Bonus Track_103-2 新時代はもう、ここに〜侍従長セバスチャンの場合〜
もちろん脳内では「新時代」がエンドレスでかかってます。
ウタちゃんすきすき。
わたくしとバートは、同じ日、おなじ時に生まれた、双子の兄弟のようなものでした。
そのときから、そうなることは決まっていたのでしょう。
天空城に仕えて数十年。
バートは執事として、つねに今上陛下に具してその補佐をし。
私は侍従長として、城で働く者たちの統括をするようになりました。
つねに力を合わせ、われら『空の民』を統べる御方にお仕えしてまいりました。
最初にお城に上がったときには、先々代の王陛下ルーセイさまはもう老齢で、まもなく次代――ルリアさまの父君に後をお譲りになりました。
その後、先代王陛下ルシアンさまがルリアさまを授かったとき、わたくしとバートは侍従長と執事としてルリアさまに仕える栄誉をいただき、ルリアさまが女王となられたときに、そのまま天空城の侍従長と女王の執事となったのです。
そんなわけでルリアさまは、わたくしたちにとっては、三代目の王陛下ですが……
いままでお仕えした中でも、飛びぬけて自由なルリアさまは、数々の珍事件を起こし、たくさんの人々の心をわしづかみにし、様々な改革をなさってきました。
そのなかでも最大のものが、こたびの後継者候補選び。
飛べない鳥の少女を、リンさまとふたりでひとつの候補に任命すると決めたのです。
空の民においては、飛ぶ力が最も重要視されます。
われらの頂点たる天空城にすまうことができるのは、みずからの翼をもって飛べるものだけ。
リンさまの事件は、この風潮に一石を投じました。
来る日も来る日も、あきらめずに努力をつづけるリンさまと……
リンさまを近くから遠くから支え続けたミルルさまのお姿は、いつしか空の民の心をがっちりとつかんでいたのです。
どうにか、なにかのかたちでリンさまの公女復帰を、ミルルさまにも名誉島民の栄誉をという声は、島内島外とわずに増えるばかり。
そんなおり、アークさまとセラさまの研究が完成。リンさまが新たな翼を得、ミルルさまの協力で飛行が可能になったとき、ついにルリアさまが『鶴の一声』をお上げになったのです。
リンさまの公女復帰、ミルルさまの名誉貴族任命を前提に検討を始めなさいと。
わたくしどもは知っています。飛べる民、飛べぬ民の理解と共生のためのまつりごとを進めつつ、折に触れてはおふたりのことを話題にし……
ときには変装して城を抜け出し、みずから様子を見に行っては、よい噂を拡散なさっていたことを。
疑問の声すらもはや上がりませんでした。女王の威光に打たれてでなく、だれよりがんばった少女たちへの愛がそうさせたことは明白でした。
だから、ルリアさまがこう宣言した時にも、反対はなかったのです。
ソリス杯で二人が私を倒せたならば、二人一体で次代候補に指名する、と。
『常識的に』考えるならば、リンさまを女王に、ミルルさまを補佐官にというところでしょう。
飛べぬ翼をもつものが、天空城の頂点となる(※ほぼ確定)。そのことは、前代未聞のインパクトと喜びをもって迎えられました。
それでも、ルリアさまはその試練に、手加減を一切しておりませんでした。
いかづちの鳥をトーテムとするバートは、その歌声で天を動かします。
彼が全力で補佐をし、ルリアさまが全力で戦えば、まさしく一騎当千。
それでもおふたりは、その力をあるいはかわし、あるいは耐え抜きます。
あの日の嵐に似た乱気流をバートがぶつけたときには、城内からも悲鳴が上がったものでしたが、結果オーライ。
アークさまたちの予想通り、リンさまの背中にアリオンの翼が戻りました。
そしておふたりは、流れ星に。
『0-Gツインスター』。われらが聖なる魔王さま方直伝の、まばゆい大技です。
ルリアさまがそれを笑顔で受け止めたときには、わたくしの視界も曇りました。
一体となっておちていくお三方を、バートがしっかりフォローします。
すばらしい。じつにすばらしい。
わたくしも、全力のフォローをするといたしましょう――まずは胸の奥から付き上がるものを、素直に声にすることで。
新時代はもう、ここにあります。
選民意識にとらわれ、逼塞した天空城はもうありません。
わたしたちは、よろこびをもって進むのです。
愛すべき若者たちが先頭に立ってつかんでくれた、夢のある未来に向けて。
ルリア様は少女時代に王位を継いだので、周りの人たちにとってはまだ少女な感覚です。
本人もそんな感じです。
これが若さか(爆)
次回はれっつ、お料理対決!
どうぞ、お楽しみに!!




