103-8 闘え! 超合金合体変形巨大ロボ・グランドラゴンズ!! ~エルマーの場合~
だいじょうぶ、ロボットとはいってない(強弁)
僕たち地の民は、本来小さくて弱い者たちだ。
だから、技術を磨く。
『地の民』最強といわれる、地神龍のトーテムを持つ僕たちにしたって……
見た目が少し大きくて、土や岩の中を泳げたり、ちょっぴり重力を操るだけで、そんなには強くない。
ライアンやパレーナみたく強い人と、一対一で真正面から戦ったら、僕なんかふつうに負けてしまう。
僕はいちおうスターシードなのに、それでもだ。
でも、そんな僕にも。
このひととなら負けない、て思える、相棒ができた。
タクマだ。
明るくて、型破りで、ちょっとのんきで。
すっごく妹さん想いで、弱い人には優しくて、でもとっても、とっても強い。
だから、僕はお願いした。
『僕も挑戦したいけど、……その。
タクマとバディを組んで、やりたいです!』
ライアンがせきこんだ。
パレーナが僕を見て言う。
『エルマー。ちょっと待て。
そのコンビで一体何と戦うつもりだ?』
『正直に言うが、私とライアンが組んでもそのバディにはかなわないぞ。
異郷の地で留学を始めたころならいざ知らず……』
『そ、そうなの……?』
ふたりとも大真面目にうなずく。
ルリアも、ステファンも、クローリンもうんうんうなずいてる。
『そーそー! 友情はさいきょー! ってね!』
『ふたりはそれぞれでもけして弱くないわ。けれど、おなじ地の龍どうしが友情をもって組むことで、強さがかけあわさるの。
留学と魔王戦で、何度も力を合わせて。イツカとカナタと手合わせを重ねて。そのポテンシャルは飛躍的に伸びたのよ。
誰とならばいいのかしら。リンちゃんとミルルちゃんも、ライアンとベルちゃんも挑戦者だからねえ』
『そうねぇ。大食い対決だったら、パレーナとステファンのコンビでいけないかしら?』
『いやそれは逆にちょっとまて。』
パレーナとステファンはいっぱい食べる。僕もタクマもいっぱい食べる。
だからそれをすると、絶対大変なことになる。
たとえクローリンたちが、お料理のスペシャリストでもだ。
『よーしよーし。だったらここはボクにまかせてよ!
うってつけの人材を知ってるからさっ!
当日をお楽しみにだよ☆彡』
するとソレアさまが、たのもしい笑みで立ち上がった。
そしていま、僕たちはぼーぜんとフィールドに立っていた。
エクストラバトルの開始直前。僕たちの前に立っているのはエントリー名『なぞの仮面の美女』さんだ。
ひきしまったスリムなスタイル、燃えるような赤い髪。
顔にはシンプルな仮面をつけてるけど、僕たちにはわかる。
「えーっと……ソレアさま?」
「いやー? ボクは通りすがりの、『なぞの仮面の美女』さんだよ~?」
うん、バレバレだ。
バレバレすぎて、もうどうしよう。
「あー。もうさ。やるっきゃなくねえ?
相手が誰だろうが、オレたちは勝たなきゃなんだからさ」
タクマが遠い目、悟りを開いたような顔で言う。
「そーそーそのとーりっ!
さっやろう! ダイジョーブだよ、おねーさん優しくするから☆彡」
「えっえっ、えーっと……わかりましたっ!
がんばるますっ!!」
そう、やるっきゃない。僕も腹を決めた。
ちょっとかんじゃったけど、タクマがドンマイと背中をたたいてくれたらはずかしいのもとんでった。
ソレアさま、もとい『なぞの仮面の美女』さんと、200mの距離をとった。
まずは僕が、地神龍のすがたに。翼を広げ、発生させた反重力で舞い上がると、しっぽでタクマを投げ上げる。
タクマは太陽にむけて抜刀し、よくとおる大きな声で叫ぶ!
「『来いっ! ハイパー・スケイル』!!」
するとそれを合言葉に、会場のすみにしつらえてあったポッドから、今日のためにと作り上げた特製パーツが飛来、つぎつぎ僕たちふたりの体に装着されていく。
僕の全身を覆うのは、僕の大きさよりもぐっと大きな――ゴーちゃんレベルのサポートアーマー。
頭の上には、人ひとりが立てるコンバイン・クレイドル、タクマの指定席がある。
ここにタクマが足を固定し、剣技を放って戦ってもらうこともできるし、逆にまるい風防をせりあがらせ、コックピットみたいにして守ってあげることもできる。
一方でタクマは物語にでてくる『伝説の聖戦士のよろい』っぽい、開放的なサポートアーマーをまとっていく。
足元からはじまり、腰、胸、肩。
最後にドラゴンっぽいかたちのヘルメットがかぶさり、閉じていたフェイスガードががしゃっと開いて、主人公っぽいかっこいい顔がのぞく。
成功だ。みごとに成功だ!!
いっしょに開発をしたチームのみんなが、関係者席で喜びの声を上げるのを見て、僕はすっごくほこらしい気持ちになった。
試合はこれから。もしかしたらこの後、なにか不具合が出るかもしれない。
けれど、だいじょうぶ、きっと。
みんなでここまでがんばったんだ。あとは、僕たちがキメるだけ!!
練習通り、僕の頭のコンバイン・クレイドルでタクマをうけとめると、もういちど大きく翼を広げる。
タクマが大きく見得を切る。
そうしてふたりで声を合わせた。
「世界の愛と平和のためにっ!
超合金合体変形巨大ロボ! グランドラゴンズ!! 見参っ!!」
今度は僕も、かまずに言えた。
みんなが拍手してくれた。
『なぞの仮面の美女』さんもすっごく喜んでくれて、ぴょんぴょんしながらぱちぱちぱち。
「すごいすごい! かっこいいい!!
よっしゃー! お姉さんもおっきくなるぞおお! そいやあああ!!」
そうして『なぞの仮面の美女』さんも、僕とおんなじくらいの大きさになった。
タクマが驚いた声を上げる。
「え゛っちょっマジ――?! ソレアさまって巨大化できんの?! きいてねえ――!!」
「だってそりゃー女神だもん!」
おっきなブイサインをきめるソレアさま。もう隠すのも忘れちゃったみたい。
会場のみんながどっと笑う。僕もわらった。
もちろんソレアさまもあははと笑ってる。
こうして僕たちのサプライズ・エキシビションバトルは、明るい笑いとともに始まったのだった。
ひたすら技術を磨きまくったおかげで、地の民のホンキは少々異次元です^^;
次回、久々の掲示板回!
この章でソリス杯最終カードまでいくのです。
どうぞ、お楽しみに!!




