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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_95 第七陣、月萌沿岸の戦い!

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Bonus Track_95-4B 胸を貫く? いつかの記憶と、イツカの笑顔! ~『ゴーちゃん』の場合~

 ぼくの、たいせつなばしょ。

 大好きなゲームのなか、ひろがる優しいセカイ。


 ここでだけは、こんなぼくでも『ふつう』に生きれる。

 だから、そこに逃げた。


 心配してくれる人もいたけど、それでも、リアルの毎日はしんどくて。

 いつしか、戻れなくなってた。


 ああ、伝えとけばよかったかな。

 ぼくは、こっちに行きますって。


 もういちど、会えたらいいのに。

 遊びに来てくれないかな。


 そんなきもちを抱いて、ぼくは――



 昔から、何度か見てた夢。俺によく似た子供の、せつなくて、うらやましい夢。

 だって俺は、ティアブラのなかでもダメなほうだったから。

 幸い、大好きなヒガシヘルマンリクガメのけも装備と俺の相性はよくて、TPが必要な時には、前衛タンクでなんとか稼げた。

 でも、リアルでのやらかしは、それを上回っていて。


 Ω堕ちで『地下』にきたときはむしろほっとした。もう、これ以上落ちることもない。施設には余計なものも置いてなかったし、細かい作業が不可能と判断された僕は、落としたり壊したらまずいものを触らせられることがなくなったから。


 ゴーレムアバターの操作だけは、なんとか俺にもひとなみにできた。だからゴーレム使いとしていっぱい働き、いつしか『ゴーレム職人』と認められるようになった。

 施設側のはからいで物を壊すことがなくなった俺に、周りの人たちも優しかった。

 もうこのまま、ここで朽ちていければいい。そう思っていた俺に、転機は怒涛のようにやってきた。


 今をときめくアイドルバトラーたちの卒業エキシビションに出場。LUNA――ルナさんの名付けでネームドに。さらに俺は、人生二度目の恋に落ちた。

 そこからは嵐のよう。『心あるモンスターキャンペーン』の旗振り役であるアイドルモンスターユニット『学園モンスターダンサーズ』の一員に。『魔王軍』との戦いにも出陣し、『先祖返り』であるとわかって。


 そのとき無茶をして、入院してからだ。

『マリオさん』が、俺にめっちゃ、くっついてくるようになったのは。


 腕利きの『マリオネッター』として、いざって時の相談役として、みんなに尊敬されてて。

 みためもすっごくかっこよくって、あんな線が細いのにびっくりするほど力持ちで、頭もよくって、面白くってやさしくて、正直あこがれてた。

 なんというか、そう、夢の国の王子様みたいな人だ。


 そんなひとが、ときどき泣いた目で、俺のとこにとんできて、ぎゅーっとする。

 そうして、よかったーよかったーゴーちゃんいるわーホンマよかったーなんて言う。

 俺はドキドキはんぶん、申し訳ないのはんぶんで、でもどうしたらいいのかよくわかんなくって、ただマリオさんに寄り添うのだ。


 でもマリオさんはすぐ立ち直って、俺を応援してくれる。

 いつも、にっこり笑ってこういうのだ。


『『こうせな』と思ったら、とにかく手を伸ばすんや。

 あとのことは、ウチらがなんとかしたるさかい。

 ゴーちゃんはただ、きもちにまっすぐ、行ったらええ。

 どんな道でも、ウチらは応援しとるからな!』



 だからだろう。

 俺がそのとき、『マリオン』に手を伸ばしたのは。



(セント・)(フローラ)(・アーク)』がかかってるから、爆撃に巻き込まれたところでダメージなんかない。

 というか、『マリオン』は『俺』なんかより、何倍も強いのだ――その一声で1000のアンデッドたちが、すべて余さず圧を放って、戦場を沈黙させた。しかもその間にも、『俺』をばっちり支援し続けているというチートぶり。


 でも、俺はなんでか、わかってしまったのだ。

 マリオさんが、無理をしているってこと。

 マリオさんが、さびしいと思っていること。


 だから伝えなきゃいけないと思ったのだ。だいじょうぶだって。

 俺は、マリオさんをおいてどっかにいったりなんか、もう二度としないって。

 ゴーレムアバターは基本、しゃべれない。だけど、めいっぱいの想いを込めて、俺は言った。


『だいじょうぶだよ。俺は、だいじょうぶ。

 俺は、ここにいるよ。ちゃんと、ずっと、マリオさんといっしょにいるよ』


 夢の中、気遣ってくれた『あのひと』を、『ぼく』はけっきょく、置いてってしまった。

 でも、そんなのはもうやめだ。もう絶対逃げない。

 ふんばって、がんばって、一緒にいて、守るんだ。


 てのひらのうえ、『マリオン』がふわっと笑ってくれた。

 とどいた。通じたんだ。

 よかった。ほんとうによかった。


 しあわせなきもちになった俺たちに、さらにしあわせがやってきた。

 トウヤさんは、マリオさんの気持ちを汲んで、横やりなしでの決闘を認めてくれた。

 そしてイツにゃんも、だいじょぶだからやろうぜって言ってくれた。

 まっすぐ、おんなじ視点で。

 おひさまみたいにまぶしい笑顔で。

 ちょびっとこげてるのに。


 どうしよう、かわいい。

 ライバルのはずなのに、かわいい。

 すごいかわいい。にゃんこかわいい。

 俺はなんかもう、ふるふるしてしまった。


 それはマリオさんもおなじだったみたいで、『マリオン』は『俺』の手のひらからあやうくころげおちかけてたのだった。


次回、白カナタ視点でVSゴーちゃん戦、シメの予定です。

どうぞ、お楽しみに!!

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