101-8 変わってしまった勇者、もしくはルクのデスマーチ
年末進行で執筆できませんでした! 取り急ぎ投稿いたします!!
「うそ、つかないでよ、ルク」
イツカが俺たちをかばって立ち塞がろうとした、そのさきにぱっと飛び出してきたものがあった。
スラリとした、白いひとかげ。
背中には、白い翼がある。
「僕たち全員、死んだら転生、目標完遂?
そんなの、ぜったいにむり。
だって、すくなくとも僕は、アースガルドに転生できない!」
ソラだった。
けれど、彼の様子もいつもと違う。
「なぜって、責任を果たしてない。
いま、思い出した。
まえのミッドガルドで。僕と、ミツルは、君たちと地球を滅ぼした。
……その責任を果たすと約束したんだ」
自分を『僕』といい、敵ボスであるルクを『君』と呼んでいる。
それも、親しい間柄であるかのように。
驚いていれば、ルクはちっとでもいいたげな表情で目をそらした。
「どうして。どうしてそんな嘘をつくようになってしまったの。
僕たちのしってたルクは――」
「黙れ」
ドン。ルクがいまいましげに足を踏み鳴らす。
それだけで、『謁見の間』の床は震え、するどい旋風が渦巻いた。
「ちょこっとだけ生きて、戦って。のうのうと死んで。
ずっとずっとまかせきりにして、都合のいい時になったらよみがえって。
そんなお前になにがわかるんだ!!」
ルクは声を荒げた。
まるで見た目通りの少年のように。
「俺がかわった? ああ変わりもするだろうさ。何年生きてきたと思ってる? 200年だぞ。
戦う月萌の人々をみてきた。自分でも戦った。
そうして月に召されかけた時に思い出したんだ。俺が負った使命を!!
俺だって考えたさ! いろいろ試した!!
戦争じゃなく、殺し合いじゃなく、ミッションを進める方法があるんじゃないかと。
セレナが、お前たちがもう一度生まれてくる前に戦争を終わらせたくて!
でもムリだった。無理なんだ。だからこれしかない。命がけで戦って、殺しあって、必死で魂を育てていくしかもうないんだよ!!
そうしなけりゃ滅びる!! このセカイもアースガルドも!!
セレナが生きていける場所が、なくなっちまうんだよ!!」
そこまでまくしたてるとルクは、振りかぶった手の上に人の背丈ほどもある火の玉を出現。振り下ろすモーションでそのまま投げつけてきた。
対してソラが蹴りを放てば、巨鳥のカタチをした水塊が飛び出し、これを相殺した。
セレナは、うつむいて動かない。
そんなセレナに、ソラはなにもいえない。
ルクは一つ息を吐くと、
「嘘をついた? ああそうだとも。お前たちごときでは、アースガルドへの転生はまだ無理だ。
だが、黙ってもらえばミッションは再び進むようになる。
お前たちはここで全員オーバーキルだ。
イツカ、カナタ。お前たちはゲームからオミットとなる。
残った者たちには、これまで与えた損害を地下から支払ってもらおう。
さあ、来るがいい。ここが、お前たちの『ゲーム』のおわりだ」
ルクが今一度手を掲げれば、謁見の間の床一面を、召喚陣が埋め尽くした。




