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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_11 ようこそ、けもの同盟へ!(仮)

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Bonus Track_11_1 ニノの答え合わせタイム!

 時間はその日の夕方。

 場所は、二ツ星寮のトラオの部屋でのことになる。


「いやっ、なんで俺の部屋なんだよ?」

「トラオ一人で二人部屋使ってっだろ? だからだよ!」


 どっかりとソファーに座って、レンが言う。

 濡れ羽色の短髪もかくやの『黒い』顔で。

 無自覚なんだろうが……まあいいか。

 トラオはあわわと慌て始めた。


「え……

 なにっ、まさか同室の奴がいたらできないようなことする気かよっ?!

 俺よか全然強い犬野郎とあからさまにヤバイもん作ってくる鳥野郎とあとなんで来たのかわかんない新入生の狐野郎で!! ふざけんなよ、俺は絶対屈しな……」


 レンの合図を受け、チアキが小包を取り出した。

 学食のトレイ位のそれを、ダイニングテーブルにそっと置く。


「こ、この香りは!

『エアリーのひつじ牧場』のホットケーキ!!

 それも、ミルクアイスのせバージョンだと――っ?!」


 トラオは一瞬にして堕ちた。




「くっそ、俺としたことが……

 いいか、今のは他言無用だからな!!

 で。なんでチアキがエアリー姐さ……エアリーんとこのアイスのせホットケーキもってきてんだよ?」


 すべてが終わるとトラオは、恥ずかしげにくぎを刺してきた。

 そして、想定された問いを口にする。

 チアキは慈愛の笑みを引っ込め、背筋を伸ばして座りなおした。


「理由は、ふたつあるんだ。

 ひとつは、レンのことのおわび。

 レンが『オレは一人で充分だ!』て思い込んで、トラオくんとの仮バディをあっさり解消したから、トラオくんは傷ついたし、苦労もした。

 兼業クラフターの僕ごときにいわれても、て思うかもだけど、バディが決まらないとほんとに大変なの、僕もとってもよくわかるから……。

 あらためてごめんなさい。ほら、レン」

「あ、ああ……。

 いまさらだけど、オレは慢心から、ひでえことした。それについては、詫びさせてくれ。

 あの件についちゃ、お前にはなんの落ち度もねえ。オレがひたすら悪かった。

 許しがたいとは思うが……この通りだ」


 少し小柄なチアキと、それより小さいレンがそろって深く頭を下げる。

 トラオは、まず面食らい、ついで照れた様子になり、さいごに疑問をぶつけてきた。


「あっと、えっと……あー……

 ちゃんとその、手土産まで持って? 詫び、入れに来たってんなら、……

 まあ、レンのアイテムにゃ、だいぶおいしい思いさせてもらったし。

 手打ち、というのもやぶさかでは……

 ってか、お前たちは何が目的なんだ?

 こいつが俺の大の好物だったってことまで、探り出して」

「あっと、それは、そうじゃないの。

 これが好きだって知ったのはね、ほんとに偶然なんだ。

 ……僕もね、まえに『ひつじ牧場』にいたの。

 僕があそこを出て、それからすぐあと、トラオくんがきたんだって。

 こないだエアリーお姉ちゃんのとこ行ってね、そのこと知ってびっくりしちゃった。

 お風呂とか、直しついでにおっきくしたり、いろいろしてくれたんだってね。おかげでみんなで入れたよ。どうもありがとう!」

「あっ、いやっ、そんなん何てことねえよ!

 そっか、あー……まじか。

 俺の前にいた『チアキ』って、まさかお前、だったのかよ……」


 がくっとテーブルに突っ伏すトラオ。

 やつにとってのチアキは、いうなれば兄弟子。それを馬鹿にし、笑っていたのだ。

 知らなかったとしても、気まずかろう。

 しかしそんなやつに対し、チアキは救いの手を差し伸べる。


「えっ、いや、それは気にしないで!

 だって僕ほんとに弱かったんだしっ。

 自力でここまで頑張れたトラオくんからしたら、ほんとに情けないやつだもの。

 だから、自分を責めないで。ね?」

「あ、ああ、……おう……。

 あーその、……で?

 だからってなんで、こいつを持ってきたんだよ……?」

「あ、うん。

 これを持ってきた理由のもうひとつ……

 あそこで通販ね、始まったよって、教えたくって。

 さっきのは僕がアイスのレシピつくったやつなんだけど、ほかにもいろいろあるんだよ。

 ミルクにチーズにカップアイス。クリーム、バター、ヨーグルト。

 二ツ星のトラオくんなら、毎週どれか買えるでしょ?

 臨時で組むクラフターの子たちにアイテム余計に先渡しさせて、『超強化のポーション』買わなくっても、もう大丈夫だよって!

 もうそんな、恨まれるような悲しいこと、しなくていいんだよって!」


 チアキの顔には、一点の曇りもない天使の微笑み。

 しばし呆然とそれを見ていたトラオは、ばっとテーブルに手をついた。


「すみませんッ!!

『ミルクのみワンコ』なんて馬鹿にしたりして、ほんとすみませんでしたあああ!!」

「えっえっええええ!!

