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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_95 第七陣、月萌沿岸の戦い!

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95-2 ネコミミはすべてを解決する?! イツカ、むてきのピーカンスマイル!! ~白リボンのカナタの場合~

 ゴーちゃんに勝たせてやりたい。けど、勝ってもらいたくない。

『マリオン』はそんなふうに迷っていた。

 その一方で、おれも迷っていた。

 この勝負『どう』勝ったならいいのかを。



『かざね』隊が、撃つといってきた。月萌軍総司令部は、それを応諾した。

『マリオン』は抗議したけど、聞き入れられはしなかった。

 おれは高めに位置どった――陸戦隊『ゆうづき』からは狙いづらく、航空隊『かざね』からは狙いやすいあたりに。


 やがて水平線に機影群。『かざね』だ。

 全機に意識を向け、その火器管制システムがおれを標的としたのを確認。よし。

 一方『ゆうづき』隊機搭載のそれはイツカを狙っていることも確認した。

 発射シーケンスから、着弾のタイミングをはかる。3、2、1。

 イツカに念のため神聖防壁ホーリーシェルをかける。両隊の砲が火を噴いた。


『ゆうづき』隊砲撃、イツカに。『かざね』隊爆撃、おれに。

 攻撃の分散は成功。イツカへのダメージ、パフォーマンスへの悪影響ともごく軽微。もちろん『ゴーちゃん』からの攻撃はふわりとかわした。やった。

 おれへのダメージもごく少ないもの。爆発のほとんどを、腕甲ブレイサーに宿ったグリードが食ってくれたからだ。おかげで視界も速やかにクリアになった。

 OK、これならソナタたちも、すぐにほっとしてくれたことだろう。


 ……と思ったその時だ。

 イツカが猫の耳を伏せ、いつになく鋭い視線を飛ばしているのが見えた。

 上空、月萌基地の方角にむけて。すなわち、自分を攻撃した『ゆうづき』隊をガン無視し、おれを撃った『かざね』隊に向けて。

 こいつってば。ちょっとじんとしながらも、努めて明るく声をかけた。


「イツカ、おれは大丈夫。

 怒らないで、作戦行動だから!」

「………… ゴメン」


 伏せていた耳を小さくたらし、イツカは本日二度目のゴメンをつぶやいた。

 一件落着。同時に戻ってきた、未解決のあの問題が。



 イツカのさいしょの『ゴメン』は、不死の領域を抜けているときだった。

 やつにもわかっているようだった。『マリオさん』――『マリオン』のナカノヒト――が、なんだか無理をしているってことは。

 どう、したらいいものか。正直おれもまだ決めかねていた。


 大前提として、負けるわけにはいかないのだ。

 こちらも、イツカとルナの恋路を応援してる。

 そもそも、負けてとらわれればひととしての未来がなくなる。


 でも、どんな風に勝ったらいいのか。

 こうして戦ってはいるけれど、それはすべて『上からの命令』によるもの。

 憎しみあってるわけでもないし、不幸にしていいなんてふうには思えない。


『ゴーちゃん』のけなげな想いは、おれたちも知っている。

 ただただ、たたき伏せて勝ち、ルナさんを『奪い去る』ことが、いいことだとは思えなかった。



 の、だ、が。

 そんな惑いは、今あとかたもなく吹っ飛んだ。

 やつがいつものピーカン笑顔で笑いかけたなら、ゴーちゃんはふるふる。ついでにマリオさんまで転げ落ちかけた。

 そう、ナチュラルに落としてくれやがったのだ、この、無自覚ネコミミ主人公野郎は。

 それはもちろん、ゴーちゃんからルナさんへの気持ちがなくなったわけではなかろう。だがそれ以上のはかいりょくをこいつはぶっこみやがったのだ。それも、ぜんぜん無自覚で。


「お……おうふ……

 ずるいわイツにゃん……ネコミミずるいくっそかわええ……」

「?」


『マリオン』、口元を抑えてのダダモレ。

 イツカは聞き取れない様子でキョトンとしている。

 が、それがむしろかれらに深々ぶっ刺さっているようだ。

 ここでイツカを子猫にしたらノックアウトできたりして。いややめとこう。男にはメンツというものがある。

 なにより、せっかくトウヤさんが融通をきかせてくれたのだ。ここはしっかり、バトルで決着つけねば!


