Bonus Track_97-3 『おかえりなさい』――夢にまで見た、そのひとことを~ライムの場合~
タカヤさんの車で、町を走りぬけていきます。
こんどは、ゆっくりやさしく。わたしとセレネさんもいっしょで。
もう、誰はばかることもありません。みなさんがカナタさんたちを歓迎しています。
がんばったね、よくやったねと、笑顔でたたえてくれるのです。
わがことのようにうれしくほこらしく、わたくしも車窓から手を振りました。
眠り子猫になってしまったイツカさんもふくめ、御四人様全員に浄化をかけてありますので、身なりは大丈夫。
それでも、疲れは拭い去れません。こういうときはやっぱり、お風呂なのです。
もちろん浴室もしっかりと磨き上げてあります。ゆったりとくつろいでいただけることでしょう。
さすがにお背中を流しに上がるのは少し早すぎるので、そこはライカさんたちにお願いです。
本来なら、生まれ育ったおうち――星降園にこそ、さきに帰してさしあげるべきなので、申し訳ない気持ちもあります。
けれど、コールをかけてごめんなさいと謝ると、ソナタちゃんたちは『お兄ちゃんたちが無事なら、いいの!』と明るい笑顔で許してくれました。
それだけでなく『お兄ちゃんたちが戻ってくるとき。ライムちゃんも、セレネちゃんも、よかったらいっしょにきて。みんなでいっしょに、おいわいしよう!』とまで言ってもらえてしまいました。
なんて、優しいのでしょう。
星降園の子たちはみんな、強くて、優しくて、かわいくて、ほんとうに天使のよう。
シティメイドとしての赴任先が、星降町でよかったと、またもかみしめるわたくしでした。
そうこうしているうちに、我が家の門が近づいてきました。
やっと、やっと、たいせつなひとたちをおうちにむかえられる。
そのことが実感となって胸に迫り、なんだかどきどきしてきました。
おかげで門が開いても、わたしはどきどきしっぱなし。
開いた窓越し、姉にほっぺたをつつかれて、ようやく我に返りました。
笑い声の中、タカヤさんがふたたび車を出してくれます。
次にブレーキが踏まれたときには、そこはもう『ゼロブラ館』の玄関前。
いっしょに働く同僚のメイドたちが、笑顔でならんで、花道を作ってくれています。
タカヤさんが丁重に、車のドアを開けてくれました。
ライカさんたちがたたっと走って行って、大きくドアを開けてくれます。
このころになると、子猫になっていたイツカさんも目を覚まし、人の姿に戻っていました。
さあ、やっと言えます。
車を降りた、二人ずつのイツカさんとカナタさんに、わたくしはいっぱいの笑顔で告げたのでした。
夢にまで見た、そのひとことを。
かんむりょうクポ!
イツカナ、やっとゼロブラ館に帰れました。
第七陣、ならびに対魔王戦、これにて終結です!
『四人』を丁寧に言う言葉、この度初めて調べて知りました。
御四名様でもよかったんですけど、ちょっと古風に奥ゆかしくこちらにしてみました。
次回、新章突入!
魔王戦の後始末、ならびに『グランドマザー』の待つ禁足地、月への準備が始まります。
まずは掲示板回でワイワイです。どうぞ、お楽しみに!!




