Bonus Track_95-2 譲れぬ想い!『フォルド』、ギフト覚醒<オープン>!! クラスチェンジもあるよ!! ~『ドラオさん』の場合~
俺たち『モンつか』は、出せるパワーの上限が決められている。
けれど、まれに自力でそれをぶっ飛ばすことも、ないではない。
ゴーちゃんは、みんなが頑張ってるから俺もと、必死になって。
マリオさんは、暴走状態になったゴーちゃんを助けるために、すべてをなげうって。
そしてスケさんは、あこがれのイツにゃんにすこしでも近づくためにと、全力で修行して。
けっしてただ、『先祖返り』だからじゃない。
でも、俺だって、がんばってる。
そのはず、なのだ。
けれど俺にはまだ、みんなのようになにか、一皮むけた感じが来ない。
『ギフト』と呼ばれる先祖返り技も、目覚めない。
あのときゴーちゃんは、俺を『すごくかっこいい』と言ってくれた。
でも、俺からしたら、ゴーちゃんのがずっとずっと、ずっとかっこいい。
どうしたら、ああなれるだろう。
迷いながら、振り切るように特訓して、それでも納得は得られないままで、今日は来てしまった。
幸い、というべきか、ササキさんの女魔導士<さっきー>は俺の支援についてくれることになった。
どうにか、今日こそ、超カッコイイ所を見せたい。祈るような気持ちを腹に込めてカナぴょんに突撃した俺だけど、ひょいといなされてしまう。
カナぴょんはもう『かえで』隊に突っ込んでいってるし、エアビークルが機銃を撃って仕掛けてくる。致し方なく俺はビークルのほうにかかっていった。
グレートフォレストドラゴンのうろこは当然、機銃なんか余裕で跳ね返す。
おかえし……としてはやりすぎかもだが、大きく息を吸いブレスを吐いた。
ビークルは身軽に回避してくる。もちろん首を振って追ったがとらえきれず、ブレス一発目は終わってしまった。
残念だが、クールタイムが終わればまた吐ける。その間は爪とかみつきで攻撃だ。俺は積極的に仕掛けていった。
さすがに、直撃すればやれる、はず。
ビークルは回避の連続で、攻撃のすきがない。よし、イイ感じだ。
「よけてくださいフォルドさん!!!!」
と思ったその時、ササキさんの声がした。
とっさにビークルから距離を取り上を確認。そこにみたものは、青空高く余裕で浮かぶビークルと、そのどてっぱらから落ちてくる、巨大なモモンガ型光弾だった。
うそだろう。モモカたんはいま島で戦っている。そのはずだ。
なのになんでこんなところにモモンガが?!
全力回避、いやまて、下にはササキさんがいる。
SFAがかかっているとかそういう問題じゃない。
ササキさんにあたったりしたら、HPなんか減らなくたって、俺の心がダメージくらう!!
俺は全力で翼を広げ、恐怖のモモンガプレスを受け止めた。
「フォルドさんっ?!」
やばい、重い。とんでもなく重い。
羽ばたけど羽ばたけど、俺の体はどんどんと、地表に向けて押し込まれていく。
だが、負けるわけにいかない。
こいつをしのいで、生き残る――ササキさんを守るために。
ササキさんは俺の意をくんで、『ダークブレッシング』を連発してくれている。
そうだ。大好きな人が、守りたい人がここにいるんだ。
相手が魔王だろうが正義だろうが最強だろうが、ここだけは譲らねえ!!
それでもどんどんと押し下げられていく俺は、ついに四つの足を地面についた。
ササキさんは、俺の巨体の下。
気丈なササキさんはあきらめる様子はなかったけれど、さすがにもう危ない。
逃げてください、そう言いかけた、その時だった。
『Regression! Gift『Glacefull_Forestress』Opened!!』
地に踏ん張った足が根っこになって、大地の恵みを大きく吸い込む。
すると俺の体がぐんと大きくなり、緑のうろこがわさわさと波立つように感じた――風そよぐこずえのように。
ああ、大丈夫だ。
これなら、大丈夫。
たとえテラフレアボムが何十発きたってきっと、ササキさんを守ってあげられる。
静かな確信が沸き上がった俺の背で、効果限界を迎えたモモンガプレスが霧散した。
「すごい、……フォルドさん……!!
やりましたね! すっごくすっごく、すごいですよっ!!」
俺を見上げるササキさんの笑顔が、史上最高にキラキラしていた。
ああ、宝だ。心の底からそう感じた。
ティアブラやリアルで見てきた、どんな宝物より尊い宝。
この笑顔を守るためなら、俺はどれだけだって強くなれる。
たとえば彼女が、スケさんのことを好きなんだとしても。
そのとき、奇跡が起きた。
『Class Up! プレイヤーキャラクター『さっきー』は『ダークソーサレス』から『フォレストドラゴンメイデン』にクラスアップしました。
新スキル『森竜言語魔法<フォレスト・ドラゴニック・チャント>』が解禁されました』
システムアナウンスとともにキラキラの輝きに包まれたササキさんが、変身したのだ。
彼女のまとう黒のドレスローブは、浅緑と白と深緑をかさねた、どこか聖女めいたものに。
手にした杖も、緑の葉をつけた金色のツタを絡めたような、それでいてどこか聖性を感じさせるものにかわる。
「えへへ。変身、しちゃいましたね、わたしも。
よーし! それじゃあドラゴンメイデンらしく、頑張らなくちゃっ!」
そして、器用に俺の背中に乗っかったササキさんは、大空にむけ杖を突き上げる。
「ここからはわたしのターンです! いきますっ!!
『フォレスト・フォース』! いっけえええ!!」
そうしてばかすかと、薄緑の光弾を打ち出してビークルを狙い打ち始めた。
じつを言うと、ササキさんは若干、いやかなりノーコンだ。
対象を定めて打つ支援系魔法ならまだしも、こういう投射系魔法を撃たせると、正直言って、怖い。
『ちょおおおおやめてやめたげてこわいこわいこわい!!』
エアビークルはきりきり舞い。『かえで』隊はわらわら距離を取り始める。
俺の口からも、悲鳴に似た声が飛び出したのだった。
気が付いたら七枚相当。何が起きた。奇跡か。
次回、とばっちりくった『かえで隊』視点でお送りする予定です。
どうぞ、お楽しみに!!




