98-3 戦い終えて! 元・魔王、再始動です!(3)
このころになるとチェシャやリガーさんたち、月萌国内のエージェントたちも次々帰投、もしくは『後日改めて戻りますおめでとう』という連絡をくれはじめた。
かれらは潜伏してたりもするので、どうしてもという場合以外はあまりこちらから連絡ができない。全員の無事を確認した時にはほっとした。
かくしてひととおり『元・魔王軍』内あいさつ回りが終わったおれたちは、次の調整に移った。ティアブラ・ミッドガルド内凱旋スケジュールのすりあわせだ。
というのも、四女神のダンジョンのある地には、そこにゆかりを持つ仲間たちと一緒に行くことになっているからだ。
すなわち、ノルンの町とノルン山には、ニノとイズミ。
ムートンの町とエアリーひつじ牧場には、チアキとレン、トラオとサリイさん。
サウザンドビーチには、ケイジとユキテル、セナとアキト。
もちろんミライとミズキは基本ずっと一緒だ。
すでに『まおネット』上に立っていた日時打ち合わせ用グループスレッドには、ほぼ全員の連絡が集まっていた。
ミライとミズキはさっきの通話でOKをもらっていたが、しっかりOKと書き込んでくれていた。ありがたい。
ニノとイズミも、ふたりのほうでイーパラとすでに連絡を取ってくれていて『それでOK』。
チアキとレンもOK。けれど、トラオたちがちょうど忙しいから、あとできいとくねと書き込んでくれていた。ありがたくよろしくお願いする。
ケイジとユキテル、セナとアキトについては、そもそも『魔王軍』メンバーじゃなかったのでこちらからコール。
すると両バディから『めでたいことだし、そのときだけログインさせてもらえるように許可をもらったので、よろしく』と返事をもらえた。
「たぶんセレネだなこれ……」
「だね、あいかわらずしごとはや……」
なんて顔を見合わせていたら、トラオたちからもそれでOKの書き込みが。
おれたちはさっそく『ティアラ様』あてに、その案でよろしくお願いしますとメールを打ったのだった。
その後もあれこれと片付けていれば、日が傾くとともに晩ご飯のいいにおいがし始めた。
ライムにも許可をもらい、今夜のご飯はこっちで食べ、お風呂もこちらで入ることになっている。
おれたちの私室のドアはゼロブラ館の部屋につなげてあるから、眠ってからはそっちなのだけれど。
おれたちだけ帰るなんて悪いとは言ったのだけれど、全員一致で『帰んなかったらライムちゃんにもっと悪いだろ』と言われては――それもシグルドさんにまで――ありがたくそうするよりほかにない。
食堂の込み具合を確認してばんごはん。炊き込みご飯に、具だくさん味噌汁。海と山のめぐみのグリルにハーブサラダ、スープ風鍋。いくつもの小鉢。デザートは、カットフルーツのうかんだフルーツポンチ。
目にも楽しく華やかなこのメニューは、ぜんぶアルム島の素材をめいっぱいに使った島ごはんだ。
ここに集まった来たメンバーの多くが、明日から徐々に家に帰っていく。週末の戦勝祭も終われば、一気に滞在者は減るだろう。
そのあと食材が余ってダメにならないよう、備蓄調整の意味もあっての豪華メニューなのだが……
とにかく、とにかくおいしいのは、この島の食を担う『お料理部隊』の腕と、アルム島の自然の豊かさあってのこと。
感謝をこめていただきます。たのしい晩さんタイムが始まった。
「はあ、やっぱうまいなあ……」
「格別だよな、ここのメシは」
お代わりしまくってたイツカたちが、ふいにポツンという。
おれももうひとりのおれとうなずきあった。
「建物や農場、漁場の修繕から始まったものね……」
「もとはアルムさんたちが開拓した島だけど、おれたちもいっぱい働いていまを作った。
気持ち的には、おれたちの開拓島でもあるもの」
だよなだよねと、食堂にいたみんながうなずく。
