Bonus Track_96-5 ウソはいらない?! 最強ウサギのいちばんのしごと!! ~トウヤの場合~
スノブル+旧エクセリオンチーム+あかちゃん全員集合です^^
月萌杯のときのことだ。
俺はエルカの策からハブられた。
うそがつけないからと。
そのとき俺は、やつに裏切られたと勘違いしてしまった。
学生時代にはバディを組み、ともにエクセリオンを目指した、大切な仲間だったのに。
エルカには改めて謝られたが、俺は平身低頭だった。
もう、こんなことはこりごりだ。
それに俺だって、もっと役に立ちたい。
だから、特訓したのだ。嘘をつくことを。
その結果。
「……うん。トウヤはやはり、そのままがいいんじゃないかと思うよ」
「だよねー」
「ほんっとトウヤってふしぎだねー。こんだけ顔面変わらないのになんでかウソつけないの」
「そこがいいところなんだけれど、ね?」
「わたくしもそう思いますわ♪」
エルカにもアカネにもレモンにもオルカにも(さらにはおなかの子供も同意したようだ)、ライムにもそういわれてしまった。
「マジになんでお前は軍の最高司令クビにならないんだ?」
「うさうさかわいいからだよ、ノゾミ☆」
「そうなのか????」
ミソラの上機嫌な託宣に、俺とノゾミは声を合わせてしまった。
「それは半分冗談として。
トウヤは月萌軍の、高天原の『きれいな面』の象徴だ。
だから、逆にウソつけるキャラだったらダメなんだよ」
半分だけの冗談につづいて、もう半分の本当を聞かされ俺たちはうなった。
「ああ……」
「そうだったのか……」
そのとき、ふと思い出した。
アカネが時々、俺に言うことば。
『トウヤちゃんは、きれいでいなきゃだめだよ』という。
だから俺は、できうる限りでながら、食後は歯を磨き、毎日風呂に入り、アカネに言われればエステにも行き、うさみみしっぽのブラッシングもかかさずにいたのだが、もしかしてそれは、間違っていたのだろうか。
「でも、あまりなにもかも隠されてるのは気分がよくないものだよね。
わたしたちは『ずっ友』なんだしさ。
だから、ネタバレにならない程度にリークはしてこう。
大丈夫だよ。
トウヤのこころには、なにものも冒せない、正義の炎があるからね。
それを目印にしてわたしたちは、舵を切る。
だからきみが、エクセリオン筆頭なんだ。
自分の気持ちに嘘をつかずに、まっすぐに前を見ること。
それがトウヤの、いちばんのしごとだよ」
ミソラはそう言ってくれた。
『トウヤのこころには、なにものも冒せない、正義の炎があるからね』
高天原学園門前での、ノゾミとの決闘に際し背中を押したのも、その言葉だった。
あの場にアスカはいなかったけれど、伝え聞いたのか。それとも、そもそもこの言葉は、アスカによるものなのだろうか。
そのことはまだ確かめていない。やや照れくさくて。
けれど、『それ』は確かに俺に指針を与えてくれる。
その呼び声に従って、俺は走った。
イズミたちを待たせて。持ち場を離れて。違和感の源へ。
何がおかしいと感じたか。『SFA』の耐久度だ。
本音を言えば使いたくはなかったのだが、最高司令が門外に出るということで俺もSFAをまとわされていた。
技の耐久度が続く限りにおいてダメージをゼロにする『無敵系結界』には、大いに助けられている。当然その耐久度は熟知していたし、軍議で諮られた耐久度がそれまでと大差ない値に抑えられることも了承していた。
だが、それがほぼ減らない。もっと言えば、なぜか更新されている。
こんな仕様ではなかったはずだ。
違和感を覚え、イズミに問えば、イズミもハッキリと肯定を返してきた。
こいつは、ポーカーフェースのできる男だ。つまり、ことのあらましを知っている。
とっさに『ここで待て』と言い残し、違和感をたどった。
そこで見たのは、『ソアー』の件で処分を受け、一研究員として軍で働く者たちと、そのうしろにそっと立つエルカの姿。
正解、というわけだ。
今度こそ、誤解はなかった。
エルカが気配を消してなくとも、ウインクを飛ばしてこなくとも。
「だが、この責は、俺が負うべきだ」
奴らを連行させたのち、俺はエルカに告げた。
「大切な後輩と仲間に、苦痛を強いる結果となってしまった。俺の目が届いていなかったがために。それは、疑いなき事実。
俺は退かねばならぬ。この座から。
エルカ。お前が束ねてくれんか。この国の守りを。情報部の重鎮でもあるお前ならば、文句は言われんだろう。
もちろん、最大限のサポートはする。この通りだ」
「……トウヤ。
お前はもとバディであり、最高の友だ。
だからこそここは、NOを言わせてもらう。
ぶっちゃけムリゲーだぞ、夫と父と所長と情報部員、さらにモデル兼デザイナー。これ以上どこに増やせる余地がある?
それにね。
『トウヤだから』とついてきている人たちが月萌軍にどれほどいるか。
情報部の人間だからこそ、そのことは誰より把握しているつもりだよ」
だがエルカは、優しく俺の肩をたたいた。
「お前がやめるなら、俺もやめる。お前がやるなら、俺もやる。
いや、それは正確じゃないな。
――できる限りのサポートをする。だから、やめないでくれ、トウヤ。頼む」
そうして逆に頭を下げ返されては、もう弱音なんか、逆さにしたって出てきはしなかった。
アカネが俺たちふたりの腕を抱いて、ニッコリとかわいらしく笑む。
「よーし! それじゃあおしごと再開ねっ!
まずは東門に戻って、バトルの続きやらなくちゃ。
だいじょぶよトウヤちゃん。もしも負けてクビになっちゃったら、まるっとあたしがあとついであげ」「いやそれだけはやめてやってくれたのむから。」
俺はゼロ秒でその申し出を辞退した。
アカネは悪い奴ではないが、いかんせんフリーダムすぎる。それが上に立てば、月萌軍の真面目なやつらには酷だろう。
それを思うと、やはり俺はまだまだ頑張らねばならないようだった。
没サブタイ:俺だってウソくらいつけるはず。だからがんばってみた ~トウヤの場合~
なおトウヤさんはもともときれい好きです。
次回、もどってきたトウヤさんとアカネちゃん。リベンジマッチなるか、それとも?
どうぞ、お楽しみに!!




