101-7 残酷な選択、意外な救世主!
「セレナ、……いや、おまえさ。
『人を、目標値で縛り、その人生をささげさせる。
二度と、そんなことのない世の中を』
そう言ってたろ。それが、なんで」
イツカに問われれば、セレナは哀しい目をして「ごめんなさい」と頭を下げた。
「あなたと話した、あの時は……そう思っていたの。本当に、心から。
けれど、その後。
月萌で恩赦を受け、再び『御前』として、働き始めてから。
わたしは、思い出してしまった。
わたしがなぜ、生まれたのか。前世、どんな約束をしたのか。
わたしの、ルクの、犯した罪。
それから逃げることは許されない。それを繰り返すことだけは絶対にできないの。
あなたに救ってもらっておきながら、本当に……申し訳ないと思っているわ。
でも、やらなければ。
わたしは、わたしたちはほんとうに、世界を滅ぼしてしまう……!」
イツカから、ほかの仲間たちから。ライカからさえ、驚きが伝わってくる。
かくいうおれも驚いていた。
セレナのしぐさが、しゃべり方が、まるで変わっていたのだ。
以前はなんというかもっと、見た目不相応に大人びていた。
それが今は、まるで見た目通りの可憐な少女。
「おまえ、セレナ、……なんだよな」
「はい」
イツカは驚きつつも飲み込んだ様子。おれも彼女の声を聴いて納得した。
これも、彼女だ。
おれたちの知らない生を生きてきた、ホンモノの。
「悪い、ちょっと驚いた。
でも、いまのセレナもセレナらしいし、わるくないと思うからな!」
「え、……」
イツカが小さな笑みを添えてのたまわると、セレナがぽっと頬を染める。
またやりやがった、この無自覚主人公野郎めは。
あとでセレネさんによるお説教確定である。
もっともその前に、ルクが咳払いで軌道修正を行ったのだが。
「姪を口説くつもりなら、保護者の私をとおしておくれでないかね?
本題をすませよう。
君たちがどう足掻こうと、ミッションは止められぬ。
なぜならこれを果たせねば、イツカ、カナタ。君たちの故郷、そこに住む人類は、遠からず絶滅するのだ。
そうなればこのミッドガルドもまた滅ぶ。
君たちはミッドガルドの民を想いやって行動した。その精神は尊いものだ。だがその試みそのものが、状況を悪化させていたのだ。
きみたちがほんとうに、ミッドガルドの――我々の未来を望むなら。
なすべきことは明らかだ。
そこにいる、ともがらをその手で捧げよ。
我らのために。――未来のために。
彼らならばすぐにでも、アースガルドに転生できる」
ルクはおれたちの後ろに立つ、仲間たちを指さした。
それを裏書きするように、『謁見の間』の空が虹色に輝く。
「ここにいる者らを全て捧げれば、今年度の数値目標は完遂される。
お前たちにより奪われた、明日への可能性を取り戻すことができるのだよ。
さあ、早く……」
「うそ、つかないで」
残酷な問いをかけるルク。その前に飛び出したのはなんと、ソラだった。
次回、ソラが告げる真実。そして始まった戦い。
どうぞ、お楽しみに!




