12-1 『ミライツカナタ』VS『うさもふ三銃士』~ミライの場合~(1)
2020.01.07
誤字修正いたしました。
その相手は、片手に剣、片手にダーツを構えたふさふさのうさみみをもっている。
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その相手は、片手に剣、片手にダーツを構え、ふさふさのうさみみをもっている。
うさみみが万能すぎになっておりました……orz
「俺は今回、こいつを抜かずに戦いたい。
抜かされたら、アウトってことで。いいか?」
「いいの? たしかに俺たちの方が格下だけど……」
「言い訳はしねーよ。きっと勝ってみせる!」
イツカとミズキは、スタート位置でそんな風に言葉を交わした。
ここまでは、事前の取り決めどおり。
でも、すぐに予想外がやってきた。
ミズキが自分も抜かないと言い出したのだ。
「それじゃあ、俺も。
いいでしょ? せっかくの新ブレード、目の前にしてお預けなんだから」
「え?! や、まじミズキ?
……っていうかおまえこれもう見て」
「イツカってば。それは言わない約束でしょ?」
びっくりするおれたちのまえで、『うさもふ』の三人はいたずらっぽく笑ってる。
はやくも、一本取られたかんじだ。
観客席からも笑いが起きた。
「う、えっと……カナタ、ミライー! それでいっかー?」
「おれはいいけど、これっておれも一丁にしなきゃだめ?」
「わー! それは勘弁してくださいっ!
カナタさんが一丁ったら俺も剣抜けないじゃないっスか!!
ハッ! まさかパンいちで戦えと?! そんなごむたいなー!!」
ソーヤの軽口にまた笑いが起きる。
シオンの笑顔のつっこみも快調だ。
「ソーやん、脱ぐならがんばれ?」
「脱がないよっ!」
とりあえず、おれも意思表明して、軌道修正しとく。
「ええっと、おれもそれでだいじょぶだよ!」
「やっぱ脱ぐの?」
「ちが、そっちじゃないってばー! イツカとミズキの剣のことー!!」
おもわずあわててしまった。ソーヤの顔は満面の笑み。
もういちど笑いが起きたところで、サイレンが鳴った。
「じゃ、はじめっか」
「そうだね」
歓声と拍手が降る中、前衛ふたりが抜かないままの剣を合わせ、どこか陽気にゴングが鳴った。
「神聖強化!」
ミズキは剣をやんわり引いて、神聖魔法を発動。
返す刀でイツカの胴を狙う。すくい上げるような中段斬り。
でも、同時におれもイツカにおんなじ魔法をかけてた。
イツカは引いた剣を素早く返して、ミズキの攻撃をはじく。
そのまま、二人の『斬りあい』が始まった。
『おっとはじまった!
剣を封じた前衛同士、しょっぱなっから激しいせめぎあいだ――!!』
今日のこれは、魅せるためのバトルだ。
だからミズキは、さいしょからイツカを飛び越えたりしないし、イツカも、少し腰を落ち着けてミズキとの攻防を見せている。
おれとソーヤも、まずはそんな二人を最大に支援するかまえだ。
おれはもう一度、神聖強化。今度は、おれたち三人を一度に。
ソーヤはというと、地面にしゃがんで錬成陣を書き始めたシオンをかばうように前に出た。
腰のマジックポーチから何かを取り出す。
「おーし、位置よし! せいやっ!」
ダーツで地面に打ち付けられた『それ』から、ひかりの魔法陣が広がる。
地面から吹き上がる金の輝きが、ミズキとソーヤ自身、そしてシオンを一度に包む。
すると三人の頭上に『Power UP!!』という金色のポップアップが上がった。
『これは、『範囲内全強化』の護符です!
