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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_98 終結・魔王戦!~あの月を目指す、その前に~

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Bonus Track_98-4 縁は異なもの~祭りの日のつめあわせ~(2)

空振り、でもそれはいいことで(2)~シラタマの場合~


『いやっ、そんな、そんな不埒なこと、ゆ、許さねーぞっ!!

 ナツキは、ナツキはなあ、……えっとそうだ、天使、天使なんだかんな! それに手だの足だの出そうってやからは』


 ラミーのひとことに、レイジがもーぜんと反論というかお説教を始めた。その様子はまるで、小さな弟を溺愛するお兄ちゃん。

 でも、多分どこかでわかってるのだろう。あながち、全くの冗談じゃないということも。


 ラミーは『色欲』として生まれただけあって、こういう機微に敏いし、アドバイスも的確。既に一部では『恋愛大明神』と呼ばれているほどだ。


 わたしたちは人間の感情を原材料に生まれた『荒神』。もともと肉体もなければ、性別もない。

 いま形を成しているこの姿だって、本来はいくらだって変えられるものだ。


 不変なものは、権能とアイデンティティ。それだけ。

 けれど、それで充分とも思っている。

 第七陣開戦前夜、ニセモノ騒動に巻き込まれたイツカとカナタは、最終的にはそれを用いて身のあかしを立てるつもりだったのだ。


 月萌には『虚無』はいない。

 少なくとも、個体識別されたものは。

 だからほかの3Sのニセモノは出せても、わたしのニセモノだけは出せない。

 さらにステラにいるわたしの本体『スピカ』が、このわたしがみずからの分体であることを――ひいてはわたしを宿しているイツカとカナタこそが、彼女がわたしを授けた『ホンモノ』であると宣言し、ニセモノ論争に決着をつける作戦だったのだ。


 もちろんわたしたちは二つ返事でその役を引き受けた。

 わたしたちが、わたしたちでいること。それが、迎え入れてくれたひとたちの役に立つならば、こんなに嬉しいことはない。

 

 それでもイツカとカナタは、その仲間たちは、優しすぎるくらいに優しい。

 おかげで、コミュ障の気があるエンヴィも、少しずつ人前に出られるようになっていってる。

 わたしもずいぶん、元気になった。


『あら〜? 愛には色々なカタチがあるのよ〜? それともレイジちゃんが抱いちゃってる愛は、ふらちでえっちなものなのかしら〜?』

『ハイ誘導尋問乙ッ!!』

『なーんだつまんなぁ〜い。

 じゃーあたしがなっちゃんの』

『なぬうう?!』


 感慨に浸っているわたしのわきで、ラミーとレイジはまだぎゃあぎゃあやっていた。


『もーふたりっとも。

 オレはみーんなだいすきだよ! だからこれからも、みんなでなかよくしよ? ねっ?』

『ええもちろんよなっちゃん!!』

『そうだな、仲良くしようなナツキ!!』


 頃合いをみはからったナツキがニッコリ仲裁すると、やつらは一発で陥落。

 シニカルなグリードさえも笑みを浮かべてうんうんうなずいている。

 もちろん、残るわたしたちも笑顔になった。

 ナツキは天使。異論は認めない。

 これがわれらの、本日の結論である。




 旅立つ日の、その前に〜ハルキの場合〜


 昨日の、イツカさんカナタさんたちの高天原学園凱旋の盛り上がりはすごかった。

 タクマさんとエルマーさんは、もう一度留学くればいいのにと言われ、イツカさんたちOBは、またここに通えばいいのにと言われてた。

 今日は俺たち――俺とエルさん、兄貴とナナさんが、イツカナさんたちと一緒にカレッジを訪問する。

 今日の主賓は、イツカナさんたちとエルさん。兄貴とナナさんはちょっとふわふわしてるから、俺がしっかりサポートしないとだ。

 エルカさん監修のスーツに腕を通す。大丈夫、どこもおかしいところはない。俺は鏡の中の自分に向けて『がんばるぞっ!』と気合を入れる。


「きーくん、ここちょっとはねてるよ」


 と、うしろから笑顔の兄貴がやってきて、俺の後ろ頭の髪をちょんとつまんだ。


「えっマジ?! やばい見えない!」

「だいじょうぶ、ちょっと動かないでね?」


 兄貴は優しく手早く、俺のねぐせを直してくれた。

 そうしながらも、しみじみと語るには。


「これからこういうのは、エルさんになるのかな。

 ちょっとだけ、さびしいかも」

「兄貴……」


 おもえば兄貴は、いつも俺を大事に、面倒を見てくれた。

 俺より先に高天原に入った時も、バディを持たずに待っててくれて。

 説得されても、星まで落としても、それを貫いた。


 そんな兄貴と、近いうちに俺は離れる。

 鼻のあたりがちゅんとしたけれど、むしろ明るく声を上げた。


「だーいじょぶだって!

 ナナさんと結婚したらさ、きっとそっくりな子供生まれるから!

 そしたら、その子をたくさんかわいがってやってよ。

 ……会いに来るからさ。エルさんといっしょに」

「………………きーくーん!!」


 兄貴は感極まった様子で、むぎゅーっと抱き着いてきた。

 いつも穏やかなくせに、俺のこととなると感激屋になる兄貴。しょうがないなあなんていいながらも、大好きな大好きなそのぬくもりを、俺はしっかり胸に抱えた。


 

 結果から言うとカレッジ訪問は、大盛況で終わった。

 イツカさんとカナタさんたちは、笑顔で高天原を出発。

 車で移動しながら、ミッドガルドにインして凱旋行。そんな過密スケジュールにもかかわらず、笑みを絶やさない。本当にすごいと感動が新たになる。

 歳自体は、俺のほうが上なんだけど、ずっと先輩のようだ。


 でも、それならそれでもいい、そう思う。

 兄貴やナナさん、イツカナさんたち。そして、エルさん。

 たくさんの『先輩』に学んで、少しでも近づいていくんだ。

 俺のできる限りで、できる限りのひとをすこしでも、しあわせにするために。

今日予約の品物を受け取りに行くのにピンポイントで雨だよ;;

でもまあ、この程度はかわいいもんですよね……花火の燃え殻やら屋根からの落雪に直撃されるのに比べりゃ(=下手するとあの世行き、両方経験済み)


次回で詰め合わせオシマイ。ちょっと驚く展開が来る予定です。

どうぞ、お楽しみに!

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