Bonus Track_99-3 宇宙への翼! ホシノ博士のハンドメイドプレーン!!
オンラインミーティングを終えたしょちょー……エルカ所長はめずらしく、ちょっと難しい顔。
むりもない、計画の根幹が崩れかけているのだから。
『RMP』こと、リーチザムーンプロジェクトにかけられる時間は、長くても一か月が限度と見込まれている。
けれど、月へ行くための『翼』が手に入らない。
スキルに頼らない完全ハンドメイドのスペースプレーンなんて月萌にも、ソリステラスにもなかった。
月萌にあった実験用機も、すでに廃棄されて久しい。
一からつくるとなれば、どれほど駆け足でも打ち上げまで二か月はかかってしまうのだ。
* * * * *
『魔王戦争』が終わり、局面は一歩前進。
僕たち、イツカナちゃんと愉快な仲間たちは、元の場所まで戻ってきた。
その過程で地上に揺るぎなき地歩を築き、世界の仲間たちのチカラを得た僕たちは、ふたたび『グランドマザー』を目指す。
オンラインでの話し合いをふたたび、という選択肢は、彼女のほうが潰してきた。
月に飛ぶしかないのだ、もう。それも、チカラ技で。
真正面から行ったら、結界の力で押し戻される。
第五覚醒が完成すればつっきれるだろうと予想されているけれど、あくまで憶測でしかない。
確実に月面に到達するには、結界を形成するよすがである『ティアブラネット』――それを展開するノードをどーにかするほかはないというのが現状での結論だ。
地球上におけるノードの管理は三人の『マザー』の管轄であり、彼女を擁する国が国務として行っている。
同様に宇宙空間におけるそれは、国土の上空にあたる部分にあるものを、それぞれの国で管理してきた。
スキル頼みの戦争に明け暮れてきたこのセカイでは、ノードは国防の根幹をなすもの。それを止めるなんて、ありえないことだった。
しかし、『魔王軍』が唯一の戦争の的となり、それに勝ってすべてを味方につけた、今ならば。
ルートとその周辺に影響を与えるノードを月への飛行の間だけハッキング。最悪、破壊することもできる。
つまりRMPは、世界平和がもたらした、世紀の一大プロジェクトなのだ。
イツカナーずが第五覚醒を形にする。
メンバーの最終選抜と、かれらの体調、装備の調整。
月へ向かうためのスペースプレーンの調達。
月への軌道を計算、打ち上げの日時を決定。
なお関連のイベントは、両国の芸能プロダクションに一任。あくまで月面決戦のスケジュールを優先とする。
ミツルも言っていた。『時間をかけすぎれば、そこから崩れる』と。
ゆるみが出るほど日時がかかってしまえば、裏切りが芽を吹く余地が生まれる。
そうなる前にすべてを終わらせる。時間は、長くても一か月がメドとされた。
当面の大きな問題はふたつ。
イツカナーずの第五覚醒、そして、スペースプレーンの調達だ。
両国のスペースプレーンは、月面に到達できる『はずの』スペックを余裕で有している。
それでも、それはスキルによって作られ、動いている。
つまり、スキルの全くない空間で正常に動くことはないと考えられる。
スキルゼロで動く機体はとうぜん、スキルなしで作られねばならないが、そうなると工期が足りない。どれほど駆け足でも、二か月はかかる。
だが、ホシノ博士は言い切った。
「なんだ、そんなことか。
プレーンならある。ついて来い」
ホシノ博士の自宅地下ラボにおもむいた僕たちが見たものは、なんと廃棄されたはずの実験用機。
なぜと問われると、彼女は当然だという顔をして言った。
「これはわれらが一から作り出した完全ハンドメイド。
捨てろと言われたって誰が捨てるものか。
手を尽くして我が家に運んだ。こいつを維持するために、なんでもした。
そのことを後悔はしていない」
清楚な胸を張る彼女。これまでの行いを毛ほども反省していないのは明らかだし、この言動をソラたち被害者には絶対聞かせられないけれど、それでもプレーンはありがたい。
さっそく、試験飛行のプランが動き始めた。
うーん、頭の調子が悪い……文章がまとまっている自信がないないです。
あんよないない座りのお写真でも見てこよう、そうしよう。
次回、テスト飛行の結果は? どうぞ、お楽しみに!




