Bonus Track_96-3 ごちそうさま! ココロ潤すニヨニヨモード!! @月萌基地内部 ~タマキの場合~
可愛いカップルを見て顔が緩んでしまう現象――それが『ニヨニヨ』なり(ドドン
ハナナさんとルイさん、コウとシロウが『SFA』を発動、コントロールする担当ならば。
ダイはその『場』を直接的に守る担当。俺は、オンラインで集めた情報を統合し、間接的にパフォーマンスを守る担当だ。
だからもちろん、知っていた。学園生たちと、かれらを守ろうとするミズキさんとミライさん、そしてミソラ先生の苦闘は。
『見てしまえばしんどくなる。こっちは先生たちにまかせておいていいんだよ』とミソラ先生からは止められたけれど、俺だってそこまで薄情な人間じゃない。
知っていると、知らないとでは大違いだ。もしかして、万に一つでも、どうにかできる可能性があるかもしれないのだ。
それでも実際には、その様子を見ていることしかできなかった。
軍備蓄のポイントバッテリーの『予備』として、一室に集められた一ツ星と二ツ星たち。
生徒たちにポイント供与をさせないために、全力でポイント生成の呪歌を歌い続ける、ミソラ先生。
先生を支え、守るため――というのは名目で、実質はスペア兼人質だ――そばについて祈るミズキさん、ミライさん。
高天原町の警邏をする三ツ星たち。重要拠点の警備に当てられた四ツ星たち。基地内での戦闘に備えてスタンバイさせられている五ツ星たち。
そして、不安を抑えつつも生徒たちを統括している、ヤヨイさん、ロアン、ミキヤ。
なかでもヤヨイさんの様子は気にかかった。
セミロングの黒髪もおとなしい感じの、年下の女子というひいき目を抜きにしても。
なぜっていま、誰より支えあえるはずの相棒は、はるか魔王島にいる。
ロアンとミキヤも気にかけ、現場を回りつつ声をかけてやっているけれど、ぶっちゃけるとオーバーキャパだ。
一ツ星二ツ星部屋は現状、ヤヨイさんがつききりで見ている。けれど、それでももう、不安の声が満ち満ちていた。
『もう、ただこうして待つなんてできないよ……』
『祈ろう、わたしたちも。そのほうがずっといいよ!』
『……わかりました。
祈りましょう。ただし控えめに。
ミソラ先生たちの気持ちを無にしては、いけないですから』
やむなく祈りの許可を出すヤヨイさんの声は、表情は冷静だ。
しかし、その手は小さく震えている。
ダイが決意の様子で口を開いた。
「……なあ、タマ」
「奇遇ですね、俺も同じことを考えていまし」
その時だった。
『よーく頑張ったなっ!』
『差し入れがやってきたぞー! さ、ドンッと食って元気出してくれ!!』
まるでヒーローのような、明るく力強い声がスピーカー越しに響く。
どばーんと開いたドアのまえ、お菓子のつまった箱を四つ、誇らしげにかついで立っていたのは――
『ガーデン』先代と先々代の長である、でっかいわんこ装備二人組だった。
『ゆっきーさんっ!
……っとっと、ケ、ケイジさんもっ!!
わ、わたしはだっだだいじょうぶですから! まずっみんなに配ってあげましょうっ!』
とたん、パッと立ち上がったヤヨイさん。俺たちはそのままかるくフリーズした。
「なんとっ……」
「これはっ……」
「「ごちそうさまでーすっ!!」」
いつのまにか後ろからのぞいていた、ルイさんとハナナさんが華やいだ声を上げる。
画面の向こうも一気に『ニヨニヨモード』になってしまったようで、重苦しかった空気もどこへやら。
お菓子が届く前に、そこからもここからも『ごちそうさま』の連発だ。
「だいじょぶみたい、だな」
「そうですね……」
ほっとしたところで、新しい声が響いてきた。
「ふふっ、かわいらしいこと。
これであの子たちはもう、大丈夫ね。
さ、次はあなたたちよ。
ここまでよく頑張ったわね。すこしだけ、おやすみなさい」
すこしハスキーで温かい、やさしく安心できる声が、今度は俺たちの後ろから。
次回、白リボン組と『しろくろ』、愛し合う者たちの激突?!
どうぞ、お楽しみに!!




