96-2 再会、激突、そして?! VS『しろくろウィングス』!~白リボンのカナタの場合~
白イツカナ、やっとルカ、ルナと再会です^^
赤リボンのおれは、レモンさんが守る北門に。
復活したイズミとニノは、トウヤさんとアカネさんとのリベンジマッチのため東門に。
おれたち白リボン組は、ルカとルナの待つ南門へと降りた。
西門へ向かうビークルを見送り、二人に向き直る。
二人とも、装備を新調していた。
ずっと、綺麗になっていた。
まるっきり、白と黒の戦う天使。
ふたりが頑張ってきたことが、一目でわかった。
イツカが、ルナと。おれは、ルカと。
しばらく、見つめあっていた。ことばが、見つからなかった。
ただ、胸が、いっぱいで。
出てきた言葉は、なんだか情けないものだった。
「なんか、……もったいない、かな。
やっぱ、戦わないとダメ、……だよね」
「奇遇ね。あたしも同じこと、思ってた」
イツカはもっと情けなかった。
「なあ。やめねえ?
俺たち、ここまで来た。『迎え』にはもう充分、これてんだろ?」
黒猫の耳をぺこんと折っての『オネガイ』は、野郎のくせに無駄な破壊力を有していやがった。
これはギルティではないだろうか。違法なのではなかろうか。
けれどルナは、「ごめんね」と首を左右した。
「わたしたち、戦わないといけない。
決めたの。お役目を果たすって。
ここに残らなきゃな、みんなのため。
それは、セレネちゃんのためでもある、から」
「……だよ、な」
イツカはほろ苦く笑う。
でもここで負ければ、逃げれば明日はない。
「さっ、いくわよ!
あたしたちは月萌軍からの支援を受けてる。
第四覚醒はできてないけど、そのレベルには到達してるわ。
簡単には勝てないから、そのつもりでいらっしゃい!!」
ルカが威勢よく啖呵を切り、ルナと手を組み合わせた。
そうして、二人で声を合わせる。
「発動『天之息吹』!」
同時にふたりの背中で大きな翼が広がった。
二対、いや、三対の。
膨れ上がるポテンシャル。
本来の術者であるルカに、その恩恵を受けるルナに、背後の月萌基地から膨大なBPTPが流れ込んでくるのがおれのうさ耳に聴こえる。
その、供給源は――
ポイント生成の呪歌を歌い続ける先生。
先生の隣で祈るミズキとミライ。
そして、別室に集められて祈る、一ツ星と二ツ星のみんなだ。
みんなラクな顔はしていない。
必死だ。小さな笑みをまとっていても、その眼は助けを待つもののもの。
そして目の前のふたりも、同じ目をしていた。
「本来これはあたしの、ぶちかまし用の必殺技なんだけど。
ポイントの継続供与を受けるとこんなこともできる。
先生たちに負担がかかるわ、一気に決めましょう!」
それでもふたりは、りりしく立つ。
女神のごときオーラをまとって。
だったら、やることはひとつだ。
おれは即座に、第四覚醒完成形を起動した!
「わかった。『卯王の聖地』!
イツカ!」
大地に潜らせたうさ耳で、このあたりの土地と一体化。
萌えいずる幻想の森で、イツカに力を与えながら、一気にうえへ投げ上げる。
空高くとんだイツカは、くるりと身をひるがえし、まっさかさに天をける!
「おうっ!
『0-G、エクストラーダ』ッてっちょっなあっ?!」
「えっちょっあんたっ」「イツカくん!!!」
輝く彗星となったイツカは二人を直撃――しなかった。
直前でブレーキをかけたやつは、見事失速。
とっさに進み出たルカに受け止められて、その胸に飛び込んだ。
「ちょっとバカ! なにやってんのよ! こんなタイミングでブレーキングしたら危ないでしょ!」
「わりっ、でもっ、『天之息吹』切れてるしっ!
それでやったら、オバキル、だったし……」
「え……」
「あ……」
これは、仕方ないといえた。
イツカをして、バフあり直撃じゃないとやれないと判断せしめたハイパーモードは、エクストラーダ発動直後にいきなり解除された――基地からのパワー供給が切れたのだ。
自身の希望でだろう、ルカとルナには『SFA』がかかっていなかった。
つまり、そのまま直撃すればオーバーキル。
とっさにイツカは、自爆覚悟でブレーキをかけた、とそういうわけだ。
仕方ない。うん、これは仕方ない。
だが、それとこれとは別だ。
おれはやつをルカからひっぱがすと「はい」とルナに渡し、宣告した。
「イツカ。おまえ、あとで全力でモフりたおすからね。絶対だから」
「ええええええええ?!」
「ありがとうルカ。重かったでしょ?
ごめんね、うちの子猫野郎が」
ルカはさすがハンター。けっこうなダメージを食らいつつも、やつを地面への直撃から――それによって受けるダメージから、守ってくれた。
まだ、戦いは続く。すこしでも被ダメージを抑えられるのは、正直に言ってありがたい。おれは心からお礼を言った。
対して、ルカは。
「いいのよ、ねこちゃんだもの。
でもやっぱり、あたしはうさちゃんを抱っこしたいかしら。
おっきなお耳の垂れた、水色のうさちゃんね?」
「……ルカ」
カッコよくいってるけど、背中の黒い羽はもじもじ。ほほも小さく染まってる。
照れているのだ。かわいい。
おれはまっすぐ歩いて行って、そんなかわいいひとを抱きしめた。
ルカも腕を回して、おれをぎゅっとしてくれた――と同時に、がくっとくずおれてきた。
「ごめん。ちょっとだけ、やすませて。
いまのであたし、BPTPゼロ、だから……」
「わかる。
いきなりポイント供給切れたものね。
あとでなにか、いざって時にポイント供給できるアイテム、作らなくっちゃね。
ルカが万一、おれの知らないとこでこんな風になったら、いやだからさ」
「ありがと」
横からえらいニッコニコしてる気配を感じる。
でも今はスルーだスルー。
やがてポイントが自然回復したルカは「もう大丈夫、ありがとう」と照れ臭そうに身を離した。
そしてえへんえへんとちっちゃく咳ばらいをすると、はっきりとこういってくれた。
「あたしたちが二人と戦うのは、月萌基地からのバックアップが前提だったわ。
それが崩れた以上、全力出しても勝てないことは明白。降参するわ」
まっすぐ差し出された握手の手を、もちろんおれはしっかりと握ったのだった。
次回、舞台裏。
とつじょパワー供給が切れた、その理由は……?
どうぞ、お楽しみに!




