97-2 弱さを断ち切る! レイン、決意の父子対決!!(1)
2022.11.04
誤字修正しました!
「勝負につまらん茶々を入れるな」と睨めば、→「勝負につまらん茶々を入れるな」と睨まれれば、
国会前の広場には、あっというまに人垣ができた。
見にこずにはいられなかったのだろう。目と鼻の先で行われるこの、世紀の対決を。
議員たちはほぼ全員が集合。近所の人たちも集まっている。
もちろんメディアもつめかけており、いくつものカメラがじっと様子をうかがっている。
「来たか。
お前が、戦うのだな、レイン」
「はい、父上。
正確にはこの、ライカ君の助けを借りて」
「そうか」
そのまんなか、リュウジ・タカシロはただひとつうなずいて、息子の挑戦を受け入れた。
侮ることも、疑うこともせず。
一方で、リュウジ氏のつきそいとしてやってきた三会派長の一人――いま噂の『護国派』のアカシ・タカシロ氏だ――は嘲弄する。
「ああ、なるほど。護衛を外したのはそういう理由でですか」
そう、ここには『当然いるはず』と思われる人たちがいなかった。
『S&G』。
対魔王戦への度重なる参加により、忠誠心と能力を認められ、近衛として抜擢されたふたりは、当然リュウジ氏を守って、先鋒をつとめるはずと思われたのだけれど。
リュウジ氏はというと、それを完全スルー。
『見届け人』として島から急行してくれたイワオさんに「勝負につまらん茶々を入れるな」と睨まれれば、アカシ氏は首をすくめた。
「勝負とおっしゃいますがゴジョウ議員。ご党首は国議会の最強。対して」
「おい。失礼だぞ」
「やめろ、無知をさらすな」
見届け人のうち残り二人がそれぞれの言葉で彼をたしなめる。
「いやあ、お手本のようなフラグ立てをありがとうございます。
これは盛り上がること間違いなしですねえ☆彡」
自前らしきハンディカメラで録画をしつつ、ユーさんがこの状況にさらに茶々を入れる。
耐えかねたようすのハジメさん、冷静なセイメイさんが「皆さんやめましょう」と仲裁を試み、ようやく広場はそれなりの平穏を取り戻した。
もっとも、父と息子にはもう、そんな騒ぎは耳に入っていないよう。
「月萌の『母君』よ、障壁をお願い致します。
われらここに『魔王』の受け入れ可否をかけ、力で決を採るものなり」
ただ静かに、『マザー』に要請する。決闘用の障壁の形成を。
『あい分かった。
わが名において、結界を形成す。
思う存分に戦うがよい、わが子らよ』
天から響くセレネさんの声。当時に、薄青い輝きをすかす光のドームが対峙する者たちを包む。
リュウジ氏がすっと腕を振ると、その軌跡をたどるように一振りの刀が現れた。
正眼にすっと構えるその一方で、レインさんはひとつ、ふたつと深呼吸。
ライカ本体とぎゅっと手をつなぎ、目を閉じると、二人の全身が白金の光に包まれる。
まばゆい輝きが引いた後、立っていた人影は、ひとつ。
仕立ての良いスーツのかたちはそのままに、基調を白に、各所に絢爛な装飾をあしらった美しい魔術着をまとい――
『生命の樹』をかたどった、剣でありつつ、錫杖でもあり、彼のパートナーでもある神器を手にした天界の魔術師が、堂々とその姿を現した。
青いドレスのセレネさんが、彼女の座した玉座が、ドームの上に降臨する。
『両者、支度はよいな。では、始めよ!』
彼女のりんとした声が命じると同時、黒スーツの剣士は地をけり、白の装束の魔術師が光弾をぶっぱなした。
アカシさんは最初タカシさんでした。
でもあまりにまんますぎるのでちょっとひねりました。
英語ならTを飲み干したとでもいうところ?
次回、レインさん視点での過去話と、勝負のつづきの予定です。
どうぞ、お楽しみに!!




