100-6 夢は継がれて! 天空の結界解除<アンロック>!!
『シエル・ヴィーヴル・プラス』チームの計算は正しかった。
あれから二日とすこし。ライカネットワークはティアブラネットワークを凌駕した。
なぜそうとわかったか。GMご本人からお達しがあったのだ。
『ミッドガルドの民よ。我はGMである。
報告しよう。現時点をもって、シンギュラリティ・チャレンジは成功した。
月面への到達を阻むための特殊結界『NOEBS《ノーブス》』にはもはや意味がないと判断。これを解除した。
来るがよい。一つ忠告するならば、『先達の忠告は忘れるな』。以上である』
そらにひびく、聞き覚えのある声。携帯用端末に届いたメッセージ。
新覚醒技『セント・フローラ・ガーデン』で基地を守ってくれていた『ハナイカダ』や、ちょうど巡回していたソウジとクーリオをはじめとしたみんなから驚きの報告か次々上がった。
「『NOEBS《ノーブス》』……『No One Escape But Souls<魂以外は抜けられぬ>』か……」
シアンさんが哀しく優しく笑う。彼女を見るエルカさんたち、さらにはホシノ博士たちまでもが、しんみりとした様子だ。
事情の分からないおれたちがそっと視線を向けると、彼女は教えてくれた。
「いえ。私の大叔父も、月面に向かう研究をしていたんです。
無理がたたって体を壊し、それでも倒れるまで研究を続けて。
最期のことばがこうだったんです。ああ、やっと、月へ行ける、と」
「そんなことが、……」
壮絶な生きざまに言葉を失う。けれど、シアンさんの笑みは柔らかい。
そしておれたちに『そんなに悲壮なことではないんですよ』と教えてくれた。
「それでも大叔父は、彼なりに人生を楽しんでいたことと思います。
私たちと逢う時にはいつも笑顔で。遺言にも、こう書き残してくれていたのです。
わたしはおそらく、天が定めた命が切れるより前に、月へは至れないことだろう。それでもお前たちがいてくれたことで、この人生は優しく楽しいものになった。今までありがとう。愛しいお前たちは生きたままで月へと来れるよう、その日まで祈りつづけて待っています、と」
胸元を――そこに秘めたペンダントをぎゅっとにぎって、シアンさんはにっこりと笑った。
「私は、そんな彼の夢を継ぐため研究者になりました。
やっと、かなえられるのですね。感謝と喜びではち切れそうです。
アスカさん、ライカさん。みなさん。大叔父に代わってお礼を申し上げます。
ほんとうに、ありがとうございます!」
そうして深く頭を下げるシアンさんに、アスカは言った。
「シアンさんだって、すごくがんばってたじゃないですか。
シアンさんや、大叔父さんたち、ここまでの研究を続けてくれたみなさんあっての今ですから、むしろお礼を言うのはこちらです……って、照れ臭いからカナぴょん口調で失礼します☆」
妙に神妙に言ったと思ったら、最後はそんな風におどけたもんだから、思わず笑ってしまった。
ひとしきり笑うと、エルカさんがまとめてくれた。
「これで、月への道がふたたび開けた。世界的な快挙だ。
今日中にマスコミが殺到してくるはずだから、苦手な者は外出の際に表面換装を忘れないように。
今日は祝おう。そして月面到達の暁にまた祝おう。
そのつぎは、我らの真の自由の獲得を祝おう!」
「おうっ!」
もちろんこの言葉はすぐにRMPメンバーすべてに拡散。そこここでこぶしを突き上げ、歓声を上げる仲間たちが続出した。
そしてそこからさらに三日。
おれたちは、本当の宇宙空間に飛び出したのだった。
寒くなると頭が痛みますorz
次回、愛する人々とのしばしの別れ。イツカナ、ついにほんとうの宇宙へ!
どうぞ、お楽しみに!!




