試合開始から5分たった今も全く読めない。

 それでも、ライアンもパレーナも、イツカたちの志に共感した仲間。

 だから、大丈夫だ、きっと。

 信じてわたしは、激闘を見守り続けた。


次回! 獅子の咆哮が天地を揺らす!

海と陸の覇者の激突、ついに終結!

紅の女神の下す、裁定は……?

どうぞ、お楽しみに!!

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