98-1 戦い終えて! 元・魔王、再始動です!
ポーションを飲んでぬるめのお風呂。30分くらいの仮眠。
敷地内の医療施設で検査を受け、『疲労はしているが全くの健康体、数日は無理せずに』とお達しを受けると動き出した――まっさきに腹の虫が。
「ふふっ。ではさっといただけるものをご用意いたしますわ。
そうね、ピタパンサンドにいたしましょう。急に動かなきゃなことになっても、持っていけますように。
7分ほど下さいませね♪」
ライムがウキウキとそう言ってくれた。
ありがたくお願いしてリビングでの待機中、星降園にもう一度コールすることにした。
ソナタの携帯用端末にかけたい気もしたけど、たぶんその瞬間大騒ぎになるだろう。
というわけで、『母さん』にかけたのだけれど……
「もしもし、『母さん』?」
『あら! まあ!』
『えっお兄ちゃんたち?!』
『イツカナにーちゃんたちだああ!!』
『おい四人とも! 大丈夫なのか?!』
なんと、画面は秒で(カナン先生まで込みで)わっちゃわちゃになった。
すぐ目が覚めるとはかぎらないのに、待ち構えていてくれたみんなの姿と、ソナタの天使すぎる笑顔に癒されながら、無事を報告し、土曜の帰還を約束した。
その日は、ミッドガルドでもパーティー開始の予定。土日月とお祭りになる。おれたちの戦士昇格の時と同様、マルチサイトでのお祝いだ。
今回は『魔王島』ことアルム島、ステラ領首都ステラマリス&ソリス領首都インティライムも会場にくわわるので、規模は段違いなのだけど。
ソナタたちを通じ『のびのびになってしまって申し訳ない』とミルド町長からの伝言もいただいたので、ソナタたちにお返しの伝言を託し、ユーザーメールをしたためた。
『おれたちが忙しすぎたので、すっかりお気遣いをさせてしまいましたね。ありがとうございました、喜んで出席させていただきます』と。
メールボックスの中には、ミルドの町はもちろん、はじまりの町や港町マリノス、王都ノーブルからも招待状が来ていた。
それらと一緒になんと、守護女神『ティアラ』と名のついた最重要メールが。
ティアブラ・ミッドガルドのティアラ様とはイコール、セレネさんだ。なんだろうと思いつつ開くとそこにはこんなメッセージが。
『ミライツカナタのみなへ
突然のメッセージ、ごめんなさい。
いま、たくさんのご招待状があなた方のもとに来ていることと思います。
すべてを回るのは大変でしょうが、どうか頑張ってくださいね。皆さんで素敵なプレゼントをご用意してくれているのです^^
勝手ながら、仮の凱旋スケジュールをわたくしたち、ミッドガルドの住人たちで組ませていただきました。
これでだいじょうぶかしら? ご要望、遠慮なく下さいね。
PS.ミルドはラスト、これはぜーったいにお願いします! あっと驚くサプライズがありますので!
愛をこめて ティアラ』
「そーいやティアラってこんな口調だったっけなー……
うん、なんかちょっとライムちゃんぽいよな」
「確かに!」
そんなことを言い合いながら添付ファイルを開き、凱旋スケジュールを見てみた。なるほど、はじまりの町から始まって、めぐった順に移動しつつ、その地のプレゼントをいただいていくという感じだ。
ラストのミルドの前に、隠しダンジョン四女神ゆかりの地を挟む。その土地に行くときは、その地のゆかりの人たちも一緒だ。
ともあれ、一番忘れちゃいけないのはミライだ。コールをかけると、ワンコールで輝く笑顔、弾む声が出迎えてくれた。
『イツカ、カナタ! もうだいじょぶなの? すっごくうれしいけど、むりしちゃだめだよ!』
「だいじょぶ、もう元気いっぱいだから!」
即答していた。嘘じゃない。
ソナタとミライはおれの元気の源だ。さっき画面ごしにソナタの笑顔を見た瞬間、元気ゲージは満タンに。さらにミライの可愛さで三倍オーバーチャージ、今なら空も飛べそうだ。
『そうなの? よかった!』
「それよりそっちだよ。おれたちの回復めいっぱいしてくれて……その前はミズキとミソラさんとバッテリーチャージしてたでしょ? だいじょうぶなの?」
『そのへんはだいじょぶ!
あのね、月萌軍のバッテリーから、あのときみんなでチャージした分は、ちゃんと戻してもらえたの。衛生兵さんたちに回復も、してもらえたし。
だから、元気いっぱい! みんなも無事だよ!
念のため明日は休みだけど、金曜の闘技会は、ちゃんと出るから!』
ね、ととなりのミズキにふると、ミズキも力強い微笑みとともに答えてくれる。
『今度こそ、俺たちもついていきたいから――『グランドマザー』に挑むとき。
それまでにもっと、少しでも、強くなっておきたいんだ』
「おう! 頼りにしてるぜ!」
「一緒にいこうね、こんどこそ!」
そう、おれたちにはまだ対峙せねばならない相手が残っている。
前回は、セレネさんをはじめとしたみんなが『大神意』にやられ、慌てて逃げ出すはめになった。けれど、次こそは。
そのへんあらためて打ち合わせよう、お互い頑張ろうねと言い合って通話を切ると、「おまたせしましたわ!」とライムの声。
きれいに磨かれた、大きなお皿に盛られていたのは……
焼き肉風お肉とごま風味ご飯とチョレギのがっつりバージョン、シーチキンとキャロットラペとレタスのさっぱりバージョン、特製ジャムとチョコ、カットフルーツのスイーツバージョン、目にも楽しい三種のピタパンサンド。
おなかにやさしいポタージュスープも、マグカップで湯気を立てている。
おれたち四人、そろって『いただきまーす!』と手を伸ばした。
もちろん、これだけの量を7分で一から作れるわけがない。
ジャムはもちろん、レモン汁でほぐしたシーチキンもハーブのきいたキャロットラペも、炒める前のたれの絡んだお肉もさっと冷蔵庫から出していた。
炊飯器からバットによそってたご飯もほっかほかだったし、ピタパンも断言していい、手作りだ。
つまり、事前に完全に仕込んでおいてくれたのだ。
おいしいおいしいと平らげつつも、ぎゅうっと詰まった愛に胸もいっぱいになる。
「……生きててよかった」
思わずそんな一声が口からこぼれたおれは、ほかの三人にめっちゃ冷やかされたのだった。
食後の紅茶で一休み、さっと身なりを整えたら、ユズキさん・タンジェリンさんご夫妻にご挨拶。われらがアルム島に跳んだ。
まだ通信でしか顔を見せられていない。『まおネット』に乗らない相談もそれなりあるだろう。
『到来の間』の魔法陣へと転移、外に出たなら、心地よい風と歓声がおれたちを包んだ。
腹の虫『わしじゃ』
次回、アルム島をまわり就寝。午前中には月萌国会に出席の予定です(秘書口調)
ひさびさの若干まったりモード。どうぞ、お楽しみに!!