修繕、開拓、警備増強。みんななにかしらの役目を持って、この島をおれたちの場所にした。そして今日まで守ってきた。
「あー! やっぱかえりたくないー!」
「俺も引っ越そうかなあ、ここに……」
しんみりムードになりかけたところで、トラオの声が入り口から。
「いいじゃねーか、引っ越して来いよ。
この先ここは世界一の名物避暑地になるんだ。そしたら倍率上がっちまうぜ?」
バッと広げてみせるのは、今後のリゾート展開計画を記したポスター。
豊かな自然を大切にしつつ、充実のアクアゾーンや、風情たっぷりの館宿泊や農場ステイ、採掘体験や森歩きなとのアクティビティも楽しめる、愉快な島リゾートのイメージ図が、色鮮やかにポップに描かれている。
「ジジイやシグルドたちとちょこちょこ考えてたんだ。乗るんなら今だぜ?」
いい笑顔でウインク。食堂内、いや外までが沸き立った。
突発リゾート計画会議は盛り上がりまくり。このままだと食堂が(物理的に)収集つかないので、メンツは大会議室に移動。
おれたちも加わりたかったのはやまやまだが、出戻り祈願者のスケジュールは明日もいっぱいだ。
「まだまだアイデア出しの段階だしよ。心配せずにシゴトしてこいよ。
こいつでテンションアゲアゲにして、またお前らのこと、がっつりバックアップしてやるよ。
……ま、こいつはリンカの受け売りだけどな!」
いやがうえにもかっこよさを増したイケメンスマイルをくれるトラオ。
ありがとうをつげて、彼が作ってくれた露天風呂に向かった。
明日からはもっと忙しくなる。ゆっくりとお湯につかる時間も取りにくくなるかもしれない。だから今日は満喫しよう。
そんなわけでおれたちは、水着をもって公開露天風呂へ。イツカたちはマッパOKのプライベート露天風呂へと送り出した。
なんだか背後で『ええっ?! イツカさんだけなんですかっ?! カナタさんは、カナタさんはいらしてないんですかああっ?!』と聞き覚えのある鳴き声が響いているっぽい。
白リボンのおれは、すんごくいい笑顔でおれにいう。
「ねえ、おまえはなんか聞こえた?」
「ううん、ぜんっぜん!」
そうしておれたちは、星降る温泉を満喫。湯上りにすこしだけ仕事の続きをし、イツカを迎えに行ったらなぜかピンポン大会に巻き込まれ、カナタさんと離れるのいやですよう寂しいですようとおれにまで甘えるでっかい弟狼(しっかり浴衣姿)も撫でてやって、おれたちは部屋に引き上げ。
なつかしきゼロブラ館のベッドで、眠りについたのだった。
「おふたりとも!
おはようございます。朝ごはん、できておりますわ!」
そうしてどれほど、眠ったころか。
トントンと、ドアをノックする音とともに、誰よりきれいな声がした。
ぱっと目が覚めた。夢じゃないだろうか、ライムの声がするなんて。
寝ぐせの髪を撫でつけ、ドアを開いてみれば、すがすがしい朝のひかりの中、微笑む天使がいた。
「……ゆめじゃない」
「ええ。現実ですわ、カナタさん。
あなたがたが、ここに戻ってこられたのも。……魔王戦争がおわったのも」
柔らかなほほえみに、視界がじわっとした。
やさしく手を差し伸べてくれるいとしいひと。その胸に飛び込もうとしたおれは、背後の気配に気が付いた。
くそう、あのねぼすけ子猫野郎、こういうときに限って目を覚ましてやがるんだから!
「ふふっ。お早く降りてくださいませね?」
ライムは笑って、もうひとりのおれたちの部屋へ。
おれは180度振り返ると、ニヨニヨしているわが相棒にうさみみパンチをお見舞いしたのだった。
シグルドさんのキャラが、出るたびに壊れてゆく気がします(遠い目)
ともあれやっと(ギリギリ)月萌に帰ってきたー!!
次回! ひさびさに国会へGO! あいさつ回りもする予定です。
どうぞ、お楽しみに!




