103-9 誠を明かせ! 六獣騎士、双璧の闘い!! ~ライアンの場合~
身分を隠したソレア様と、本気に本気を重ねた地の龍二人の異次元バトルに熱狂したのは、はたして夢かまぼろしか。
ステラのアーティストたちのトリとして、サクヤ殿の奏でる琴の音は、会場の空気を一変させた。
まるでこの『戦いの丘』そのものが、月の照るしずかな海と化してしまったかのように。
技量はたしかに、師であるメイに及ばない。しかし、こもる想いは誰にも負けない。
彼女の愛しい男はいま、命がけの試練に臨んでいるのだ。
あの月にある神秘の園に、魂を飛ばして。
この世界より放逐された友を、取り戻すために。
澄み切った声がいのりを紡ぐ。歌に誘われた精霊たちが降る雪のように集う中、俺たちもともに祈っていた。
彼女のもたらす、最後の一音が静寂に消えるまで。
いずこからか起きた拍手が、地を打ち天に響く万雷と化す。
同じ想いなのだ。すなわち、納得していないのだ。大いなる女神の裁定に。優しく勇ましき、われらが王にして友たる者たちの放逐に。
俺とパレーナはこれからそれを、おのれの肉体で世界に語る。
響き始めるドラムの音。イツカナ・リズムセッションをオマージュし、軽妙にやがて勇壮に、壮大に展開するシンフォニーが、俺たちを闘いの場へといざなった。
愛する妻と娘に「がんばって」と背を押され、厄介な役を負わせてしまった友の前に。
償いは、これからの戦いで。
そう、やつと約束した。
今回は、鳴き合いは挟まない。
ただ、まっすぐに視線を交わし、こぶしの先を合わせた。
わが未来の娘婿となる男は、絶好調にルールを説明する。
『さあ、はじまりますこのソリス杯最後のバトル!!
六獣騎士筆頭の立場にありながら、その座を去って夢を追う男・ライアン!!
彼の本気を誰より知りつつ、あえてその座にとどまり、試練を与える親友・パレーナ!!
二人のバトルの趨勢を示すのは、二人の立ったフィールドだ!!
ライアンの力が増せば、その立つ地面は草原に!
パレーナの力が増せば、その立つ地面は海原になる!
すなわち! 二人のパワー総計の比が、それぞれの立つフィールドを変えていく!
フィールド全面を一色に染めあげたものが、このバトルの勝者となりますっ!!』
要するに、全力で殴って殴り合い、勝てばよい。
といえば簡単なようだが、パレーナは強い。この試合、確実に苦しい戦いとなる。
『だが、それを制してこそ、お前のまことが明らかなものとなる。
ゆえに俺は一切手加減をしない。
我が全力を超えろ、親友よ』
やつが一昨日見せてくれた、実に頼もしい笑みを思い返せば、魂に、身の内に、熱く燃える炎がめぐった。
次回、新章突入!
視点を移し、チャネルクエストに挑むシグルドの様子を描きます。
なお、この新章でイツカナは帰ってきます。どうぞ、お楽しみに!!