 どどどどうしちゃったのー?! うわああ、レンどうしよー!! ねえニノどうしたらいいー?!」


 わんこ天使様は大慌て。もはや人がいいとかいう次元じゃない。

 期せず予言が当たってしまったレンもボーゼンだ。

 しかし、俺にとっては想定済み。満を持してバトンタッチした。


「ようしよしよし。それじゃあこっからはお兄さんにバトンタッチだ。

 よう、『先輩』。

 あんたもわかってるとは思うが、善意ってやつにも先立つものが必要だ。

 今日みた、レンとチアキの復活劇にもな。

 高天原に来たことで収支のバランスが狂い、調整に失敗して貧乏卿に成り下がったレンが、ふたたびギガフレアボムを作れるようになったこと。

 羊牧場のミルクがなくなり弱っていたチアキが、ふたたびミルクを入手できるようになり、もとの強さを取り戻したこと。

 その陰には、TPを稼げる仕掛けがあるってことだ」


 レンがテーブルに突っ伏し『貧乏卿……』と嘆いている。やっちまった。

 とりあえずフォローはチアキに任せて、俺は先を続ける。


「かくいう俺も『それ』を持ってる。

 ブランド・ライセンス契約だ。

『現役時代の俺が残したオリジナルレシピを利用して、商品を製造。俺の名を冠して販売することを許す代わりに、儲けの一部をリターンしてくれ』という契約を、ミッドガルドで結んできた。

 こいつはあんたには絶対に真似できない。

 もしあんたの増改築した風呂やらなんやらにオリジナリティがあり、エアリーさんがそれを利用して儲けを出そうとするってなら、ワンチャンないでもないだろうがな」

「……。」


 トラオはぐっと黙り込む。

 一言ありそうな目でチアキがこっちを見るが、視線で『まあ任せとけ』と言っておく。


「チアキはそんな状況が嫌だそうだ。

 何をどうやっていても、自分の力が衰えていくつらさと焦り。それは痛いほどわかる。なのに自分だけがラクになるのは、と。

 だから今日、チアキはあえて『ひつじミルク』のにおいをつけてフィールドインした。

 なつかしいにおいをかいだあんたが、チアキと会話をし、すべてを知ることができるように。

 すなわちあんたが、チアキの正体と状態、ひいてはチアキとあんたを襲った『ステータス低下症』の原因と対策を知って――

『このまま戦うのは公平じゃない。自分にもエアリーのひつじミルクを飲ませるか、試合をキャンセルしろ』と言えるように。

 だが、あんたはそれをしなかった。

 男たるもの、ただでミルクをお恵みいただく『飼い猫ちゃん』になり下がるのは嫌だった……そうなんだろう、トラオ?」

「お、……おうっ。その通りだ!」


 うん、俺にはわかってる。こいつはわかってなかった。

 だが、それは知らないふりで持ち上げた。

 プライドをくすぐり、退路を断ち、協力を取り付けるために。


「だったらどうだろう。これからはひとつ、チアキの力になってやっちゃくれねえか。 

 あんた、割のいい販売ルートとノウハウ持ってんだろ。そいつでアイテム高く売ってくれよ。

 もし引き受けてくれれば、『うさプリ』や『まじかるあーちゃん』お手製のアイテムだって扱えるようになるぜ?」

「おいマジかっ」


 トラオは瞬時に身を乗り出した。

 奴の金回りのよさは普通じゃない。だが、ヤバイ相手と取引してるわけでもない。

 つまり、こいつには商才がある。

 さらには商売そのものへの興味も高いだろうと予測されていたが、ドンピシャだ。

 俺も身を乗り出して、やつの猫耳にささやいた。


「おうよ。

 この先考えたなら、あんたももっとTPがいるだろ?

 せっかく五ツ星まで上り詰めてもだ。今まで踏み台にしてきた奴らが後を追ってきたら。こうしてウチまで押しかけてきたら。……

 今のうち、増えた儲けの一部で奴らに賠償をし、しっかりと詫びを入れとけば、将来背中を気にせず生きてけるようになる。

 そんときゃ俺たちも仲立ちをしてやるよ。チアキがレンにそうしたように。

 悪い話じゃないと思うが、どうだ?」




 トラオと握手を交わした後は、速やかに部屋を出た。

 部屋の外ではやつの女たち――黒髪ロングのサリイとオレンジのゆるふわロールのリンカ、そして我が相棒のイズミが待っていた。

 なぜか『同志感』を漂わせ、三人は俺たちを睨んでくる。


「あんたたち、トラに変なことしなかったでしょうねっ?」

「なんでっ?!」


 代表してサリイが詰問してきたのだが、その内容にレンはショックを受けた様子。


「えっと……えっとあのね、まずホットケーキ食べてもらって、今までのことごめんねっていって、これからなかよくしようって握手したの!

 だから、へんじゃないよ。だいじょうぶだよ!」


 こういうときチアキは強いんだ。わかってないから。俺より年上の最年長組なのに。

 ピュアな笑顔を向けられて、女子二人の頬が小さく染まる。


「わ、わんちゃんが、言うなら……」

「チアキだよ! ふたりもよければ、なかよくしてね!」

「しょ、しょうがないわねっ。ほらいこサリイ!」


 彼女らはトラオの部屋に入っていった。

 イズミがガシッと俺を捕まえた。


「え、なに?! 疑いは晴れたよな?!

 だいたいチアキがいる時点でそんな……」

「おってけぼりにした」


 やつは俺と揃いのアイカラーを光らせて、むうっと俺を睨んだ。


「はあ?! 

 い、いやだってさ! メールだって残したよな?

 そのアイカラーあるんだしっだいたいの位置とか状態も」

「おれが風呂入ってる間におれぬきでこそっとホットケーキ食べた!」

「誤解だ――!!」


 結局俺は、エアリー牧場のホットケーキセットを3セット、イズミにごちそうするハメになったのだった。

こんばんわです。

時間はないわ、文章が全然まとまらないわでひたすら苦労してました。

おそらく次は6日かと……orz

って、6日から平常運転の予定ですが、果たしてうまくいくのか?!

3on3が……くれば……!

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