「マリオさん、ゴーちゃんさん!

 相棒の問題は、バディ全体の問題です。

 ここは2on2でいきませんか?

 勝っても負けても、うらみっこなしの全力勝負で!!」


 ここは、おれもスマイルで。明るくにこやかに声をかけるとマリオンは、まいったなあというような、でもうれしそうな顔で返してきた。


「ええのん、カナぴょん?

 ゴーちゃんだけでもさいきょーなのに、ウチまで加わったらもはやチートやで? 今日はただでは帰られへんで?」

「ええ、ですのでどうか、お手柔らかに」


 最強でチートなのは本当だ。

 かれらは長く、モンスターアバターを使って戦ってきた。

 キャップを設けられてなお食らいつく戦いを続けたかれらの熟練度は、おれたちなんかの比じゃない。

 そのうえに『先祖返り』として巨大なチカラを手に入れた彼らのポテンシャルは、単体で堂々と軍の主力を張れるだけのもの。

 彼らには、ひとつの国が味方に付いてる。この戦いをゲームと思ってる人たちにも、そうでない人たちにも、彼らのファンがたくさんいる。

 そして今、ゴーちゃんとマリオンは、ふたりのきずなを確かなものにしたばかり。


 つまり、全力出さなきゃ絶対勝てない。

 上等だ。おれたちも夢のため戦ってきた。応援してくれる味方もいっぱいいる。

 迎えに行きたい愛する人も、この戦いを終えた向こうにいる!


「ほな、はじめよかっ!

 みんな、頼むで――フォーメーション、G2!

 ちなみにこいつはがんばれゴーちゃんの略やっ! いくで!!」


 マリオンがアンデッドたちを走らせ、ゴーちゃんを囲んだ。

 複雑な配置に整列し、みずから白い魔法陣となった彼らは、一斉に歓声を上げるとそのチカラをゴーちゃんに託し、光となって消えていく。

 キラキラのかがやきをまとったゴーちゃんのポテンシャルは、さらに跳ね上がる。


「でしたら、おれも!」


 シルウェストレを解除し、一度着地。

 地に膝をつき、手のひらをそわせ、おれはその加護を願った。


「大地よ。

 死せるいのちが還り、生まれたいのちが育まれる、大いなる揺籃よ。

 おれは、あなたのもとに平和をもたらしたい。

 眠るべきものが安らかにその背を横たえられるよう。

 立ち上がるものがしっかりとその足を踏ん張れるよう!!」


 軍靴に、履帯に、死者の足に。

 踏まれ、固められた土に、おれは祈りとともに力を注いだ。

 呼応して湧き上がるひかり。

 ゆっくりと柔らかく萌えいでたそれは、かぐわしい無数の芽となった。


「あなたと、その子らが、戦火に引き裂かれることがなくなるように。

 そのために、おれたちは戦う!

 大地よ。豊かなその力の一端を!! どうかここに、おれたちに貸してください!!」


 見る間にするすると伸びあがったそれは、色とりどりの花を咲かせ実をならせ、夢のようなおとぎの森となった。


 イツカの装いが変わる。

 武装のいたるところに、葉と枝と花をあしらった、みずみずしい森の騎士のそれに。

 おれの服も、編み合わさるようにからんだつたに、ちいさくかわいらしい花と実がいくつもついた、森の賢者ふうのものに変わった。


「ようこそ、おれたちの森へ。

 幻想の薬園にして、聖なる庭たる楽園へ!」


 丁重に一礼し、太もものホルスターから『サツキ』『ウヅキ』をぬけば、これらもまたすっかり、森の装飾を施され、まるで芸術品のような趣を宿していた。


 それを見た瞬間、おれは確信した。

 おれたちは、勝てる、と。


ho<おい日向! こんなとこであんな詠唱入れちゃって後どうするんニャ! まだトウヤぴょん戦もセレネちゃん戦もそのほかだってあるんニャで!!

日<えーと……だ、だいじょうぶ! ま、まだ第五覚醒があるからっ!!

ho<What's?!


次回、赤イツカVSスケさんの予定でございます。

どうか、お楽しみに!

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