ソウヤ選手、ミズキ選手の防衛ラインに絶対の信頼を置いている様子!!』
そう、この護符は、『範囲に入ったものは誰でも何でも』強化してしまう。
そして護符の宿命として、一度発動したらONOFFができない――効果が切れるまえにどうしても止めたいなら、護符を封印か、破棄しないといけないのだ。
だから、儀式魔術のブーストとか以外では、あんまり使われない。
そんなのを使ってくるなんて、あきらかに『誘ってる』。それは、おれでもわかる。
それでも、カナタは飛び出した。
「うん、位置よし。えい!」
取り出したのは、中くらいのボムひとつと、小さいグレネードたくさん。
狙いも付けずにばらまけば、ボムはミズキとソウヤの間の地面――惜しくも護符からは離れてた――で爆音と土煙をはじけさせ、グレネードはあちこちバラバラに甲高い音を発しはじめた。
『こ、これは……えげつない!
クレイボムで衝撃を加えつつ視界を奪い、サウンドグレネードで聴覚をかく乱する多重爆撃!
インフォースの恩恵を受けているとはいえ、うさぎ装備には酷な攻撃だ!!
はたしてソーヤ選手、シオン選手は大丈夫なのでしょうかっ?!
カナタ選手、左に大きく旋回しつつ、自分で作り出した地獄に自ら飛び込んでいった!!
土煙と騒音でなかの様子がまったくうかがえません!!
はたして中では、どんな攻防が行われているのでありましょうかっ。
気になる、気になるぞ――!!』
たぶん、二人は大丈夫のはず。
そうは、思うけど……
それはイツカもおなじよう。
でも、ミズキはにっこり笑った。
「だいじょうぶ。
『範囲内全強化』の護符をおいたのはソウヤだよ?
むしろふたりは、カナタの心配をしてあげた方がいいと思うけど」
「え……」
土煙がはれていく。
ぼんやり見えてきたのは、三つの人影。
大きな垂れ耳をもつ影が、魔擲弾銃をつきつけてる。
その相手は、片手に剣、片手にダーツを構え、ふさふさのうさみみをもっている。
さらにはそのうしろで、みじかいうさみみの持ち主が、両手に一つずつ何かを持ってる。
カナタが二丁の魔擲弾銃でソーヤに狙いをつけ、ソーヤも剣とダーツでカナタを狙い返し。
その後ろで、シオンが両手にボムを持ってる。
そんな構図だった。
ただ、三人の立ち位置が問題だ。
カナタはシオンがいた場所の向かって右後ろ。つまり、シオンのナナメ左後ろを取る位置にいる。
でも、そこにはソーヤがいて、カナタと対峙してる。
シオンがいるのは、さっきまでソーヤがいた場所。
そして、ソーヤとシオンは、うす青いひかりの輪の中にいる。
光の発生源は、シオンが描いていた地面の錬成陣。
『ソーヤ・シオン両選手、うまい!
シオン選手が錬成陣のプロテクトサークルを『外向け』に描くことで、カナタ選手の爆撃から身を守り……
互いに立ち位置を交代して、カナタ選手の特攻をいなした!!
クラフターならではの攻防です!』
「やっぱりね。これが狙いだと思ってた」
「ふっふーん。どーするカナタさん? 降参しちゃう?」
「まさか。お楽しみはこれからでしょ?
ところで例の護符さ。あれどこいっちゃったの? おれまだ壊してないんだけど」
「……へ?」
カナタの視線を追うように、ふたりが護符のあったはずの場所を見る。
おれとイツカも思わずちらっと見る。たしかにない。
ミズキはさすがに見ないけど。
そのとき、カナタの陽気な声が響き渡った……天井近くの空中から。
「そういうわけで、護符ありがとう! 有効活用させてもらうから!」
「ちょ、ええええ?!」
跳ねるカナタの手にはひらひらひらめく護符が一枚。
『壊してないとはいったが取ってないとは言ってないっ!!
カナタ選手、巧みな話術と逃げ足だ!!
さすがはポテストで『青嵐公』をけむにまいた男、あなどれない――!!」
いつもありがとうございます♪




