99-8 そうそうたるメンツ! リーチザムーンプロジェクト、チームリーダー顔合わせ!!(2)
「かれらのチームにはまた、イツカ君カナタ君をはじめとしたアタックチーム、同行のサポートスタッフたちの鍛錬の面についても、受け持ってもらえる。
つぎに、研究とサポートを担うプロフェッショナルたちを紹介しよう。
月萌からは、研究チームが二つ。エアプレーン『ソラフネ』シリーズ製造者たちによる『ソラフネ』、学識者を中心としたチーム『クオン』。
ソリステラスからは合同チーム『シエル・ヴィーヴルプラス』。
この三つが、サポートスタッフとしてプレーンに乗り組み、あるいは地上からのバックアップを行う。
『ソラフネ』代表はリュウジ・タカシロ殿。『クオン』代表はサツキ・クゼノイン殿。『シエル・ヴィーヴルプラス』代表はアリオン家のフォルカ=セラフィーネ殿だ」
エルカさんの紹介に応じ、三人が立ち上がった。
「これまで、いろいろと面倒をかけた。これからはまっすぐに役に立とうと思う。どうかよろしく頼む」
「月へと至ることは、長年の悲願でした。いまこそクゼノインの蓄積した知識をフルにお役立てましょう。わたくしは若輩ではございますが精一杯努めます。よろしくお願いいたします」
「リンがお世話になってまーす! ちょっとぶりのかたもはじめましての方も、よろしくね。いっしょにがんばりましょう!」
気品あるグレーのスーツですっと頭を下げるリュウジ氏は、もはや『だれおま』レベルのすがすがしさだ。それでいて、つややかな黒髪に白いものの混じるナイスミドルの渋さも健在。おれとしては今の彼のほうが断然好きである。
となりのサツキさんはいつも通り、紺のパンツスーツ姿にきりりとむすんだポニーテール。りりしく前を向いて一礼するけど、目が合うとニコッと笑ってくれてうれしくなる。
さらにとなりのセラさんはというと、自由で明るいお人柄を全開にごあいさつ。ミモザ色のワンピース、青空の色の瞳でにっこり笑えば、ぱっと花が咲いたように雰囲気がはなやいだ。
『ソラフネ』のメインメンバーは、ユリア博士を筆頭とした『ホシノ五人衆』。全員かなり癖があり、かれらとほかをつなぐものとして、対人スキルに長けた元同僚・リュウジ氏は適任といえた。
『プラス』のセラさんの抜擢も、いろいろと考えられたものであることは容易にうかがわれた。
『ソラフネ』『クオン』が研究メインとすれば、『シエル・ヴィーヴル』は戦闘を含む実務メインのチーム。組み合わせとしては理想的であるけれど……
おとなの事情と思いやり、もてる立ち位置と能力適正。すべて勘案すれば、現『シエル・ヴィーヴル』にチーム代表の看板・実質をともに担えるものはいない。
そこで『プラス』として数名のメンバーを迎え入れ、セラさんに代表を担ってもらったというわけだ。
ちなみにそこにはタクマとエルマーもいる。うれしくも心強いものである。
そんなわけで、さらにご紹介は続く。
「最後は、国内外にむけたプロモーションイベントをになうエンターテイナーたちだ。
月萌国内はソレイユ・プロダクションよりタンジェリン・ソレイユ殿、ソリス領においては空の民の女王ルリア殿、ステラ領においては大商家ユエシェの長アイリーン・ユエシェ殿がかじ取りを行う。
なお、ステラ王家ステラマリス家、貴族の一門シルウィス家も全面的なバックアップをしてくれる」
ベールを上げたタンジェリンさんは、おしとやかに一礼。
現れた顔立ちは今日も若々しく美しく、やわらかく香るような色合いのオレンジの髪、若葉のような緑の瞳に癒しムードが広がった。
「ご紹介ありがとうございます。
わたくしどもにとってこのプロジェクトは、末の息子たちの夢をかなえるための大作戦。ソレイユにかかわる全員の力で盛り上げます。どうぞ、よろしくお願いいたします」
けれどその言葉は力強いもの。末の息子たち、という温かい言葉に、胸が熱くなる。
「ルリアでーっす!」
「リアちゃんでーっす!」
「「いっしょにたのしくがんばろー! よろしくぅ!」」
ついで、この場で一番のフリーダムが、ブルーのツインテールをなびかせピースした。
さらに同レベルのフリーダムによるダブルピースが続く。なんと小さな姿にかわいいピンクのワンピースをまとい、くるっとした金髪をこれまたツインテールに結んだ『リアちゃん』だ。
エンターテイナー系まっしぐらな二人は声を合わせて『よろしくぅ!』。
後ろに立つ執事さんとエルナールさんがジェントルに「どうぞよろしくお願い申し上げます」と一礼してフォロー。いつもご苦労さまです。
最後に、アイリーンさんとシグルドさんが立ち上がる。
「平和な世界への夢、わたくしどももぜひお手伝いさせていただきたく存じます。
世界のみなが争いを忘れ、ともに歌い踊ることのできる日を目指しましょう。
どうぞ、よろしくお願い申し上げます」
「ご存じの通りわたしは、白のカナタさんを政敵として打ち倒そうとしておりました。
ですがいまではこの方のとりこ。
イツカさんもいまはわたしを、友として受け入れてくださっている。
敵として矛を交えたものにも手を差し伸べることのできる、真に大きなこの方々の望みをかなえるのが、わたしの夢。全力を尽くします。よろしくお願いいたします」
潤んだような黒瞳で微笑むアイリーンさんは、流れるように語り一礼。さらさらと流れる黒髪が美しい。
そんな彼女につづき、シグルドさんは綺麗な碧眼に熱い光を宿して語る。
このひとはほんとうに、もうひとりのおれのことが大好きで、心からその望みをかなえようとしてくれている。そのことがひしひし伝わってじんときた。
「さて、現状のチーム代表者はこれで全部だな。
世界的なプロジェクトだが、リラックスを忘れずに。
協力し合って、楽しくやっていこう」
そして、さいごにエルカさんがばっちりしめると、おれはおもわず拍手してしまった。
もっとも、ほかのひとたちもそのきもちはおなじだったようで、ミーティングルームは拍手に包まれた。
その後、簡単な質疑応答、そして方針や初動の共有を終えると、ミーティングは終了。三々五々、解散となったのだった。
ルキウスさんをなんとか登場させとけばよかったかもと思う吾輩です。
おなかへった。
次回! ちょうどそのころ開催されていた、小さなほかほかお茶会の様子をお送りいたします。
どうぞ、お楽しみに!




