97-1 弱さを断ち切る! レイン、決意の父子対決!!(序)
レインさんもがんばります。
リュウジ・タカシロ。
月萌の影の支配者『御大』『御前』と深い繋がりを有する男。
絶大な権力の中心にいつつ、同時にその座を追われかけている存在だ。
『御前』ことセレナ・タカシロの逮捕により、彼女の権力で封じてきたモノが一気に噴出した。
そのときの火消しはなんとかなしとげたものの、もはや以前ほどの求心力はない。
むしろ、いざというとき切るためにその場に置かれている、とすら言える状態だった。
不憫、と見るものもいる。
だが、本人もそうして退陣することを望んでいる様子。
ならば、やらなきゃならない――全力で。
彼もまた、簡単に勝てる相手じゃない。
月萌国議会の守護神『風林火山』と称される四強。
その一人『山』とは、ほかでもない彼のことなのだ。
月萌の『マザー』を支える『神族御三家』のひとつ、タカシロの現当主である彼。
学生時代から空軍時代、政治家となっても一貫して優秀だったサラブレッドの実力は、政界に入ってなお、衰えていないという。
さらに彼には、強力なボディーガードがいる。
『S&G』。彼を恩人として忠誠を誓うユキテルと、ユキテルを支えるケイジだ。
学内傭兵集団『マーセナリーガーデン』の実力派リーダーたちの強さは、おれたちもよく知っている。
「あのさ。どっちかおれたちがやろっか?
宿命の対決ったら、ずっとおれたちもだよ?」
『ちょっとまって』
アスカが申し出てくれたが、そこへライカが待ったをかけた。
『レイちゃんがイツカナちゃんに頼みがあるって。
話してもらえる?』
「もちろんいいけど」
そんなわけでおれたちは、レインさんと話をすることにしたのだった。
レインさんは、ライカ分体たちに守られて、月萌軍基地までやってきた。
もちろんおれたちも、基地前まで出てお出迎えだ。
「久しぶりだね、四人とも。
全員まとめておもちかえりしたくなってしまう可愛さだけど、今日は真面目に行くと決めたので、戯れはなしで話そうね」
『いやもう充っ・分ふざけてるからねレイちゃん??』
「まってくれたまえライカくんはなそうはなしあおうっ」
口を滑らせヘッドロックを食らう姿はいつもどおり。
なんだかほっとしながらおれたちは、ちょっと変態な年上の友人を応接室に招き入れたのだった。
ライムが入れてくれたお茶をまえに、レインさんは深呼吸。一度座りなおす。
そして、単刀直入、言い出したことは。
「党首リュウジ・タカシロとの決闘だが。
わたしにやらせてはもらえないか」
「えっ」
意外過ぎるその言葉。赤リボンと白リボン、四人全員でハモってしまった。
「いやレイン、バトルだめって言ってたよな?!」
「おやじ、さんと戦うとか、きつくねえ?」
「どうしてそう考えたんですか?」
「おれたちでなにかできることは……」
レインさんはひとつ穏やかにうなずくと、話し出した。
「現在高天原は、戦時体制を敷いているね。
そのことで、父は独り、自らの意を国の意として発言することが可能となっている――最大与党の長、国政の長としてね。
けれど、それに異を唱える者がいないわけではない。それは、立国党のうちにさえも。
かれらを代表できるのが、わたし、というわけだよ。
いま、我らの誰かが立たねばならない。さもなければこの高天原が、誤解をされてしまうことにもつながるだろう。
皆が皆、君たちを迎えたくないわけではない。戦争をしたいわけじゃない。
その意を圧殺されたまま、冷たい目を向けられることになるのは、耐えがたいものだからね」
やわらかな微笑みにこめられた覚悟。それがどれほどのものなのかは、伸びた背筋が物語ってる。
おれたちは黙って、澄んだその碧眼を見つめた。
「きみたちに、父を倒してもらうのは簡単だ。
だが、これはわたしがやらなきゃならない。
父はもう、退かなければならない。もう、その影で隠れていることはできない。
そのために、立つんだ。
一人前の男となるために。タカシロを、家族を支えていくために。
戦うことは……できる。
ライカくんに教えてもらったよ。きちんと戦う方法を。
剣として、ライカ君を『使う』ことは、わたしには向いていなかったけれど……
それでも、わたしたちなりの方法で。力を合わせて、やれるところまでやってみたいんだ。
やらせてほしい。頼む」
決意をみなぎらせ、頭を下げるレインさん。
そのとなりにはいつのまにか、ライカが――本体だった――寄り添い、口添えとともに頭を下げる。
『レイちゃんはたしかに、戦うことは苦手だ。
でも、レイちゃんはできる子だよ。それは、おれが保証する。
きっと勝つよ。だれも、犠牲にせずに』
もちろん、答えはひとつだった。
かくして一時間後、約束の時間、約束の場所で。
レインさんは、上司にして父である男と向かい合ったのだった。
次回、はじまる父子対決。
ライカのサポートを受け、レインさんの力が開花します!
どうぞ、お楽しみに!!




