表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/1358

1Re-3 おじいさんとえびせん

 念のためおれは『プリーストランキング』の履歴をあたってみた。

 ミライのTPは、おととい夜から昨日。昨日から今日、とぐんぐん伸びて、今朝六時発表のランキングでは、95万の大台を記録している。

 そこからしばらく動きはなかったが、九時発表の表からはもう、名前が消えていた。


 つまり、この間に、ミライに何かが起きたのだ。


 一気にTP100万達成できるような高額依頼を受けられた?

 だったら、『列聖』を受ける必要はない。

 誰かに説得された?

 一体誰にだろう。そしてどういう理由でだろう。


 考えろ。おれがミライだったら。

 どういう理由で、『戦士昇格』をあきらめ、『列聖』をえらぶ?

 もっといえば、『昇格』の条件のどれを、どんな理由で失いうるだろうか?



『昇格』の条件の一つ、冒険者ランクA。

 これを失ったとは考えられない。

 なぜって――もしもそうなら、ぶっちゃけミライは犯罪行為をやらかしたことになる。

 さすがにそのタイミングで教会も『列聖』を承諾はしないだろうし、百歩譲って教会がなにか手打ちをしてくれたのだとしても、おやっさんかマリルさんから一言おれにあったはずだ。


 ならば、TPをごそっと失ったのか?

 TPは通貨だ。払えばなくなる。

 しかし100万TP近い額の買い物なんて、それこそ家とか、超高額レアアイテムの入手かしかない。

 家はもうあるからいらないし、レアアイテムなのか。


 もしくはBPの大変動があったのか?

 一気に増やすことは、プリースト一本のミライには無理だろう。

 一気に減らす方法はあるが、『献上』ぐらいだ。

 でも、手持ちが1000を割りこむ額の『献上』をこの時期に、わざわざする必要は?



 一度、まとめよう。考えられるのは、TPかBPの大幅支出。

 ではミライなら、どういうときにそれをしてしまうだろう?

 答えは一瞬で出た。『誰かが困っているとき』。

『誰か困っている人のために、急いで超高額レアアイテムの代金肩代わりをした。手持ちをはたき、足りない分は『献上』によるBP→TP変換でまかなった』

 ……うん。ミライなら、ありうる。


 ならば、それは悪い奴に騙されて、か。もしくは、レアなクエストで、なのか。

 おれの頭に、その知識はない。

 ネット検索しようにも、情報が少なくあいまいだ。

 こういうときは、ネット掲示板の出番だ。


 おれはメニューウィンドウを呼び出して『バーチャルターミナル』を選択。

 ポン、という効果音とともに、目の前に現れた携帯用端末ポータブルプレイヤーを操作して、『Vネットブラウザ』を起動した。

 これはティアブラの便利機能の一つ。ゲーム内に居ながらにして、リアルの端末の機能を使い、ネットが見られるという優れモノ。クエストの攻略に詰まったときには頼みの綱である。


『お気に入り』からブックマークをタップ、いつもの某大手掲示板サイトをひらけば、目の前に掲示板一覧の文字がパッと浮かぶ。

 おれはその中から『ティアブラ掲示板』を探してオープン。

 さらにそのなかの『おしえてスレッド』に入るとこう書き込んだ。


『教えてください!

 大金を急いで肩代わりするクエストってなんかありますか?

 詳しい状況は伏せますが……』


すると、怒涛の勢いでレスが表示されはじめた。



名無しの通りすがりさん:おい、まずは落ち着け。ミッドガルドにも悪人はいるからな?


名無しの通りすがりさん:よく慌てて払わずきいてくれたわ

調べてみるからちょっと待て


名無しの通りすがりさん:そんなのあったか? 少なくとも俺はシラネ


名無しの通りすがりさん:つ【孤児院を救え!】


名無しの通りすがりさん:それって関係者探して回れば自腹きらんでええよ

 猶予もヒントもけっこうあるし


名無しの通りすがりさん:

 えーそうだな……

 んーとね、ミルドでおれがあったやつ。

 じじいがあらわれて、たしか、

 えびせんを買いたいからーっていってく

 るやつじゃなかったっけ?

 ティアポがっつりもってかれたわ……

 いま思うと、ちょっと、いやけっこう、

 あやしかったけど


名無しの通りすがりさん:それ詐欺だろwwww


名無しの通りすがりさん:聞いたことないですね、詐欺じゃない?


名無しの通りすがりさん:ちないくらよwww


名無しの通りすがりさん:……フタケタ万


名無しの通りすがりさん:おいwwwwwwww


名無しの通りすがりさん:どんだけwwww



 ティアブラ民の暖かさに内心手を合わせつつ、読み進めていると表示が突然切り替わった。


『NOT FOUND  お探しのページは存在しない可能性があります』


「え……?」


 しばらくして表示は復活したが、なにかがおかしい。


名無しの通りすがりさん:おい、まずは落ち着け。ミッドガルドにも悪人はいるからな?


名無しの通りすがりさん:よく慌てて払わずきいてくれたわ

調べてみるからちょっと待て


名無しの通りすがりさん:そんなのあったか? 少なくとも俺はシラネ


名無しの通りすがりさん:つ【孤児院を救え!】


名無しの通りすがりさん:それって関係者探して回れば自腹きらんでええよ

 猶予もヒントもけっこうあるし


名無しの通りすがりさん:えーそうだな……んーとね、ミルドでおれがあったやつ。

 じじいがあらわれて、たしか、えびせんを買いたいからーっていってくるやつじゃなかったっけ?

 ティアポがっつりもってかれたわ……

 いま思うと、ちょっと、いやけっこう、あやしかったけど


名無しの通りすがりさん:それ詐欺だろwwww


名無しの通りすがりさん:聞いたことないですね、詐欺じゃない?


名無しの通りすがりさん:ちないくらよwww


名無しの通りすがりさん:……フタケタ万


名無しの通りすがりさん:おいwwwwwwww


名無しの通りすがりさん:どんだけwwww



 そのとき、後ろからふっと抱きすくめられた。

 同時に目の前に突き出される、青の携帯用端末ポータブルプレイヤー

 画面にはただ三文字




 騒ぐな





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 掲示板に異変あり! そしてそこから後の騒ぐなの三文字。 少し背筋がゾクッとしました。 こういう演出は大好物です♪
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