<Stage_103 残されし切り札! ソリス杯とチャネルクエスト!!> 103-1 潮風の中、まぶしい背中~『リアちゃん』の場合~
章タイトルをサブタイに入れさせていただきました!
またたびたび申し訳ございません。『魔王』はやめてましたね。正しくはシーガル『聖王』騎士団でございました。お詫びして訂正いたします!
『戦う力を持たぬ者たちが、安心して暮らせる場所。
そこに通う文化文物をつうじての、異なる文化を持つものたちとの交流。
戦いのさなかにあっても、それらは絶対に守り抜かねばなりません。
この国を、この星を。
そこに住む者たちの『ひと』としての心を守りたいならば、絶対にです』
わたしたちはみな、そう教えられてきた。
幼いころから、ずっと。
『女神様のお導き』の名のもとに、『停戦』を認められているものがいくつかある。
戦う力を持たぬ者の暮らす場と、そこに通う文化文物をつうじての異文化交流だ。
前者を守るのがわれら為政者ならば(もっとも『ステラ国』末期には最悪の形骸化をしていたものだったが)、後者をつかさどるのが『雪風花』である。
ステラのユエシェ家。月萌のファン家。そして、ソリスのホァ家。
各国非戦闘民のなかに居を置く三つの大商家は、だから当然つながっていた。
それは、戦乱のさなかにあってさえ。
そんなわけで三家の代表は、定期的にオンラインお茶会をしている。
あたし『リアちゃん』も、その場にお邪魔していた――お菓子目当ての珍客、という名目で。
先だってもいつものように、『アイリーンおねえちゃん』にくっついて甘いお菓子をハムハムしながら聞いていた。
『うさぎのおじいちゃん』ことラゥ・ホァ氏が語る計画を。
黒いうさぎさんの姿で、おみみを『ティモテ』しながら話す姿はひたすら『かわいい』のひとことに尽きたが――
『月萌はイツカナちゃんの出身地。そしてステラは彼らに恩を受けしもの。
今から全力でつっぱしらんわけにゃ~いかんことじゃろ。
だが、グランマとの交渉は一度失敗しておる。二度目がないとは言い切れぬ。
よってわしらは今回、力を温存することにさせてもらおうと考えている。
なーに、心配するでない。まんま成功すればそのぶんドーンもりあげまくっちゃるし、万万が一失敗したなら、全力で切り札を切ってくれようて』
彼は、やっぱりすごい知恵者だった。
その慧眼のおかげでいま、あたしたちは即座に手を打てたのだから。
交渉失敗、イツカナ追放の報をうけてすぐ、あたしたちは動いた。
シグルドはあの人心掌握術で部下たちを勇気づけ、動画配信で世情を盛り上げる。ライアンたちが落ち込みまくりなら、『ソリス杯』の準備を提案し、元気を取りもどさせる。
あたしたちはそれを受ける形で動画配信。そして、妹たちのもとに向かった。
アルム島の空気は、まるでお通夜のようだった。
タチバナ家をはじめとしたゲストたちはきょとんとしていたけれど、イツカナ追放を聞いた瞬間ぼうぜん。
ここは、あたしたちの出番だ。
「だいじょーぶっ! イツカナちゃん復活の方法はあるから――!
ソリス杯を開催するよ――!!」
あたしとセラさんは、めいっぱいに明るく声を上げ、そのまま島を走り回った。
そうしてエルメスとナナおねーちゃん、ハルハルおにいちゃんズ、そしてシーガル騎士団にトラオ夫妻(※未婚)をつかまえて、作戦会議を始めた。
「単刀直入に言うね。
おにいちゃんたちに、ソリス杯出てほしいの!
