98-5 解かれた謎と、深まる謎!
遅れましたのでとりいそぎ!!
「例の現象の原因がわかりました。
地球を包む特殊結界。『GM』の手になるものです」
「やっぱりか……」
この日、イワオ・ゴジョウ総理代行のもと、月萌臨時内閣が動き出した。
チームRMPこと『リーチ・ザ・ムーン・プロジェクト』は、その辞令により正式に発足。
実のところはエルカさんが、すでに中核メンバーを選んでいたのだけれど。
GMの御前に行くおれとイツカ、ミライとミズキ。
情報処理の鬼才シオンとその『世話役』ソーヤ、そして時空系激レアスキルを有するイズミとニノ。
そして世紀の天才アスカと、その『ボディガード』ハヤト&ライカは、もちろんそれに含まれている。
おれたちの最初の仕事は、問題の洗い出し――もしくは、仮設の裏付け。
第四覚醒をとげたおれと、なんでもまるっとおみとおしの『フルムーン・ファインダー』をもつシオン、ふたりの情報特化でリンクして、月へと至る宙域を観測してみた。
すると、見えたのだ。これまでハッキリと観測しえなかったモノ。地球を包む、特殊な結界が。
道をまっすぐ進んでいくと、突然スタート地点に戻される。
ティアブラでも、よくある仕掛けだ。
が、それがリアルの宇宙空間で起きるとしたら。
すぐそこに見える月にたどり着くことも、それより遠くの宇宙に出ることもできない。
悪夢としか言いようのない現象が、このセカイのリアルだ。
第四覚醒――女神に手が届くレベル――を達成したおれたちの目で『見』て、ようやく理由が分かった。
ぶっちゃけ言うなら、『グランドマザー』のせいだ。
彼女が『ティアブラネットワーク』を通じ、宇宙空間に特殊な結界を張っている。
地球をある程度離れると発動するそれが、衛星・シャトル、その他もろもろが月の軌道近くに到達できぬよう阻んでいるのだ。
エルカさんがうむうむと腕を組んでまとめた。
「なるほど。これでは抜けられるわけもない。
このセカイは、スキルに頼り切っている。
そしてスキルの源となる『ティアブラシステム』を運営しているのは、ほかならぬ『グランドマザー』。
そうである以上、彼女の意に反することが、かなうわけもない」
ああ、という声があちこちから上がる。
ここにいる研究者たちも、月を目指してきた。けれど果たせずにいた。
あきらめてほかの研究に軸足を移していたところを、エルカさんが招集したのだ。
しかし、そんな空気も長くは続かない。イズミが言い出したのだ。
「それでも、希望はある。
トウヤさんとの対決の時。イツカ言ってただろ。『第五覚醒』って」
「え? いってたっけそんなこと??」
当の本人――白リボンのイツカは目をぱちくり。
もう一人のおれは言う。
「うん、言ってた。
荒削りの粗削りだったけど、あのときなにか起きそうになってた。
もし第五覚醒ができれば、グランドマザーと同じステージに立てる。
その時空結界も、抜けることができるはずだよ」
「しかし、奇妙なことがある」
研究者さんたちが色めき立つなか、一人比較的冷静なエルカさんが疑問を口にする。
「月面に行くことが彼女の意に背くことというなら、そもそもなぜ、我々はそうしようと考えられるのだろう。
レン君がテラフレアボムを作り上げるまで、世界の誰も、『ボム』をああした二段構造にすることを考え付かなかったというのに」
「…………!」
研究室は静まり返った。




