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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_98 終結・魔王戦!~あの月を目指す、その前に~

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101-X 神前のリベンジ――そして審判は

「あなた方は、世界の人々を愛している。己を、その夢を、犠牲にすることができる。

 ほんとうに、そうですか?

 だったらなぜ、ここまで話を引っ張ったのです?」

「ほう?」


 ひくり。ルクの片頬がひきつった。

 どうやら、一度『少年ルク』として怒りをぶちまけてしまったことで、沸点が下がったらしい。

 ならば、勝機はある。


 あちらの構成は圧倒的だ。おれやイツカが先頭に立ち、みんなに最大限の協力をしてもらっても、やっと勝てるか勝てないか、むしろムリゲーと言いたいレベル。

 それでも攻め手はあった。

 向こうのメンバーは、女神の加護で出現した召喚獣、ビーストモードの獣人たち、動かないGM(グランドマザー)と、動けないセレナ。

 つまり、頭脳となるのはルクだけ。そこを制してしまえば、どれほどのパワーもあってなきがごとし。

 おれはあえて冷徹に、痛い――と思われる――部分をえぐっていった。


「あなたは、若き日に『前世の約束』を思い出した。

 それからその身に『虚飾』を宿し命永らえ、陰から月萌のため働き続けてきた。

 でもなぜ、アースガルドに転生することはなかったのですか?

 使命に気づいたそのあとに、何度でもそれを思うことはあったはず。

 あなたはそれだけの力量をはぐくんでいた。後を任せられるはずのひとたちだって周りに何人もいた。

 にもかかわらず、それを考えなかったのはどうしてですか?」

「…………。」

「ソラ――カケルを、ホシノ博士主催の3S多重憑依実験に。ミツルを、その副作用の矛先に。

 平気で、かどうかは知りませんけれど、かつての仲間をあなたは犠牲にしてきた。

 彼らを犠牲に成果を出して、それで充分とそう、思われたのですか」


 ああ。言葉にしておれも思った。

 これまでのことどもに対し、おれも、普通に、怒っているのだと。


「世界の人々を愛している。

 というのに、シオンやイズミたち。その前から、何人もの生徒たちを。

 学園闘技場で、『イケニエのウサギ』にし続けてきた。

 胸くそのわるい見世物にして戦費を稼いだ。実習と称し過剰な労働をさせた。

 心身をすり減らして動けなくなれば地下に送り込み、幸せでよかった人生を搾取した。

 そのうち何人かは、愛する女性におもちゃとして買い与え、使い捨てるに任せた」


 ぶっちゃけ最後はイザヤとユウのことだ。ソラの目が鋭くなる。うつむいたままのセレナの肩がぴくんと震える。

 すでに反省しているだろう、今の彼女には気の毒なことだが、避けるわけにもいかなかった。

 それでも彼女をそれ以上責めるつもりはないのだ。そこのところはハッキリと言葉にしておく。


「ルク・タカシロ。なぜ、そんなことをしたんです。

 セレナさんに、ひどいことをさせたんです。

『うさぎ』たちを犠牲にしたんです。

 愛しているのじゃ、ないのですか?」

「……セレナを悪く言うな。それだけは、許さないぞ」


 ふたたびルクが、少年のように顔をゆがめる。

 ぶっちゃけ、整っているだけに怖いものだが、睨まれたって引けない、引かない。

 おれは言葉をつづけた。


「ええ、彼女はすでに反省しています。

 ですから、それ以上をいうつもりはありません。

 逆に、あなたはどうなのですか?

『保護者なら』どうして彼女を止めてあげなかったのです。

 そのことをすこしでも反省してはいないのですか?

 いるのならなぜ平然としていられる。開き直って他人ばかりを責め立てている」


 そのとき、優しい手がおれの背に触れた。

 ふたつ。ミライと、イツカだ。

 ふっと肩の力が抜けた。

 みれば、もうひとりのおれもおなじよう。

 一つ息を吐くと、冷静さをとりもどした口調できっぱりと言い切った。


「そうしてだだをこねていればだれかがどうにかしてくれる。犠牲になってくれる。

 おれたちに言われたのはそんな、甘ったれた子供の論理にしか聞こえない。

 おれたちのそれは偽善だといわれましたが、あなたから聞いたそれは、身勝手にしか思えません」


 するとルクは鼻で笑った。


「……ふむ。きみたちが今しているのは、話者本人への個人攻撃というわけか。

 それは詭弁というものだと、きみたちは学校で教わらなかったのかね?」


 もちろん、返すことは一つだ。


「おれたちは倣ってみただけだったのですけれどね。

 月萌の義務教育、そのありかたにも責任があるはずのお方のおっしゃりように。

 それは詭弁なのですね。やはりそうでしたか。

 では、ここからは詭弁なしでお話をしましょう。

 たとえ互いに反感を持っていたところで、それでもおれたちにはしなけりゃならないことがある。

 全力で、力を合わせて。

 救いましょう。アースガルドも、ミッドガルドも、そこに住むすべてを」


 最後はちょっと、イツカにならってみた。

 やつもそれに気づいたみたいで、黒ツヤしっぽがぴこんとした。


 けれど、おれが伸ばした手は叩き落されることになる。


「知っているかい、少年。

 話し合いをするかどうかは、強い者が決めることなんだよ。

 殴って従わせられる程度の相手と、話し合いをするバカはいない!」


 ルクが高々と笑えば、彼の配下が動き出す。


GM(グランドマザー)よ、はっきりとした。

 やつらはミッション『エインヘリアル』を頓挫に追い込もうとしている!

 だれより最もミッションのために働いてきた、このわたしを翻意に追い込もうとすることで!

 さあ、大いなる女神よ。今こそ審判を!!」


GM(グランドマザー)が、玉座を立った。

 そして彼女が右手を掲げれば、謁見の間は光に包まれた。


次回、審判の行方。

1-3日中に『書けたら投稿』になります!

(さすがにここで正月特番やれないので、そのあたりはいずれ改めて!)

どうぞ、お楽しみに!!


今年も皆様に大変お世話になりました。

来年もどうかよろしくお願いいたします!!

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