で、それってとぜったい和平反対派がねらってくるから、騎士団にガードしてほしいの!」
「俺は……やりたい。
俺が、イツカナさんたち復活のため、すこしでも役に立てるなら。
みんな、どうかな?」
まっさきにやりたいといってくれたのは『きーおにいちゃん』こと、ハルキだ。
それでも、それが危ないことで、みんなに負担のかかることだということは、ちゃんと分かっているようだ。
覚悟を瞳に宿しつつ、それでも気づかわしさをにじませて皆を見回す。
よい青年に育ったものだ。ちょっとおばちゃんっぽいが、素直にそう思った。
「姉上。『おにいちゃんたち』ということは、私が出るわけではないのですよね?」
エルメスはきちんと理解しているようだが、それでも出たい様子。
ここのところ、婚約者二人でラブラブにタッグバトルを練習し、いいかんじに形になってきていたのはあたしも知ってる。けれどこれは言わないといけない。
「エルメスだとね、『釣れない』やつらもいるんだって。ね、セラさん」
「はい。
たとえばステラの民を名乗るものが和平反対派にいた場合、彼らは今回手を引き潜伏するでしょう。
皇女を攻撃すれば、自分たちのみが逆賊として切り捨てられる。ひいてはステラ領が平和のために動いたという『ポイント稼ぎ』の材料とされ、自らのゴールを遠ざけることになるためです」
するとエルがやばいオーラを発しはじめた。
「そうですよね……つまりきーさまなら、だれもためらいはせずに攻めてくる……
ええ、わかっていますとも。わかっていますとももちろん。……駆逐だな(ボソ」
「おちつけエルー、なんかやばいオーラでてるにゃーん?」
「ハッ?!」
我が妹エルメス。優しいいい子なんだけど、守るべき相手に危機が迫るとオニになる。
そんなときはチビの姿でぎゅーしてやるのだ。そうするともとのエルにもどる。
もっともきーにーちゃんはそんなエルも好きみたいだけど。全員大なり小なり動揺してる中、ひとりほっぺたを赤くしてボーッとしてる。
「えー、おほん!
なるほど、それは合理的な案ですね。
敵勢力を集中させ、一気に今後の憂いを払う、よい策です。
ハルキ様、義兄上、ご安心ください。あなた方は私がお守りします!」
なんかもうほんとにひとりで反対派駆逐できちゃいそうな気合いだけど、もちろんエルだけに全部やらせはしない。みんなが次々声を上げる。
「そういうことなら、兄もがんばりますっ!」『オミおにいちゃん』こと、ハルオミが。
「もちろん私たちもまいりますよ! シーガル聖王騎士団長兼海援隊隊長として、そしてあなたがたの友として!」ユリおねえちゃんが。
「飛行隊も出る。空の守りは任せてくれな!」ルシードおにいちゃんが。
「あー。騎士団出るってのでなんだがよ。俺らにも手伝わせてくれよな。
これでなんもしねーとかジジイが聞いたら泣いて叱られるわ!」そして、アルム島代表として、トラオにーちゃんが。
ナナおねえちゃん、サリイおねえちゃんとマユリおねえちゃんも、しっかり力強くうなずいてくれる。
思った以上の士気の高さ。
この熱量があれば、まんまいける。あたしとセラさんはうなずきあった。
「もちろん、トラオさんたちにもやっていただくことはあるわよ。
まずはご実家にお願いしてもらえないかしら、……」
トラオやサリイ、ハルハルブラザーズをはじめ、アルム島組には良家の子女も多い。
彼らを通じ、ご実家に『できるだけ大々的に支援を表明してもらえないか』とお願いしてもらい。
動ける限りのアイドルたちにも出演を依頼し、ひと段落ついたら、ちょっとカフェちっくな海の家でひとやすみ。
ふーっと息をついてトロピカルティーをすすると、浜辺で海を見ながら話す一団が目に入った。
ハルキたち。そして、『シーガル聖王騎士団』の主だったものたち。
潮風の中、その背中はりりしく伸びて。
「……たのもしいよね」
「ええ、とても」
あたしとセラさんは、賞賛を込めて言い合うのだった。
そんなわけで次回、ハルハルブラザーズがゲスト枠でソリス杯出場です!
相手をつとめる二人は誰でしょう?
(ひとりは六獣騎士じゃなかった人です!)
どうぞ、お楽しみに!!




