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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_98 終結・魔王戦!~あの月を目指す、その前に~

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<Stage_104 星の狼のおくりもの、大成功のソリス杯!> 104-1 チャネルクエスト――鏡の湖をこえて~シグルドの場合~

2023.02.01 章タイトルをサブタイに入れさせていただきました!

 チャネル・クエストは勿論、幾度も行っていた。

 シルウィスの血に受け継がれし天狼のチカラを目覚めさせ、強めるために。

 心根清らかならずとも、それを糊塗するすべを学ぶのがわれら貴族。幼きころから自らを制することの得意だったわたしは、周囲の子供らより速いペースで魂の小径を駆け上がっていった。


 しかし、いま、思う。

 大いなる女神により、戦いの定めを受け。

 われらがマザー・ステラにより、そのよすがと定められし以上、それは果たさねばならない『役目』であったが。

 真に清らかでない心の持ち主らを、それでも認め、力を与えねばならなかった、清冽なる天狼の心境は、いかに。


 なぜ、このようなことをいまさら思うのか。未踏の階梯、鏡の湖に身を投じたわたしの前には、それを顧みさせるモノが立ち現れているからだ。


 わたしは城の中にいた。

 妖美にして絢爛。建物も置物も、溢れんばかりの饗宴も、さりげなく流れる音曲も。

 仮面とそろいの装束を帯びて、飲み食い踊り、睦言をかわす人々も。

 かれらはわたしに気づくと、つぎつぎ声をかけてきた。


 さあ、踊りましょう。さあ、飲みましょう。

 心浮き立つ舞踏、身体蕩かす美酒。

 華やかな装束をまとい、贅を凝らした杯を手にして。


 あなたさまのもとめるものはここにあります。

 美しき居城。華やかな装束。舌悦ばす饗宴、耳誘う音曲。

 麗しき姫も、佳き男も、あなたさまの望むままにと、甘やかにささやきを投げてくる。

 そのほの暗い笑みには見覚えがあった。正体に気づいてぞくりとした。


 これはわたしだ。


 かつて、政敵を陥れたときの。

 カナタさんたちを陥れようとしたときの。

 なるほど、鏡の湖、というわけだ。

 わたしは如才なく笑みを繕い、張り巡らされた罠をすりぬけながら、この城の出口を探した。

 ひたすら、天狼に会うために。カナタさんたちの、復活のために。



 広い広い迷宮のような城内。安全な道をかぎ分けながら、どれほど歩いたころだろう。ようやく、門を出ようというとき、看過しえぬものを見た。

 逃げ惑う水色のこうさぎと、黒い子猫。

 そしてそれを面白半分追いかけまわすやつら。


 フィルの加護を祈り、雪狼を呼び出した。

 その背にまたがり、あわれなもふもふたちをひょいとすくいあげると、そのまま城を飛び出した。

 背後からどろぼうなぞとわめく声が聞こえてくるが、ほっとしたように寄り添ってくる二匹にはリボンのひとつも付いておらず、なついているとしたらむしろわたしのほうにだ。結論、問題なし。

 ちいさな、あたたかい道連れたちを大切に懐に入れ、雪狼にのったわたしは一路北へ。

 天に青白く輝く、フィルの星のもとを目指した。



 ときに雪の魔物と出会っては振り切り、たどりついたさきは断崖だった。

 見渡すかぎり、う回路もない。

 ここから跳ぶのだ、と理解した。

 しかし、霧に包まれた下は見えない。

 もしもがあれば。わたしは懐の二匹を見下ろした。


『ここにぼくたちをおいていってください、ごしゅじんさま』

『このさきのみちゆきはけわしく、ぼくたちはあしでまといとなってしまいます』


 するとかれらは、けなげな瞳とかわいい声で言ってきた。

 そんなことはできない。やわらかな毛並みを優しく撫でて伝えた。


「何を言ってるんですか。一度助けてはいそうですかと、こんなところに置き去りにはできません。

 そうですね。一度戻りましょう」

『えっ?!』

「雪狼とここに残っても、わたしになにかあればおしまいです。

 そのくらいなら一度、あなたたちを安全な場所へ。

 これも縁です。我が館に迎えましょう」


 そんなそんな、ごめいわくはかけられませんと二匹が言うけれど。


「迷惑などではありませんよ。

 なにより、わが心の主ならば必ずそうする。

 それにそむけば、わたしはあの方々に顔向けできませんから」


 そのとき、あたりが光に包まれた。

 天狼の星が輝いたのだ。ひときわまばゆく、太陽のように。

 手をひさしに、そちらを見れば聞こえくる、清冽にして厳かな声。


『よくぞ言った、わが力を受けし者。

 いまお前のこころは、清冽なまことに満ちた。

 視えるだろう、わが姿が。聴こえるだろう、わが声が。

 さあ、来るがよい。今こそまことをもちて、語らわん。

 ……お前たち、わが客人に橋を』

『ははっ!』


 もふもふたちはうやうやしくこうべを垂れると懐から飛び出し、ひゅっとばかりに姿を変えた。

 オーロラのいろに染まった、水晶の橋へと。

 それは緩やかな勾配で、星を――否、空に座す天狼を目指して伸びている。


『案ずるな。かれらはわが現し身。わが領域の何物にも、傷つくことなき者なれば。

 ……もちろんお前の帰りには具して遣わそう。かれらもそれを望んでいる』

「ご厚情、喜んで頂戴します。

 ではお招きにあずかり、御前へ失礼いたします。清冽にして大いなる天狼よ」


 なんと、うれしいことだろう。

 丁重に一礼し、わたしはそっと、世にも美しい橋に足を踏み入れたのだった。

『かがみの孤城』は未読です。

だ、だいじょうぶ絶対似ても似つかないはず((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル


次回、熱く訴えるシグルドと、天狼フィルの裁定!

どうぞ、お楽しみに!!

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